大和の最期、それから の商品レビュー
「大和の最後」というのは、吉田満の『戦艦大和の最後』のことで、本書は大和の乗組員で生きて帰ってきた吉田が、その負い目と戦いながら、死んでいった仲間たちの生き様をいかに記録していったかを語る。吉田は戦後日本銀行に勤めるが、本書の筆者千早耿一郞もそこで吉田を補佐する。当時の日本銀行員...
「大和の最後」というのは、吉田満の『戦艦大和の最後』のことで、本書は大和の乗組員で生きて帰ってきた吉田が、その負い目と戦いながら、死んでいった仲間たちの生き様をいかに記録していったかを語る。吉田は戦後日本銀行に勤めるが、本書の筆者千早耿一郞もそこで吉田を補佐する。当時の日本銀行員たちは、忙しい業務のあいまに文学活動を続け、社内誌を出しただけでなく、多くの小説、記録を残している。千早氏もその一人であった。ぼくは中学生のころ『戦艦大和の最後』(創元社版)を買っている。文語文だったそうで、ちゃんと読んだかどうかは怪しいが、とても印象に残る本で、吉田満の名もずっと記憶に残っていた。(本書とは今年2016年の下鴨古書市が出会いの場であった)本書によれば創元社版は最終版で、その前にGHQの検閲を経たいくつもの版が出ている。GHQは民主主義を唱えたにもかかわらず占領政策に反するものには徹底して検閲を行っていた。その過程も興味深い。本書では、特攻として沖縄に出撃する大和に乗っていた乗務員たちが、その死をいかに意義づけようとしたかを書くとともに、生き残った者たちがそれを本当に生かしているかを問い続けた吉田の生き様を生き生きと描く。吉田はもとカトリック教徒であったが、プロテスタントであった妻の影響で改宗する。吉田にとって宗教は宗派を越えて、自分に生きる力を与えるものであったろう。残念ながら吉田は56歳で亡くなってしまったが。
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「大和の最期」は最初のノート・文語体から、写本、雑誌、単行本、決定保存稿まで計8種類ある。その間の、GHQによる検閲や筆者の心の推移を反映しているとして分析
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烏兎の庭 第二部 書評 4.28.05 http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto02/bunsho/yamatoy.html
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