三好十郎論 の商品レビュー
本書には、三好十郎が北村透谷や広津和郎らとの交流の話もあり楽しめます。私も中学時代、単なるミーハー的な関心から、国語ノートの表紙に「北村透谷、高橋和巳・・」などの名前をこれ見よがしに書き連ねていたおませな時期があったことを思いだしましたが、本書の田中単之は、私とは違い、まさに全身...
本書には、三好十郎が北村透谷や広津和郎らとの交流の話もあり楽しめます。私も中学時代、単なるミーハー的な関心から、国語ノートの表紙に「北村透谷、高橋和巳・・」などの名前をこれ見よがしに書き連ねていたおませな時期があったことを思いだしましたが、本書の田中単之は、私とは違い、まさに全身全霊で三好と交流を重ねていたのがわかり、彼にしか書けない三好の素晴らしい評論が完成しています。 筆者の田中が中学教師だった頃に、三好の作品を読んで手紙を書いたら長文の返事が返ってきたことから二人の淡い交流が始まります。(全部で36通の返信があったそうです)実は、似た体験が私にもあり、中学の時に「オール読物」の中の筒井康隆氏のミステリー短編を読んで、生意気にも「これはこうした方がいい」などと厚かましいハガキを送ったことがあります。確かに返事をもらった記憶が微かにあるのですが、そのハガキもどこかに紛失しているので今となってはそれも定かではありません。 そして私がなぜ急に、三好十郎に興味を持ったのか(誰かに勧められたのか?)不明ですが、本書を読んで三好作品をきちんと1冊読んでみたくなったのは事実です。本書の著作目録と年譜もよくまとまっており、さらに筆者のあとがきを読んで、田中氏自身にも興味を持ちました。おそらく、これまで千冊くらいしか売れていない需要の少ない特殊な本(失礼!)だとは思いますが、一作家の評論として最高の出来栄えとなっていますので、一読をお勧めします。 三好 十郎(1902年4月23日- 1958年12月16日)は昭和初期から終戦後の復興期にかけて活動した劇作家、詩人。佐賀市生まれ。12歳で両親を失う。早稲田大学英文科卒業。早稲田大学在学中から試作を発表し、プロレタリア劇の作家として活動を始めた。その後、左翼的な活動に疑問を覚えたとして組織を離脱。戦後は、近代の既成文学全般への批判を貫き、無頼派の一人といわれる。 1951年(昭和26年)9月、雑誌『群像』に「炎の人」を発表。2001年4月23・24日ETVにて「吉本隆明がいま語る・炎の人・三好十郎」放映。詩人・思想家・文芸批評家吉本隆明と京都三月書房宍戸恭一らが三好十郎の生涯と作品を論じた。(Wikipedia)
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