日本を愛したティファニー の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
2004年初版、題名からティファニーファンの本かしら?と 思う方も多いはず。 何気なく手に取ったこの一冊は、とても刺激的な一冊でした。 鎖国当時の日本、国力を弱めて行ったオランダが 当時の貿易権を保持しようと、遠くアメリカの商船に オランダの国旗をつけさせて、ペリー以前に4度も 来日していた記録は周知されていない。 ヨーロッパから追いやられた清教徒、 新天地を目指して、開拓民となる。 今で言うところのお礼奉公を済ませ、 綿花などの商売を始めたティファニーの祖。 その子供チャールズ ティファニーは 清教徒の勤勉さ、実直さ、誠実さで ティファニーの基礎を作る。 彼が当時江戸から運ばれた 精巧な細工の箪笥を見て一目惚れし、借金までして 購入、ティファニーの店に飾ると評判になり 高価な値段で売れた。 先見の目があったチャールズは、ヨーロッパでの フランス革命に始まる混乱を聞きつけるや否や 共同経営者ヤングに連絡し、当時、逃亡するため宝石を売り払う貴族から 門外不出とされていたような素晴らしい宝石を 買い付けに成功する。 いままで、庶民には見ることもできなかったような 素晴らしい宝石はティファニーからアメリカに渡った。 チャールズの息子ルイスは、天才肌とも言える芸術家になる。 始めは絵を書いていたが、ガラス作品に方向を変える。 当時江戸からたくさんの調度品、陶器や根付などの 品々を見ると、一部の人だけの芸術から 人々の暮らしの中に、共に生きる美を追求し 建築、インテリアなど多方面に作家活動が変わっていく。 あまりに美を追求するあまり、度々赤字が続き なんども会社を作っては解散に追いやられるが 父、チャールズがその度援助の手を伸ばす。 度々世間を騒がせる彼はその行動から 徐々に敬遠され飽きられるようになるが その功績は大きい。 またティファニーは、開国前明治維新前に すでに日本の職人をアメリカに呼んでいる。 万博で金賞を受賞した作品は日本の象嵌の技術を 銀製品に応用した作品だったし、 対称を最善とする欧州の美意識から外れる 非対称の空間認識の美を 日本の美術品(生活用品にまで溢れる)から学び 一番目の日本ブームを起こしたのはティファニーだった。 ティファニーは、多くの財をなし大きな会社になるが 政府とも大きなつながりを持っていた。 南北戦争直前、使える武力を持たなかった北軍に ヨーロッパから多くの刀剣、銃を調達したのは 他ならぬティファニーだ。 南北戦争当時、徴兵制度に不公平感を持つアイルランド人が 暴動を起こし、店が焼き払われようとしたその時 どこからともなく北軍が現れ、無事にすんだという不思議は 今でも逸話として残る。 ティファニーが多く調達した銃は 南北戦争後、多くが密輸され日本にたどり着く。 当時、中国が列強に簡単に負けてしまうを見て、 幕府、藩も軍備を急いでいたからだ。 もちろん南北戦争で使われた中古の銃や大砲、戦艦などは まるで濡れ手に粟のごとく、多くの利益をアメリカやイギリスにもたらした。 ティファニーによって起こされた日本ブームは 明治維新により急激な資本主義に移行して 取り残された国内の不公平感、不満から 目をそらすための列強に生んだ植民地主義として 中国へ迫ろうとする小国日本に アメリカからの不公平な中国に関する条約を 日本が突っぱねた事で、ブームは一気にしぼむ。 かわいい美しい物を作る日本が噛み付いてきたのだから 一気に敵国となり、アメリカ国民の民意がそれに同調する。 アメリカの資本主義のはじまりから、 世界との関連、日本の明治維新前後の動乱の時期の 世界と日本の動きなども、実に分かりやすく興味深い。 美しいティファニーがどうやって、作り上げられてきたのか? どう守ってきたのか? 驚くほど関係の深い日本とのつながり。 丹念に調査を積み上げ、文書を照らし合わせ編集されたこの本は 入り口が優しいだけに、驚くほどの情報が読みやすくおすすめな一冊でした。
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