最後にして最初の人類 の商品レビュー
本編を読み終え、余韻を味わいたかったので、訳者あとがきは一日置いた。SF小説というより、未来という時間軸を通して語る哲学書として読んだ。特定の登場人物による会話や冒険譚に依らず、常に全体を俯瞰し、しかし随筆のように個として語りかける。これだけの長編で、徹頭徹尾、その姿勢は一貫して...
本編を読み終え、余韻を味わいたかったので、訳者あとがきは一日置いた。SF小説というより、未来という時間軸を通して語る哲学書として読んだ。特定の登場人物による会話や冒険譚に依らず、常に全体を俯瞰し、しかし随筆のように個として語りかける。これだけの長編で、徹頭徹尾、その姿勢は一貫している。うむむ。
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示唆的で、想像力に富んでいるとも思うが、特に入り込めず。 これだけ長い時間軸で語られると、現在の人類がどれだけ歴史上の一点でしかないということかを感じる。大きいスケールで人類というものを考えるきっかけにはなった。
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アーサー・Cクラークが影響を受けたというので手にとってみた。13歳の時読んだというのだから発売された1930年に読んだようだ。これを13歳で読んだとは・・ 人類の長い進化の果てとか、「都市と星」「2001年宇宙の旅」といった長いスパンの作品の思想に確かに影響している気がします。 ...
アーサー・Cクラークが影響を受けたというので手にとってみた。13歳の時読んだというのだから発売された1930年に読んだようだ。これを13歳で読んだとは・・ 人類の長い進化の果てとか、「都市と星」「2001年宇宙の旅」といった長いスパンの作品の思想に確かに影響している気がします。 ちょっと読みだせなかったので、はしがきでの著者の目的を読み、目次を見、5種類の年表をメモ。 第一次世界大戦のあと、英仏、露独、米中戦争の後、第一次世界国家成立、ののち「アメリカと化した世界」になるあたり、鋭い。 人間は進化し、巨大脳にするなど人間改造をしたり、火星、金星、冥王星にまで進出するようだ。 20億年後は・・ いつか再挑戦したいと思います。 はしがき:この本はフィクションで、起こりうる人間の未来の記録、あるいは少なくとも、絶対におこらないとはいえない物語を創作しようとこころみたもの。さらにこの物語を、今日人間の行く末に生じつつある変化に関連づけてみようとした。 1930発表 2004.2.20第1刷 図書館 2020.アイスランド映画化71分 監督・脚本・音楽:ヨハン・ヨハンセン(アイスランド出身1969.9.19-2018.2.29)2021.7.23日本公開
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フーリエの著作が完成したらこのようなものになっただろうか。そうはならなかっただろう。20世紀に出たこの本は、視座を宇宙の果てへ広げ、時間をその彼岸まで押し広げた。人類を時間的に刹那的なものと位置づけつつ、理性への信仰がある点は啓蒙的側面を有する。 1930年にこの本が出たというこ...
フーリエの著作が完成したらこのようなものになっただろうか。そうはならなかっただろう。20世紀に出たこの本は、視座を宇宙の果てへ広げ、時間をその彼岸まで押し広げた。人類を時間的に刹那的なものと位置づけつつ、理性への信仰がある点は啓蒙的側面を有する。 1930年にこの本が出たということは感慨深い。同じ時期に出た宇宙におけるユートピア論(いやこの本をユートピアというのは当たってないようにも思えるから、超時空的SFとでも言っておこうか)としては、1908年に著されたボグダーノフの『赤い星』がわずかに挙げられるかもしれない。しかし、本作品の射程の遠大さはそれとは比するべくもない。 この本の序盤は、同時代的証言でもある。「民族」的発想を前提とした欧州各国の精神性に対する評価、米欧の関係、中国観、などなど。しかし、国家という枠組みが消滅して以降の記述の自由さ、展開の新しさこそ、ステープルドンの真骨頂である。ネタバレになるといけないのであまり書かないが、そのスケールと問いの(想像力の)深さという点においては、この時代におけるまごうことなき頂点にある一冊であると言えるだろう。
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人類誕生から、第18紀人類までの20億年という時空を描いた本作。 終わりと始まり総てを通し個が全体であり全体が個でもあり全てが円環しているのだと… 澄名な境地に達しながらもほんの些細なことで野蛮に陥ってしまう哀しさと、過ちを繰り返す刹那さに翻弄されながらもヒトという種が持つ底知...
