位相入門 の商品レビュー
本書は「基礎事項」「距離空間」「位相空間」の3章構成になっている。 「基礎事項」では集合や写像、連続の定義、ε-近傍による開集合の定義など、本書を読み進めるにあたって必要な概念ついての説明が書かれている。また、本書の数式の記述に慣れるには丁度よく、初学者にとってありがたい内容と...
本書は「基礎事項」「距離空間」「位相空間」の3章構成になっている。 「基礎事項」では集合や写像、連続の定義、ε-近傍による開集合の定義など、本書を読み進めるにあたって必要な概念ついての説明が書かれている。また、本書の数式の記述に慣れるには丁度よく、初学者にとってありがたい内容となっている。 「距離空間」ではユークリッド空間を例として、距離空間でのε-近傍による開集合の定義から連続写像の定義へと進み、コンパクト性、連結性の説明へと進む。この章で距離空間において開集合から連続写像を説明できることを示し、距離空間での議論を抽象化することによって自然に位相空間の定義へと進めるように工夫されている。 「位相空間」では前章「距離空間」で行われた議論に基づいて、位相、開集合の定義からコンパクト性、連結性の定理の説明が行われる。また、その過程に開基・加算公理、分離公理の説明があり、2点の分離について空間の分類が行われる。 各章の構成は、定理の後に例や例題が書かれていて、議論を展開していくために必要な要素が小分けに記述されている。順番も考えられていて、それぞれの定理が後の議論のどこで使用されているのかが分かりやすく、理解の助けになる。 本書の議論の終着点であるコンパクト性や連結性についてはその恩恵がどこにあるのかは本書の中では触れられないので、実感が湧いていない(+単に理解できていない)。活用例など他の文献である程度触れた後に本書に戻ってくる必要があると感じる。 演習問題は実際に手を動かすことによって、本文を読むことと問いに答えることの難易度の差を実感することができた。巻末に解答が添えられていて、初学者でも写経をすることで頭の整理と解答の書き方について体感できる。 入門にはまだ程遠いと感じるが、他のテキストを読むためのいい心構えになった。
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