セックスレスの精神医学 の商品レビュー
人間の本能であるはず…
人間の本能であるはずの行為を放棄してしまうのは、常識的には理解できないように思えますが、個人個人の精神的な要素が関わってくるとそうは行かないようです。とにかく興味深い。
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興味深い内容がいろいろあった。しかし読むほどに、セックスレスは解決が非常に難しいのではないかという思いが高まった。 クリニックの扉をたたくのは、レスを改善したい、子供が欲しいといった目的があるからだ。 一方、既にレスとなっている夫婦の場合、主な原因となる片割れにはその気がない...
興味深い内容がいろいろあった。しかし読むほどに、セックスレスは解決が非常に難しいのではないかという思いが高まった。 クリニックの扉をたたくのは、レスを改善したい、子供が欲しいといった目的があるからだ。 一方、既にレスとなっている夫婦の場合、主な原因となる片割れにはその気がないことの方が多いと考えられる。そしてお金を払ってでも解決しないといけない問題かといわれれば、悩んでる方としては当然YESだが、拒否する方は高確率でNOだろう。拒否する側の協力なしには、解決には至らない。 『都内の高三を対象に性教育に取り組む教師らが行った性意識・性行動のアンケート調査(2002年1月実施)によれば、高三女子のセックス経験率は45.6%と半数に近く、男子の37.3%を上回っている。同調査では、96年以来、女子が男子を上回っている』とのこと。 恐ろしい事実だ。女子は多くの場合自分を他者からビッチとみられないように事実を3割減で伝えたり、テンプレである「経験人数2~3人程度」とぼかしたり、都合の悪いエピソードを記憶から抹消したりノーカウントとすると聞く。なので事実は回答している数より多いとみられる。一方で男子はナメられないように、事実を3割増しで伝える傾向が強いため、これまた統計値より事実は下回ることが予想される。 『ワイングラスのむこう側』による記述の通り、一部のモテる男が多くの女性を好き放題にし、経験のない男は1度も付き合ったりセックスを経験しないまま生きるという話が真実味を帯びる。 バイアグラの原理については目から鱗だった。ガスとは。 男性側の性欲が湧かないことによるセックスレス、つまり男性側の性欲相障害の治療における成功例のほとんどは、カップルの仲が良く、妻の理解が得られたことが大きな要因だという。 妻のタイプは大別すると3つ。 """ A:夫に対しては依存的で甘える。症状に対しては同調的。医師に対しては協力的。 B:夫に対しては保護的で甘えさせる。症状に対しては冷静で包容的。医師に対しては関与的。 C:夫に対しては支配的で甘えさせない。症状に対しては叱咤激励的。医師に対しては干渉的、制御的。 はっきりしているのはCタイプで、ほぼ全員が離婚している。生き方も積極的で、見切りをつけるのが早い。 Aは根気よく治療に協力し、セックス可能になることが多い。 Bは時間がどちらの結論もあるが、総じて結論が出るまで時間がかかる。 """ この情報はなかなか衝撃的だった。 これはつまるところ、妻の性格、タイプによって、セックスレスになっている場合の結末が高確率で決まってしまっていることを示唆している。 セックスレスになっている場合、とにもかくにも話し合いが重要だ。 自分は何をどうしたくて、何が嫌なのか、何に苦しんでいるのかを明確にし、率直にパートナーに話す。 またパートナーの言い分も、きちんと聞く。 その上でどこに落としどころがあるか、お互いどこかで妥協できないか、という部分を交渉する。 性欲が溜まっていたり、パートナーに対する不満があったり、または育児による疲弊や物理的な時間の余裕がない場合はどうしても相手に対してイライラしたり詰め寄ったりしてしまう。 それでも相手のことを思いやって、お互いが自分の意志を通す権利を持っていることを受け入れなければならない。 どちらか一方の言い分をずっと押し通すのは、既に対人関係や夫婦関係として破綻しているに近い。夫婦のパワーバランスは平等であるべきだと思うからだ。 もし一方的である場合は、率直に、このままでは一緒に居られない、離婚も検討することになるという話を真剣にする必要があるだろう。 そこまで行けば、パートナーも「それだけ深刻な問題なんだな」と受け止めてもらえると思う。 もしそれでも聞く耳を持たないのであれば、もう人間関係が破綻しているとみて、関係を解消した方が自分や、場合によっては子供を含めた幸せにとって良いだろう。
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セックスレスの事例がたくさん載っていて、自分がそうだという人は安心できそう。 そこまで深いところまでは言及がないがざっくりとした理解にはつながる。 アセクシャルを発達障害と書いていたのはびっくりした。たしかに三大欲求である性欲がないのは生物としては違和感があるように思う。でも睡...
