八月十五日の開戦 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
池上氏はこれで3作目、前二つは海戦を描いていた。今回は陸戦、しかも夏とはいえ極北の僻地。 氏お得意の史実をベースにしたフィクションである。自分はセミノンフィクションと名づけた(苦笑)毎回この手の戦記モノを読むに思うことは、あぁ本当にご先祖様ありがとう、ってことだ。旧ソヴィエト連邦によるポツダム宣言受諾後の侵攻を、決死の覚悟で防いだ旧帝国陸軍の活躍がなければ、現在の北海道は存在しないだろうと思う。 様々な階級の軍人の活躍で、事態は短期で収束を迎えることができるが、短いながらもそれぞれに濃厚なドラマがあり、実際に起こったことも似たようなものであったのではないか? 指揮官の苦悩、孤独に大きくページを割かれており、これにも共感できた。 おそらく無理だろうけど、この北の地を生きてる間に見てみたいな…と思った。
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千島列島最北端のシュムシュ島での日ソの戦いを描いた小説。どこまでがフィクションでどこまでが史実かは個人的には分らないが、シュムシュ島での戦いが日本軍有利に停戦したことと、ソ連が北海道侵攻まで考えていたことは史実。 物語はノモンハンやガダルカナル、ミッドウェーなどの負け戦を経験し...
千島列島最北端のシュムシュ島での日ソの戦いを描いた小説。どこまでがフィクションでどこまでが史実かは個人的には分らないが、シュムシュ島での戦いが日本軍有利に停戦したことと、ソ連が北海道侵攻まで考えていたことは史実。 物語はノモンハンやガダルカナル、ミッドウェーなどの負け戦を経験した日本陸海軍の寄せ集め軍(正規軍だが緘口令ゆえに員数外として僻地に追いやられた部隊)が、日本分割をもくろむソ連軍と対決し、勝利のうちに停戦するものがたり。 停戦を調停するのは米軍だが、それを動かしたのは日本の軍部の活躍。 場面は日本軍とソ連軍をそれぞれ見せてくれる。その中で戦う人々の人間模様が活き活きと良く描けていると思った。 最後の場面では著者が中島元大尉の復員の場面で、最も言いたい事を伝えているように思う。それは中島が「生き残ってしまった」という負い目から「(死んでいった)彼らのおかげで帰ってこれたのだ」と確信する場面。最後の最後の場面ではあるが、とても大きなメッセージを読者に伝えていると思い感動をした。 国の歴史を振り返って、先人の命の代償の上に今の自分があると思う事は、日本人として、人間として、とても大切なことであると思った。 小説では満州国内にユダヤ人をかくまったこと(所謂フグ計画)が、日ソの停戦を仲介した米国を動かした伏線になっている。米国が仲介するように動く動機がユダヤ人社会の後押しであるとすると、戦後朝鮮やベトナム、ドイツが分断国家になり、インドもパキスタンとバングラディシュが分れてインドに対立するようになるこのような分断国家(政策)を大国が推し進めていたにもかかわらず、日本が曲がりなりにも統一国家であったことは、やはりユダヤ人社会の庇護、あるいは恩返しがあったのだろうと思われる。そんなことを考えさせられる小説であった。 星五つ。
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読んでいる時よりも読み終わった後からいろいろ考えて、最終的に「面白かった」と結論付ける感じの本。 板倉大尉がうろたえた兵達を一喝したあとの「この戦いは、是が非でも勝たねばならん。勝つためには手段は選ばん。俺は貴様らの命も擂り潰す。しかし、無駄死にはさせん(後略)」ってセリフが、な...
読んでいる時よりも読み終わった後からいろいろ考えて、最終的に「面白かった」と結論付ける感じの本。 板倉大尉がうろたえた兵達を一喝したあとの「この戦いは、是が非でも勝たねばならん。勝つためには手段は選ばん。俺は貴様らの命も擂り潰す。しかし、無駄死にはさせん(後略)」ってセリフが、なんというか、戦争モノを読むときに心に留めておきたい感じ。
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