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戦争が遺したもの の商品レビュー

4.4

20件のお客様レビュー

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2012/11/20

いっぱい 心に引っかかる「言葉」があった。 イヤー。久しぶりにいい本に出会った。 戦争から戦後の思想史が 鳥瞰 できる。 こうやって ひとりの鶴見俊輔の人生を浮き彫りにするだけで 時代がはっきりと見えるというのがすばらしい。 上野千鶴子、小熊英二は 質問者 として優れている。 ...

いっぱい 心に引っかかる「言葉」があった。 イヤー。久しぶりにいい本に出会った。 戦争から戦後の思想史が 鳥瞰 できる。 こうやって ひとりの鶴見俊輔の人生を浮き彫りにするだけで 時代がはっきりと見えるというのがすばらしい。 上野千鶴子、小熊英二は 質問者 として優れている。 原点としての成り立ちについて 鶴見俊輔は 1922年(大正11生まれ) 私の父親は 4歳年下なので 私から見ると父親世代である。 そんな鶴見俊輔が 生い立ちにさかのぼって 自分のhistory を語ろうとする。 鶴見俊輔には 母親という存在が大きな意味を持っている。 過大なる期待を持った 母親が  鶴見俊輔を折檻をし続けて トラウマになるほどに。 そのため 女性との付き合い方に 苦労したようだ。 鶴見俊輔は 母親に 「悪い子」といい続けられて 自分は 悪い子だと思って 生き続けた。 そのことは 懐疑主義 という立場になる原因とした。 伊藤俊輔の父親は 総理大臣であった伊藤博文の前の名前が  伊藤俊輔という名前だったので・・・ その「俊輔」を 自分の子供 鶴見俊輔に付けた。  日本で1番になるように期待を込めた。 父親は 1番病にとりつかれ 自らも 総理大臣になりたいと思っていた。 鶴見俊輔は 自分の名前が重荷だった。その名前を返上したいと思った。 彼は 自分で 名前を 「狸男」と呼ぶ。 彼にとっては タヌキ が気楽らしい。 今風に言えば 鶴見タヌキ俊輔という名前がいいだろう。 生い立ちとは その後の人生にどれだけの影響を与えるのだろう? 鶴見俊輔は言う  『私の生い立ちについて話しておきたいんだ。  これは私の思想や行動の方法以前の方法につながるものなんだ。  原点というか、制約といってもいい。』

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2012/09/05

あくまで読者の視点ですが、対談の空気感が伝わるような構成はいいなって思いました。 たとえば、あまりにきれいに纏まりすぎてる(1つの結論に皆で必死に向かっているような雰囲気の)ものや、対談者の裏の上下関係がうっすら窺えるような対談本もありますが、そういう胡散臭さがないなって。相手に...

あくまで読者の視点ですが、対談の空気感が伝わるような構成はいいなって思いました。 たとえば、あまりにきれいに纏まりすぎてる(1つの結論に皆で必死に向かっているような雰囲気の)ものや、対談者の裏の上下関係がうっすら窺えるような対談本もありますが、そういう胡散臭さがないなって。相手に敬意を持って、真剣に正直にぶつかってる感じが好きです。

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2011/10/05

私は学生の頃全く本当に勉強をしなかったので、今の政治というものをよく理解しておらず、ちゃんと理解してニュースとかちゃんと見たいなあと漠然と思っていた。…でも仕事でもなんでもそうだけど、私は『話を途中から理解する』という頭の賢さを持っていないので、今の政治を理解するには戦後の様子か...

