ネシャン・サーガ コンパクト版(9) の商品レビュー
伝説の杖ハシェベトを無事に第六代裁き司ゴエルの元に届けたヨナタンは、第七代裁き司ゲシャンとなる。ヨナタンはゲシャンになって数年後、強まってきたバール・ハッザトの脅威を退けるため、ネシャンのあちこちにあるバール・ハッザトの6つの赤い目を破壊する旅に出発し、バール・ハッザトと戦ってネ...
伝説の杖ハシェベトを無事に第六代裁き司ゴエルの元に届けたヨナタンは、第七代裁き司ゲシャンとなる。ヨナタンはゲシャンになって数年後、強まってきたバール・ハッザトの脅威を退けるため、ネシャンのあちこちにあるバール・ハッザトの6つの赤い目を破壊する旅に出発し、バール・ハッザトと戦ってネシャンを救う物語第3部の第3巻。 物語の最終章であるこの巻では、ヨナタンは、禁断の地にある4つ目の赤い目を破壊し、続いて5つ目の赤い目を探して破壊し、最終的にテマナーのゲドールにある暗黒塔でバール・ハッザトと対決する。 禁断の地では、火山にあった赤い目を仲間と協力して破壊し、ディン・ミキトと一緒に次の目を探しに旅立つ。5つ目の忘れられた島へは、夢の島ガラルと<世界の風号>のカルデク船長、そして途中で テマナーの攻撃にあった時にはボレミド族にも助けられながら到着する。忘れられた島では、目の番人と対決する中でクレバスに落ちて地中の空間にあった<喜びの庭>に入り込むが、そこには、ベーミッシュのもう1人の生き残りのバル・シリキトと出会う。赤い目と番人は、<喜びの庭>の番人によって倒され、ヨナタンは第5の目の破壊にも成功する。第6の目を破壊するために、バール・ハッザトの部下であったゼトアの協力を得て、ヨナタンはゲドールの暗黒塔に入り込む。ヨナタンはバール・ハッザトとの対決にも勝利し、世界は予言通り<世界の洗礼>を受け、<涙の地>ネシャンは<慰めの地>メシェレムとなる。 禁断の地での番人との闘いでは、それまで仲間には近くで待っていてもらって一人で対決していたのに、ヨナタンはおそらく初めて番人を倒す方法を仲間と相談して知恵を借りていました。そのためには、自分だけでなく仲間も守る力が必要であり、ここまでの戦いを通して、ヨナタンも成長しているということなのだと思いました。 ディン・ミキトを伴って禁断の地を出る道程では、禁断の地の番人がなんともハラハラさせてくれました。恐怖心を持つと体が石になってしまう番人や、宝石に魅せられると宝石になってしまう番人の部分がとても印象に残っていて、前の巻に続いて、この部分も映像で観たらさぞかし、と思います。 東域からセダノールまでは竜のガルモクの力を借りましたが、忘れられた島へは、今度は夢の島ラック・ゼミラートの力を借りる展開は、ある意味ショートカット的なご都合主義を感じないとは言いきれないものの、人間以外の生物とも公平に付き合い交流出来るという人間性の豊かさの必要性が読み取れました。そういう意味で、ヨナタンの愛の心は、確かに裁き司となるにふさわしい資質を持っていて、更にそれを旅を通して磨いていたのだなと思います。 忘れられた島での番人との闘いは、番人との闘いというより、むしろヨナタン自身との闘いだった気がします。驕ってはいけない、心のあり方というか…。赤い目との対決は、前の巻でも感じましたが、冒険小説のヒーローによくある、勇気と剣での戦いではなく、精神力と心の豊かさでの戦いという意味で、はっとさせられる戦いだと思います。 バール・ハッザトとの闘いは、精神的に攻めてくるバール・ハッザトに対して、読む側も怒りを覚えつつ、どうやってヨナタンが勝利したのかには、宗教的だったり精神的だったりする何かが勝利したらしく、文化の違いからか、イマイチよく理解出来ず…。大人の自分でさえ、よくわからないのだから、子供にはこの最後の結末がちょっと難しいかもしれません。 特に第3部では、これまでの登場人物がそれぞれに成長しているのが見えて、読み応えがありました。最後にはあっちもこっちも見事な大団円で、これだけの長編でこれだけ沢山の登場人物をうまくまとめていて、よく出来た物語だと思います。 部分的に特に宗教的精神的な部分がベースにある描写や展開は、日本人には分かりにくいですし、冒険小説としては、特に前半はテンポが遅くてハラハラドキドキと言う感じでもないです。それでも、読み終えてしばらくすると、また読んでみようかなと思える不思議な魅力のある、壮大なファンタジーでした。
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