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三木清 の商品レビュー

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2023/08/10

三木清の哲学について、社会思想としての側面を中心としながら、さまざまなテーマにかんして考察をおこなっている本です。 著者は、三木清の生きた時代の日本を、「天皇制地主国家資本主義」として規定しています。地主国家資本主義は、未成熟の資本主義の一種であり、日本は封建制から資本主義へと...

三木清の哲学について、社会思想としての側面を中心としながら、さまざまなテーマにかんして考察をおこなっている本です。 著者は、三木清の生きた時代の日本を、「天皇制地主国家資本主義」として規定しています。地主国家資本主義は、未成熟の資本主義の一種であり、日本は封建制から資本主義へと移っていくさいに、地主国家のイデオロギー装置であると規定される天皇制と結びついて、こうしたかたちをとることになったとされています。三木は、このような同時代の日本社会のなかに身を置きながら、「個性者」の創造的な働きによって弁証法的にかたちづくられていく社会のありかたについて、哲学的な考察をおこないました。本書では、そうした三木の議論の諸側面について検討をおこない、その真意を解明することがめざされています。 最終章は、『構想力の論理』について、哲学史的な背景にも目配りをしながら、その思想の意義を明らかにしています。ハイデガーの『カントと形而上学の問題』における構想力の解釈を振り返り、人間学の立場を手放すことのなかった三木が、ハイデガーの議論から触発を受けながらも、それとは異なる立場から構想力の解釈をおこなった三木の思想について論じられます。カントの超越論的図式論が「自然の図式」にとどまっていたのに対して、三木は「行為の図式」にもとづく「歴史の図式」を提唱し、それによってカントとは異なる創造的で歴史的な自由の概念が成り立ちうることを示したと、著者は論じています。 思想史的な観点からの議論と、哲学的な観点からの議論が入り混じっていて、ややとまどいをおぼえてしまったところもありました。

Posted byブクログ