私は学生の頃全く本当に勉強をしなかったので、今の政治というものをよく理解しておらず、ちゃんと理解してニュースとかちゃんと見たいなあと漠然と思っていた。…でも仕事でもなんでもそうだけど、私は『話を途中から理解する』という頭の賢さを持っていないので、今の政治を理解するには戦後の様子から知らないと、きちんと理解できないのでは?と思い最近超スローペースで、自分が気になった戦後に関する本を読んでいる。この本もその中のひとつ。内容はというと、戦後世代で、団塊世代にあたる上野千鶴子氏(昭和23年生まれ、フェミニスト)、物心がついたときには高度成長の最中だった(ファミコンブームが20歳の頃)ベイタウン世代の小熊英二氏(昭和37年生まれ、歴史社会学者)の2人が聞き手となって、大正11年生まれで戦争を実体験している鶴見俊輔氏(哲学者)自身の戦中からの話を聞くというもの。鶴見氏を含め、3人共いわゆる『エリート』な人たちなので、戦中、戦後ともに政治家や学者、思想家などの『知識人』の思想や事件を中心に話は展開されていく。 …ので、ハッキリ言ってついていけない話だらけ!とほ。でも最近ちょこちょこ本を読んでいるおかげか、この本自体が堅苦しい&難しい文面ではなかったせいか、ぼんやりと理解できたように思う。…でもぼんやりでも自分の中で「おおっ」と思う話やフレーズがたくさんあったので、すごくよかったし、これから勉強する上の知識としてもすごく参考になった。ちょっと賢くなったような気もするし(笑)。 まずこの本でよく出てきた言葉が『一番病』。学校でも政治でも“一番を目標”をするため、自分のオリジナルの意見を持っていない、考えを0から組み立てられない人が、日本にはすごく多いということ。その上、世の中やまわりを見ながら自分が上手に立ち回る賢さを持っているから、意見がころころ変わり易い。そういう人が世の中を動かしていることが多く、それは戦前も戦中も戦後もあまり変わらないらしい。戦争がはじまる前は『戦争反対派』として戦っていた人が、戦争がはじまった途端『戦争大賛成!』とか言ってたりするし、戦後から今までのなかでも『左の人』があっさり『右の人』になってたりする。それは、無知ゆえに『その場に雰囲気』だけで流され、あまり深く考えないままコロコロと意見を変え易い私たち“世論、民意”も同じ仕組みだな、と思った。考えがあって、意見を変えることは悪くないけれど、個々の中身がからっぽで、それに無自覚な意見ほど罪なものはないのかもしれない、と思った。 『朝鮮人』と『女性』に対する感覚。戦中からの鶴見氏の考えや行動はとても誠実というか実のある人ってカンジだけど、この『朝鮮人』と『女性』の感覚だけぽろり、と抜けているような印象。そこは聞き手の2人がいろいろツッコミを入れているけど、話が宙ぶらりんになるようなかんじ。鶴見氏はいろいろ正直に話をしていて、ある時期まで朝鮮人に対する自分の感覚が『差別』であると認めていて、これだけイロイロ視野広く物事を見たり判断できる人でも、『世代』というものはそういう感覚も染み付かせてしまうんだなあと思った。ある時期から著者を含め、朝鮮人への差別感覚が取り除かれてきているのだけれど、それを聞き手の小熊さんは“高度成長で日本が金を持つようになったので、差別で自尊心を支える必要がなくなった(金のない日本人がさらに金のない朝鮮人を馬鹿にして自尊心を支える)”と表現していて、ああ、差別の仕組みってそういうものなんだ、と改めて突き付けられたカンジで軽い衝撃だった。人の思考が出来上がる過程で、環境や家族や時代や経済状況がすごく関係しているし、そのなかで出来上がった感覚や思考は人に染み付いて、そこから離れるのはなかなか難しい。鶴見氏の女性に対する感覚も、誠実ではあるけれど、そういう『世代』の感覚での仕方なさ、みたいなものを感じたかも。 鶴見氏の長い人生のなかで、表現や発言や思考で筋が通っていないところ、矛盾している感覚も正直に、曖昧なところは曖昧のままで、すごく誠実に答えていた。他にも『エリートの特権の自覚のなさの罪』とか、『ヤクザの仁義的感覚』や、『どんなジャンルや考えの人でも、筋の通った人、純粋な人を赦してしまう、申し訳く思う罪悪感からの感覚』などなど、新しい視点をいろいろもらった本になって、すごく嬉しい。図書館で借りたやつだけど、また自分で購入しようと思う。

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2011/07/13

鶴見俊輔氏の「大義というような抽象的なものによって、決断するべきじゃない。人間にはそんなことを判断する能力はないんだ。誰となら、一緒に行動していいか。それをよく見るべきだ。」という発言は、氏が哲学者・思想家であるだけにとても含蓄がある。 『全共闘・三島由紀夫・連合赤軍』や『ベ平連...

鶴見俊輔氏の「大義というような抽象的なものによって、決断するべきじゃない。人間にはそんなことを判断する能力はないんだ。誰となら、一緒に行動していいか。それをよく見るべきだ。」という発言は、氏が哲学者・思想家であるだけにとても含蓄がある。 『全共闘・三島由紀夫・連合赤軍』や『ベ平連と脱走兵援助』の章からは60年代頃の混沌とした様や熱気が強烈に伝わってきて、いまどきの下手な小説よりはるかに面白い。小熊英二、上野千鶴子氏両氏は鶴見氏の掌の上で上手に泳いでいる。もちろん好印象です。

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2013/01/25

歴史は紙上にあるものじゃない。これは現実にあってその頃に生き、考え、死んでいった人の息遣いがまるで聞こえてくるように感じられる。 決して書き直しをしたり、変えたりすることのできない過去、歴史。私たちはそれをどこまで真摯に受け止め、今につながっていることを実感できるものか。 そんな...

