苦い祝宴 の商品レビュー
「リディア・チン&ビル・スミス」シリーズ5冊目。 シリーズとしても5作目で、奇数巻なのでリディアが語り手のお話。 チャイナタウンの大物が経営する有名料理店で働く青年4人が、ある日突然揃って姿を消した。友人の弁護士ピーターから話を聞いたリディアが半ば強引に捜索の仕事を引き受けると...
「リディア・チン&ビル・スミス」シリーズ5冊目。 シリーズとしても5作目で、奇数巻なのでリディアが語り手のお話。 チャイナタウンの大物が経営する有名料理店で働く青年4人が、ある日突然揃って姿を消した。友人の弁護士ピーターから話を聞いたリディアが半ば強引に捜索の仕事を引き受けるところから始まる物語。 ここから次々と予想外の事態に見舞われることになるのはいつもの展開だが、危ない目にあって、それを知ったピーターから依頼を取り下げられても『縁ができてしまったのだから。あっさり放り出すわけにはいかないわ』と今回もまた自ら深入りしていく。 リディアだけでなく色々な輩が4人を追うストーリーは、チャイナタウンにおける旧勢力vs.新興勢力の権力抗争と、それに伴う政争や権謀術数が絡み、リディアをして『すっかりこんがらかってしまったわ。もう頭が働かない』と言わしめる複雑さだが、その中で祖国を置いて中国から移民してくる人たちの複雑な現実が詳らかにされていくのがなかなか興味深い。 中国人で女性のリディアがいつも肩肘張って生きている理由が知れるとともに、いつもやり合っている母親がちゃんとリディアのことを理解していることも分かるところは温かい。 いつものようにビルを相棒に調査に勤しむリディアだが、二人の間の会話はこれまで以上に丁々発止。NYのそこかしこでおいしそうな料理を挟んで『からかい半分の口説き文句にうんざりしたようにつっけんどんにやり返す』関係が楽しめる。 最終盤、リディアの無鉄砲な作戦がうまく行くか、料理店の地下室への潜入からはなかなかのサスペンス(まあ、何かあればビルが駆け付けるものと思っていたが、今回はビルはあまり目立たず、最後はいいところを横取りされてしまったな)。 巻頭の「著者但し書き」に中国人名の表記の仕方に注記があり、『なにごとも習うより慣れろ、です』とあったが、最後まで慣れず、それもあって語られる事件の顛末にはいささか消化不良のところはあり。
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ビル&リディアシリーズ5作目。 今回はリディアの番。 ニューヨークの中華レストラン界隈で繰り広げられる従業員の地位向上を巡る組合抗議活動。 友人で組合活動を支持する弁護士のピーターに、証人が必要となった場合の第三者的立場 を求められて同席したリディア。 抗議活動自体はさほどの大事には発展せずに終わったものの、後日、活動に参加していた組合関係者と同居する4人が謎の失踪を遂げる。 リディアは僅かながらでも関わった同郷人の失踪が気になり、半ば自ら首を突っ込み始める。 アメリカにおける移民社会を色濃く描く作品。 千載一遇のチャンスを求めて本国から身一つといってもよい程の装いで海を渡り、厳しい労働環境、生活環境に耐えながら夢を追う。 広いアメリカの狭いニューヨークの一角に独自の文化風習を維持しながら、同郷人でひしめき合い、ある者はのし上がり、ある者は道半ばにして人生を全うする。 そんな背景をすごく感じた物語。 そんなこんなで中国人生活圏内を嗅ぎまわるので、今回はリディアという英語名ではなく「チン・リン・ワンジュ」としての活躍が主なのが特徴的。 また、事件そのものは相変わらずの混迷模様なので誰がどう糸を引いているのかわけがわからなくなるのだが、ビルとリディアの掛け合いが面白く、それだけでどんどん読んでしまう。 途中、誰も彼もから半人前に見られている感じが拭えないリディアの自尊心が暴走し、危険を省みない行動に出ようと、”私の行動に誰の許可も必要ない!””ひとりでできるもん!”状態となったときに諫めたビルの言葉にじ~んときた。 前作『どこよりも冷たいところ』では逆の場面があったよねー。 こうして二人で補完し合っている関係性がいい。 次は『天を映す早瀬』。
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今回はリディアが主人公。 大手中華料理チェーン店の従業員組合に絡む話し。 リディアのお父さんも腕のいい料理人だったんだ。 昔からの大立者と、振興の若い成り上がり者、時代の移り変わりと勢力図の書き替えなどなど。
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リディア・チンは亡くなったお父さんのことや、 中国からの移民のことで、 ちょっと感傷的になっていたかな。 その場に合わせて、姓を先に言ったり、名前を先に言ったりして、 アメリカ式と中国式を使い分けるところは、 同じく姓-名の順である日本人としてはとても共感できた。 ビル・スミ...
