間主観的アプローチ臨床入門 の商品レビュー
間主観的アプローチの入門書。本書の特徴は、間主観性という概念についての哲学的な考察を極力抑え、より臨床的で具体的に表現しているところにあると思う。そういった意味ではとても理解がしやすく、入門書には適しているといえる。 ただし、本来この間主観性は、哲学の世界で昔から探究され続け...
間主観的アプローチの入門書。本書の特徴は、間主観性という概念についての哲学的な考察を極力抑え、より臨床的で具体的に表現しているところにあると思う。そういった意味ではとても理解がしやすく、入門書には適しているといえる。 ただし、本来この間主観性は、哲学の世界で昔から探究され続けてきた概念であり、理解などはそう易々できるものではなく、むしろ本当の意味での理解はできないものともいえる。その点には注意して読み進める必要があるだろう。 訳者もあとがきで述べているように、本書の中では伝統的な精神分析を随所で批判しているが、それは全てが誤りであると否定しているわけではない。また、それらの理論的な背景を抜きにして間主観的アプローチを行えるわけでもない。むしろ、本書で否定しているのは、治療者が自身の理論を絶対視する、教条的で、対話なき閉ざされた姿勢である。 私個人の感想としては、著者らの考えは臨床的に誠実で、クライエントのことを第一に考えているように感じられた。その誠実な姿勢は、他のあらゆる学派を超えて重要となるものなのではないだろうか。浅学ながら、私はそのような印象を抱いた。
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