歴史は紙上にあるものじゃない。これは現実にあってその頃に生き、考え、死んでいった人の息遣いがまるで聞こえてくるように感じられる。 決して書き直しをしたり、変えたりすることのできない過去、歴史。私たちはそれをどこまで真摯に受け止め、今につながっていることを実感できるものか。 そんなことを考えさせられた。

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2011/09/09

素直におもしろかった。お話の中にでてくる、たくさんの人々の著作をわたしはほとんど読んだことはないけれど、生まれ年が約20年ずつずれた3人が一堂に会し、信頼のもとに忌憚なく話される内容が濃密。人間が生きてゆく上で「ぼんやりとして確かなもの」は確実に存在するとわたしも思います。

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2009/10/14

鶴見俊輔に上野、小熊両名が話を聞く形で進む書籍。 鶴見の少年としての戦争に対する想いが強烈でこころに残る。 何度でも読みたいし、いろんな人に薦めた本。自分の子供にも読んでほしい1冊。

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2009/10/04

小熊 「もともと『嘘は嫌いだ』の純真さで押していくと、保守に行ってしまうという必然性がないでもないと思うんですよ。なぜなら、左派は理念を掲げているけれど、やっぱり政治でもあるので、嘘というか、理念とのずれが目立つ。それにくらべて日本の保守は、理念はなくて本音丸出しの金儲け主義だか...

小熊 「もともと『嘘は嫌いだ』の純真さで押していくと、保守に行ってしまうという必然性がないでもないと思うんですよ。なぜなら、左派は理念を掲げているけれど、やっぱり政治でもあるので、嘘というか、理念とのずれが目立つ。それにくらべて日本の保守は、理念はなくて本音丸出しの金儲け主義だから、とりあえずの嘘はなさそうに見えるという(笑)。  理念があれば現実とのずれがあるのは当然で、それが嘘にみえるから耐えられないといったら、本居宣長みたいに『からごころを去って、清き明き心へ帰れ』になるしかない。それは当然、『現実』とか『伝統』とか『生活』の前で人間の理性の小ささを知れ、という主張になる。そうなれば、政治的には保守になりやすいと思うんです。私のみたところ、感性がよくて純真というか、ナイーヴな人は、若いころは『大人の世界の嘘』を攻撃する姿勢をとるけれど、年をとるにしたがって保守になるというパターンが少なくないですね。」 鶴見 「だからまあ、あんまり固い、思いつめた姿勢じゃなくてね(笑)。軽率なのは愛すべきなんだけど、嘘は全部だめだとか、思いつめたのはよくないって(笑)。ほんとうに嘘のない状態に帰ろうなんて、現実には無理ですよ。やるなら自殺するしかない。」 小熊 「そこは鶴見さんの最大の矛盾ですよね。昨日の話に出た、戦争に純真に献身している少年兵と、適当にごまかしている老兵とでは、どちらが好きですかという問題と重なります。そもそも鶴見さんは純真な人がお好きだけれど、じつはお父さん譲りの政治的センスもあって、軽率には走らないでしょう。」 鶴見 「だから、私は悪人なんだよ(笑)。そこが矛盾しているといえばそうなんだけど……。」 本書PP.323-324より

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2015/02/12

烏兎の庭 第二部 書評 12.9.05 http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto02/bunsho/turumiy.html

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2009/10/04

・あとがきに、実際には対談中に重い沈黙もあった、というようなことが  書いてあったが、その様子が想像できる ・それぐらい深く鶴見俊輔という人間に踏み込んでいる ・戦争や安保を知らない世代の人間としては、  あの時代の空気を知る1冊としても意味があった ・3人それぞれの個性のぶつか...

・あとがきに、実際には対談中に重い沈黙もあった、というようなことが  書いてあったが、その様子が想像できる ・それぐらい深く鶴見俊輔という人間に踏み込んでいる ・戦争や安保を知らない世代の人間としては、  あの時代の空気を知る1冊としても意味があった ・3人それぞれの個性のぶつかり合いが垣間見える部分があり、  そこもまた面白い 再読したい一冊。

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