セックスレスの事例がたくさん載っていて、自分がそうだという人は安心できそう。 そこまで深いところまでは言及がないがざっくりとした理解にはつながる。 アセクシャルを発達障害と書いていたのはびっくりした。たしかに三大欲求である性欲がないのは生物としては違和感があるように思う。でも睡眠をほとんどとらなくてもよかったり食に対する執着が極端に薄い人も見かける。こういう人たちは発達障害ではないのか? 以下本文中から抜粋 --- セックスは脚と脚の間にあるのではなく、耳と耳の間にある、と言われている。つまりセックスは脳で行うということだ。性欲は視床下部にある性中枢の活動によって起こるが、ヒトの性行動に関わるのは性中枢だけではない。発達した大脳皮質が担う役割が非常に大きい。言い換えれば、あらゆる精神活動が性行動に影響を及ぼすともいえる。 --- 精神科を訪れる患者さんは、本人が意識していなくても、その主訴の背後に多少なりとも性的な問題を抱えている。 アメリカではセックスの問題は虫歯と同じレベルで語られていた。「虫歯を放っておく人はいないでしょう。セックスの問題も一緒です。」 --- セックスレスを引き起こす性障害 ①性欲相の障害 性的な欲望が傷害されている症例で、性欲低下傷害と性嫌悪症に分けられる ②興奮相の障害 男性ではED、女性では膣潤滑不全、いわゆる「濡れない」こと ③オルガズム相の障害 男性では膣内射精障害を主とする遅漏と早漏。女性ではオルガズム障害、すなわち快感が得られない現象 --- 性障害分類 DSM-Ⅳ-TR ① 生来型ーその性機能不全が初めての性体験からずっと存在し続けている 獲得型ーその性機能不全がある時を契機に現れた ② 全般型ーその性機能不全がある特定の刺激状況またはパートナーに限られていない 状況型ーその性機能不全がある特定の刺激状況またはパートナーに限られている ③ 心因型ー心理的要因による性機能不全 複合型ー心理的要因のほかに身体疾患や薬物などが関与している
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多くのセックスレスカップルを診察してきた経験から その治療法と実態に迫る けっこう切実な問題と感じました
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※このレビューにはネタバレを含みます
著・阿部輝夫。順天堂大学医学部卒、医学博士。 順天堂大学精神科助教授、米・コーネル大学精神科Human Sexual Program研究員、順天堂大学付属浦安病院勤務を経て、1996年「あべメンタルクリニック」を開業、同院長。 日本でも数少ないセクシュアリティを専門とする臨床精神科医。 多くの臨床経験から、特殊な事情がないにもかかわらずセックスを回避するカップルが増えていることにいち早く注目し、1991年「セックスレス」という言葉を初めて使い、学会で定義した。 初版:2004年9月、204ページ。 こんな本を読むな、こんな本の書評を書くな、と言われそうだが、敢えて書く。 そして、評価は☆5つ。 嫌悪感がある人には敢えておすすめしないけど、気になる人には是非オススメする本。 率直なところ、読後感は「最悪」。(笑) 読んでいる途中から、脳と胃が少々ムカムカしてきて、大して長くもないし、文章としては読みやすいのに、一気に読み切れず。 というほど、エグい。 しかし、極めてリアル。 先に読んだ『セックスレス亡国論』は、セックスレスと社会との繋がりについて書かれていた本だが、 この本では、セックスレスと心理の繋がりについて書かれている。 セックスレスに限らず、EDや早漏、性嫌悪症など、男性・女性問わず「性」というものに対する問題と症例が、延々と続く。 そもそもなぜ読み始めたかということだが、 きっかけは「性と社会」についての繋がりを考える手掛かりにしたかったからである。 その意味では、『セックスレス亡国論』でも十分に示唆は得られたのだが、この本はもっと深く、内面的なところから論じられているので、この意味での示唆が深くなる。 日本の社会では「性」に関するトピックはタブーになりやすい。 これは、歴史的な部分があるし、これについて触れないということが、一つの常識である。 それは性教育の在り方にも表れる。 ただ、そうした日本的価値観がある一方で、戦後の成長期で性の開放が進み、今となっては飽和状態である。 故に、このトピックが「問題」となって発現する。 ・・・のではないかと思う。 この本が取り上げる問題は、『亡国論』とは違って、病理である。 モテや引きこもりというような問題よりも深い。 結婚前はセックスをするが、結婚した後はしなくなる。 これを「問題」と捉えるか否か。 あるいは、「性」そのものに対し、全面的に拒絶するか否か。 これはその人の問題であるが、成長過程での育てられ方の問題であったりもする。 まあ、そういうプライベートな問題は本人たちだけで話せば良く、 本人たちが「問題」として考えていなければ、全く問題ないわけだが、 この問題から、教育や社会、出会い・結婚、出産といったトピックを考えると、 色々と考えさせられる。 ただし! 早く読み終わりたくなるぐらい、本当に読後感は良くない。 もう二度と読みたくありませんが、怖いもの見たさ、エグいもの見たさの方にはオススメします。
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[ 内容 ] セックスレス・カップルが増えている。 特に三〇代、四〇代が目立つ。 とりわけ気になるのは、かつて例を見なかった男性の「性嫌悪症」が増加していることだ。 日本の男たちになにが起きているのか? ストレスによる生命力の減退、人間関係の希薄化、自己愛人間の増加、肉体のリアリ...
[ 内容 ] セックスレス・カップルが増えている。 特に三〇代、四〇代が目立つ。 とりわけ気になるのは、かつて例を見なかった男性の「性嫌悪症」が増加していることだ。 日本の男たちになにが起きているのか? ストレスによる生命力の減退、人間関係の希薄化、自己愛人間の増加、肉体のリアリティ喪失…様々な仮説はあるが、決定的な要因はわかっていない。 本書では、「セックスレス」という言葉を初めて使い定義化した第一人者である精神科医が、豊富な症例をもとに日本人の心とからだを取り巻く病理を探り、処方箋を提示する。 [ 目次 ] 序章 からだに現れる心の病気 第1章 セックスと心の問題 第2章 夜が怖い男たち―男性の性欲相障害 第3章 思いを遂げられない男たち―男性の興奮相障害(ED) 第4章 そして男の悩みは尽きない―男性のオルガスム相障害 第5章 性に苦しむ女たち―女性の性障害 第6章 セックスレスの処方箋―性障害の治療法 終章 心とからだ、そしてパートナーと向かい合う [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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