魔女(上) の商品レビュー
フランスの歴史家ジュール・ミシュレ(1798-1874)による『魔女』(1862年)は、中世から近代初期のヨーロッパにおける魔女狩りの実態を描き出した画期的な著作です。 本書の特徴的なのは、魔女を単なる異端や悪魔の手先として糾弾するのではなく、当時の社会構造や民衆の生活の中で彼...
フランスの歴史家ジュール・ミシュレ(1798-1874)による『魔女』(1862年)は、中世から近代初期のヨーロッパにおける魔女狩りの実態を描き出した画期的な著作です。 本書の特徴的なのは、魔女を単なる異端や悪魔の手先として糾弾するのではなく、当時の社会構造や民衆の生活の中で彼女たちが果たしていた役割に着目した点です。ミシュレは、魔女とされた女性たちの多くが実は民間療法の知識を持つ治療師であり、農民たちの病を癒し、心の支えとなっていたことを明らかにしました。 著者は豊かな想像力と共感力をもって、教会や権力者たちによって「魔女」として迫害された女性たちの内面に迫ります。彼女たちは、封建制と教会支配による抑圧的な社会システムの中で、自然との深い結びつきを保ち、独自の知恵と技術を育んでいました。 本書は、単なる歴史書の枠を超えて、権力と抵抗、ジェンダー、民衆文化、医療の歴史など、現代にも通じる多様なテーマを内包しています。ミシュレの流麗な文体と詩的な表現は、学術書でありながら文学作品としての魅力も備えています。 特筆すべきは、本書が19世紀という時代に、魔女裁判を批判的に検証し、近代的な歴史学の手法を用いて分析した先駆的な研究だという点です。それまでタブー視されていたテーマに正面から取り組み、魔女狩りの背後にある社会的・政治的な力学を明らかにしました。 『魔女』は、歴史研究の古典であるとともに、人間社会における差別や抑圧の構造を考える上で、今なお示唆に富む重要な著作として評価されています。中世ヨーロッパの暗部を照らし出すことで、現代社会にも潜む不寛容や偏見の問題に警鐘を鳴らしているのです。
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ヨーロッパ中世の魔女について、成立から魔女狩り手前のサバド隆盛期までを――サタンに魅入られた一人の女を軸に叙事的に記。かなり変わった書き方であるが読み進めやすく、また当時の民衆の置かれた状況(とみに女性に関して)での機微を鮮やかに描く。
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魔女研究には欠かせないですよね。 内容は。。。妖しい部分もありますが参考になります。 引用もさせていただきました。
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久しぶりに大学の図書館(←現在工事中) へ行ったら、文庫の本棚と視聴覚資料が 入口のあるフロアに移動していました。 有り難いことです。 で、題名だけで借りてきました。 中身は、民衆を薬草や呪いで助ける一方、 忌まわしいものとして裁判やら刑罰の対象となった 『魔女』がじゃあ一体な...
久しぶりに大学の図書館(←現在工事中) へ行ったら、文庫の本棚と視聴覚資料が 入口のあるフロアに移動していました。 有り難いことです。 で、題名だけで借りてきました。 中身は、民衆を薬草や呪いで助ける一方、 忌まわしいものとして裁判やら刑罰の対象となった 『魔女』がじゃあ一体なんなのか、か 書かれていました。 古い書物の引用が多いのだけど、 何処までが何かの引用で、どこからが事実で、 更にいつの間にか読者にわかりやすく説明するため であろう作者のたとえ話(妄想)なのか、 わかりづらい…… 中世ヨーロッパについての知識が殆どなかったため、 意外に思うことが多々ありました。 ローマ教会の「あの世で天国で幸せになる」という思想が、 ゆきつくところまでいっちゃうと、 「この世なんてどうでもいい」になって、 病気や怪我は放っておけ、という考えが 恐ろしいと感じました。
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※このレビューにはネタバレを含みます
古代の神々が追放されキリスト教が支配を確立する中世初期、歴史の薄闇の中に魔女はその姿を現わす。やがてルネサンスに至って、苛烈を極めた異端糺問により、おびただしい数の魔女が焚殺された。しかし、この魔女なるものとは一体なんであったのか?ミシュレ(1798‐1874)は中世以来の歴史の流れを追いながらその姿を浮彫りにしてゆく。 1997年7月8日購入 1997年8月20日初読 削除
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大学の課題で読んだ。難しすぎる。もう歴史書なのか小説なのか分からん。これは魔女誕生の考察?納得する点もたくさんあったけど。
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