リディア・チンは亡くなったお父さんのことや、 中国からの移民のことで、 ちょっと感傷的になっていたかな。 その場に合わせて、姓を先に言ったり、名前を先に言ったりして、 アメリカ式と中国式を使い分けるところは、 同じく姓-名の順である日本人としてはとても共感できた。 ビル・スミスとの関係は相変わらず。
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リディアとビルのシリーズ5作目。 今回はリディアの事件です。 という訳で、チャイナタウンの事情がいろいろ絡んできます。 事件の発端はレストランで働く不法移民の従業員4人の失踪。 その後爆破事件有り、 チャイナタウンの大物や怪しげなイケメン中国人、 果ては国務省まで出てきてこの事件...
リディアとビルのシリーズ5作目。 今回はリディアの事件です。 という訳で、チャイナタウンの事情がいろいろ絡んできます。 事件の発端はレストランで働く不法移民の従業員4人の失踪。 その後爆破事件有り、 チャイナタウンの大物や怪しげなイケメン中国人、 果ては国務省まで出てきてこの事件はいったい何処へ? と最後まで引き込まれて読みました。 宗親会という馴染みの無い仕組みなんかも出てきて、 従業員達は一体何故、何処へ消えたのか最後まで分かりませんでした。 負けん気の強いリディアは「私にしか出来ない」と突っ走り、 ビルは白人故にコミュニティに入り込むことが出来ず、 捜査のアシストをしつつも一歩引いてリディアの意志を尊重します。 ほんとナイスコンビです。 でもリディアももう少し大人になろうよと感じる場面もありました。 家族の過保護さにうんざりするのも分かりますが、 心配しているビルにその言動は無いんじゃないのというところです。 常に突っ張っている感じがして疲れそうな生き方です。 そうかと思うと母親にはあまり言わないので、 そこは諦めずにもう少し自分を出していこうよと思いました。
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今まで読んだこのシリーズの中では 一番中国色がつよい。 移民や政治の話で 中国人だからこその考えや行動が色濃く表されている。 「中国人」であるがゆえに さまざまな期待をもって近づいていく人たちに 憤りを覚えながらもそれが抗えない定めだとわかってぼやくリディア。 ...
今まで読んだこのシリーズの中では 一番中国色がつよい。 移民や政治の話で 中国人だからこその考えや行動が色濃く表されている。 「中国人」であるがゆえに さまざまな期待をもって近づいていく人たちに 憤りを覚えながらもそれが抗えない定めだとわかってぼやくリディア。 その彼女にメアリーが諭す。 ビルは自分が中国人でないから身を引こうとしたことを。 このシーンがとても好きだ。 ビルとリディアの関係を こういう表現で深めていくその技が次に期待させる。
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うん、面白い。主人公のお母さんのこととか、なんか共感してしまうんだよね。二人ことももどかしくて、恋愛小説でもあるのでは?と思った。 ☆☆☆☆
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ニューヨークのチャイナタウン生まれの私立探偵、リディアと、無鉄砲で粗野でピアニストと言う、ちょっと正体不明のビルが、交互に活躍するこのシリーズ、今回メインになるのはリディア。 28歳になっても母親と同居し、しょっちゅう嫌味の嵐(笑)をかぶっているリディアは、友人の弁護士ピーターの...
ニューヨークのチャイナタウン生まれの私立探偵、リディアと、無鉄砲で粗野でピアニストと言う、ちょっと正体不明のビルが、交互に活躍するこのシリーズ、今回メインになるのはリディア。 28歳になっても母親と同居し、しょっちゅう嫌味の嵐(笑)をかぶっているリディアは、友人の弁護士ピーターの依頼を受けて、中華料理店のウエイター失踪事件に関わる。チャイナタウンは新しく流入してきた福建人と旧勢力の広東人がひそかに勢力争いをし、火種を抱えていた。次から次へと予想外の事件がおき、爆発事件でウエイターの一人が死亡、ピーターも負傷する。失踪と爆破事件の背後にいるのは誰だ? 今回は、ニューヨークの移民社会の裏側とその中に潜む争いを、リディアが探り出すこの作品、いつもに増して心理描写が細やかで、特にリディアと母親の関係をはじめとして、中国人のアイデンティティがすごいリアリティを持って描かれている。 顔を合わすといつも喧嘩のビルとの関係も、静かに深まりつつあるみたい。 二人っていいパートナーだなあ。思いついたことを次から次へと口にするうちに事件の真相に行き着くリディアのやり方が、読んでて飽きない。なかなか面白かった。 随所に食べ物のおいしそうな描写や「お茶」を飲むシーンが登場し、興味深い。
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