人類誕生から、第18紀人類までの20億年という時空を描いた本作。 終わりと始まり総てを通し個が全体であり全体が個でもあり全てが円環しているのだと… 澄名な境地に達しながらもほんの些細なことで野蛮に陥ってしまう哀しさと、過ちを繰り返す刹那さに翻弄されながらもヒトという種が持つ底知れぬ勇気を説く作者の希望を信じてみたくなる。
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この作品の価値は「1930年発表」の事実なしには語れない。現代の作品だったなら、幼稚な科学考証と小難しい語りが目につくところだが、アポロどころか、ガガーリンが地球を見る30年も前に、この壮大なSFが書かれたかと思うと、人間の想像力というものに感心せざるをえない。あと13年後には1...
この作品の価値は「1930年発表」の事実なしには語れない。現代の作品だったなら、幼稚な科学考証と小難しい語りが目につくところだが、アポロどころか、ガガーリンが地球を見る30年も前に、この壮大なSFが書かれたかと思うと、人間の想像力というものに感心せざるをえない。あと13年後には100周年。再評価されてもいい作家。
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人類の未来を思い描いたとき、いったい、何年、何百年先の未来を想像しうるでしょうか。そして、思い描いたその姿はどのようなもので、人類は何処に向かっているでしょうか。 哲学の巨人オラフ・ステープルドンは、本書にて20億年にも及ぶ人類興亡の未来史を描きます。驚異的な想像力と確かな目的を...
人類の未来を思い描いたとき、いったい、何年、何百年先の未来を想像しうるでしょうか。そして、思い描いたその姿はどのようなもので、人類は何処に向かっているでしょうか。 哲学の巨人オラフ・ステープルドンは、本書にて20億年にも及ぶ人類興亡の未来史を描きます。驚異的な想像力と確かな目的をもって描かれる本書は、アーサー・C・クラークをはじめとした後年のSF作家に影響を与えたようで、確かにその豊満な哲学的教養によって描かれる描写の数々には圧倒的な甚深さを感じます(正直、終盤の最後の人類による開陳の数々には、あたまにハテナが飛び交いましたが…)。 1930年に著されただけあって、金星や海王星に人類が移住していたりしますが、そのあたりは気にするところではありません。大切なことは、著者が描く人類の目的とは何か。本文を引用すると「形態が調和のもとに複雑化し、さらには精神が統一と知識と歓喜と自己表現へと覚醒するよう(中略)すなわち、宇宙が認知され賛美され、さらなる美で報われること」とありますが、この目的だけでも後世に影響を与えているんだなぁと感嘆。同種の目的を描く作品には何度も出会っています。 そして、本書では、人類が大いなる目的を遂げるため、あるいは種の存続を果たすため、人類自身の体組織に大規模な改良を加えます。たとえば、超巨大脳の人類を生み出したり、環境に適合するため有翼人種となったり。この点については訳者あとがきにて解りやすく触れられていますが、著者は、人類が真の精神超脱を遂げるためには、人類の体組織を進化させる以外にありえないと考えていたよう。なかなか面白い(いや、危険か?)思想を抱いていたんですね。 この体組織の改造については、以前読んだ「シリウス」にも関連するところがありました。「シリウス」でもその最期が悲劇的であったように、本書においても華々しい結末を迎えるわけではありません。道徳的に高潔で理想の進化を遂げた最後の人類でさえ、終局のときは訪れるのです。結末の描き方は、著者なりの哲学があるのでしょうが、稚拙な身にとっては、いやはや想像し難いところです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
読み終えて真っ先に浮かんだ考えは「1930年代のSF小説で、尚且つ著者はこの書籍を執筆するまでSF小説をまともに読んだ事すらないのにこれ程の内容が書けるとは。」でした。 時代が時代であった為に、太陽系惑星内に高度知的生命体が登場するシーンがいくつか存在しますが、それ含めても現代SF小説と十二分に渡り合える出来栄え。 特に科学技術においては、クローン技術・核分裂に似たエネルギーシステム等、現代技術を当てている点も特筆に値します。 問題は、情報量が膨大の為、読破するには時間を要する点。
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クラークが感動したという作品を手にとってみた。 やはり素晴らしい 20億年にわたる第1期から18期までの人類の歴史だ。金星、海王星に移住したり、水棲生物や飛翔生物になったりしながら、人類は盛衰する。その記録が本書である。 18期までの人類には、人工知能もないし、高度な...
クラークが感動したという作品を手にとってみた。 やはり素晴らしい 20億年にわたる第1期から18期までの人類の歴史だ。金星、海王星に移住したり、水棲生物や飛翔生物になったりしながら、人類は盛衰する。その記録が本書である。 18期までの人類には、人工知能もないし、高度な精神的知性体もないのがユニークだ。 哲学的エンディングも含め読みやすいとは言えない作品だが、これが1930年に書かれたことに驚愕する。 今まで見逃していた作品だが、巡り合えてよかった!
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