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若かった日々 の商品レビュー

4.1

10件のお客様レビュー

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2024/04/14

身体の中に手を突っ込まれてかき混ぜられているよう、でも吐き出すことができないのは、まだその準備ができていないから。まだ、読み、飲み込むことしかできないのなら、せめて忘れたことを、記憶の底に積った泥のなかから呼び起こせ。 “彼女と同じで、私は誰も必要としない人間でありたい。彼と同...

身体の中に手を突っ込まれてかき混ぜられているよう、でも吐き出すことができないのは、まだその準備ができていないから。まだ、読み、飲み込むことしかできないのなら、せめて忘れたことを、記憶の底に積った泥のなかから呼び起こせ。 “彼女と同じで、私は誰も必要としない人間でありたい。彼と同じで、私はいつも誰かにそばにいて欲しい。彼女と同じように裏切られるのではないかと恐れている。私を愛してくれる人を、彼と同じように、裏切ってしまうのではないかと恐れている。自分が信用できない人間であることを私は恐れ、彼と同じように、もし腰を落ち着けたら何かすごいことを逃してしまうのではないかと恐れる。” “でも私は、ちょっとほっとしている、私のろくでもないふるまいが私自身のものではなく、遺伝で引き継いだものなのだ、一種の病なのだと思えるから。” 受け継いだものを、俯瞰することも切り分けることもできないまま、僕は今を生きている。 いつかレベッカのように語れるようになるときがきたとしたら、それはすべてが遠く過ぎ去ったときなのだとしたら、僕は呼びかけるのだろうか、戻ってきて、戻ってきてと。 “二人から与えられたものを私は持ち続けたい、それをみんな取り除いてしまいたい。 二人と同じところを私は終わらせたい。それがいつまでも終わってほしくない。”

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2022/09/25

随分と昔に読んだ「体の贈り物」は、ジュンパ・ラヒリの「停電の夜」と共に、翻訳小説の素晴らしさを知った小説。 本棚にあっていつか読もうと思っていて忘れていた「若かった日々」を取り出して読む。(最近読書のターボが入り、こういうことが多い) 最初の「天国」で心掴まれる。ああ、レベッカ...

随分と昔に読んだ「体の贈り物」は、ジュンパ・ラヒリの「停電の夜」と共に、翻訳小説の素晴らしさを知った小説。 本棚にあっていつか読もうと思っていて忘れていた「若かった日々」を取り出して読む。(最近読書のターボが入り、こういうことが多い) 最初の「天国」で心掴まれる。ああ、レベッカ・ブラウン、お久しぶり! 「ナンシー・ブースあなたがどこにいるにせよ」で、レベッカ・ブラウンの歩んだ道を知る。 本は買っておくもんだなと思う。

Posted byブクログ

2019/12/01

作者の若かったころや子供のころを振り返った作品。不幸な結婚生活を送っていた両親を見つめる目、初恋の相手を描く詳細な、でも不思議と生々しさの欠いた文章が印象的。夜のキャンプでナンシー・ブースと二人きりで会話をしたシーンで、彼女の横顔の輪郭が浮かび上がる描写が印象的だった。

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2017/05/31

レベッカ・ブラウンの文章は、言葉にしてみたら生々しい人の(あるいは女や少女の)感覚に鋭く訴えてくる気がする。 誰かに手首を掴まれたとする。 その時の相手の手のひらの温度や湿度、皮膚が軽くあるいは強く引っ張られる感覚。 その皮膚の周りにまつわる様々な時間と出来事。 それを記憶して...

レベッカ・ブラウンの文章は、言葉にしてみたら生々しい人の(あるいは女や少女の)感覚に鋭く訴えてくる気がする。 誰かに手首を掴まれたとする。 その時の相手の手のひらの温度や湿度、皮膚が軽くあるいは強く引っ張られる感覚。 その皮膚の周りにまつわる様々な時間と出来事。 それを記憶していたり、何かでその強さや痛みを思い出したり。 そういった皮膚や脳やみぞおちの辺りにまで響く、生理的な感情を呼び起こす文が多いので、とても読みたい時期と、辛くて読めない時期にはっきり分かれてしまう。 そのかわり、読み出したら頭までぬるい水に浸かったようにその世界に入り浸りになる。 言葉で感覚が満たされてしまう。 自分で言葉などの表現につなげることができず、時間を重ねて忘れていった気持ちがある。 そんな気持ちや、感覚を呼び起こしてくれた言葉を拾ってみる。 「私は口で彼女に触れたかった。彼女を生きたまま食べてしまいたかった。 ・・・彼女と一緒に自分わわなくしてしまいたかった。」 「父のことを、自分の領分の外でどう生きたらいいかわからなかった、居心地の悪かった人間として見られるようになってきている。」 「彼女と同じで、私は誰も必要としない人間でありたい。 彼と同じで、私はいつも誰かにそばにいてほしい。」 読んでみれば大げさなものは何も見当たらなくとも、人が生きていく中で潜在的に感じること。 生きていくうちに身体で感じ、覚えてしまうこと。 原文がどんなものかはわからないけれど、彼女はそれを丁寧に手抜きすることなく、清潔な言葉で表してくれると思う。 生々しいと感じるのに、とてもデリケートで美しい。 この短編集は、彼女が扱うテーマが訴えかけてくる感覚が万遍なく、でもきっちり隙間なく満たしてくれる。

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2011/04/28

病気で安静にしている間にレベッカ・ブラウン「若かった日々」を。己の慎み深さを誰かに示すためにした選択が慎み深かったことなんてないよな、ってタイトルの一文を読んだ時に心から思った。慎み深さや思慮深さやあなたの配慮の素晴らしさなんて犬にでも食わせちまいなって笑って云えたら良かったのに...

病気で安静にしている間にレベッカ・ブラウン「若かった日々」を。己の慎み深さを誰かに示すためにした選択が慎み深かったことなんてないよな、ってタイトルの一文を読んだ時に心から思った。慎み深さや思慮深さやあなたの配慮の素晴らしさなんて犬にでも食わせちまいなって笑って云えたら良かったのに、あの時。 レベッカ・ブラウンは恋愛小説より家族?小説の方が好きなんですが「安全のために、私たちはあなたの目を潰し私の耳の中を焼くことに合意した」という例のあれは心から好きです。それができることがわかっていてそれをぎりぎりで選ばない関係、というのが書いてみたい、いつか。 (別のブログに書いてたの転載)

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2012/01/31

若かりし日々の随筆な感じなのに匂い立つ哀しさが魅力的。 レズビアンとして恋をする過程などもしっかり書かれていました。 国を越えてはしばしで共感するところあり。思春期って難しいけど本当にうつくしい。

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2009/10/07

2008.06.07. 文体やリズムに慣れるのに、ちょっと時間がかかってしまったのが、残念。やっとおもしろい、これはいいかも、と感じ始めたのは中盤も過ぎた頃だった。惜しい。でも、好き。鮮明な映像として浮かび上がる言葉と、抽象的な感覚をすくい取ろうとする言葉。特に、「ナンシー・ブー...

2008.06.07. 文体やリズムに慣れるのに、ちょっと時間がかかってしまったのが、残念。やっとおもしろい、これはいいかも、と感じ始めたのは中盤も過ぎた頃だった。惜しい。でも、好き。鮮明な映像として浮かび上がる言葉と、抽象的な感覚をすくい取ろうとする言葉。特に、「ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ」が、いい。瑞々しい。

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2011/05/09

記憶の断片。 描かれていることのほとんどは、自分にとっては経験のない遠い情景なのだけれど、にもかかわらず自分の欠片を呼び起こされる。

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2009/10/04

情景描写が秀逸だね…惚れたよ。湧き上がってくる激情の描き方も好きだな。レベッカ・ブラウンさんは、小さな変化をすごく詳細に感知できる力がある気がする。

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2009/10/04

大好きなレベッカ・ブラウンの新作。自伝的なものでした。期待を裏切らず面白かった!輝くように美しい子供のころの出来事も、許せずにいた悔しい思いも、すべて過ぎた「若かった日々」のころのことと受け止めて自分の中で消化して理解しようとしているのがなんとも爽やかで沁みます。「ナンシー・ブー...

大好きなレベッカ・ブラウンの新作。自伝的なものでした。期待を裏切らず面白かった!輝くように美しい子供のころの出来事も、許せずにいた悔しい思いも、すべて過ぎた「若かった日々」のころのことと受け止めて自分の中で消化して理解しようとしているのがなんとも爽やかで沁みます。「ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ」が好きです。

Posted byブクログ