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不死を売る人びと の商品レビュー

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2019/02/11
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バイオテクノロジーの研究によって、老化を遅らせたり、遺伝子操作によって不治の病の治療を目指した科学者と、その技術をビジネスに利用する経営者、そして、倫理上の問題から研究費を出すことを拒む米国政府について書かれた本。 “「夢の医療」とアメリカの挑戦”という副題から、科学の可能性と、研究者たちの努力とドラマを期待したが、読んでいるうちに「うんざり」してきた。確かに、この分野はものすごく可能性を秘めていて、その研究の過程も描かれている。しかしそれ以上に、いろいろな組織からの圧力や一部の世論を気にして、アメリカ政府は対応を決めかね、終いには研究費を出さないことにしてしまう。そんな政治的な面が「うんざり」してしまった。 米国政府が研究費を出さないということで、研究者達は企業からの研究費に頼らざるを得ない。しかしそれには必ず企業の利益がからんでくる。新しい発見をして特許をとるにしても、科学者の特許ということにはならず企業のものになってしまったり、発見したものを研究者同士で交換することも制限されてしまう。これでは、科学界全体の足かせになってしまう。 倫理面の問題としては、例えば人工中絶した人間の形をした「胎児」を研究に使うということは、倫理的に反対するのは当然だろう。また、研究内容は全く違うが、兵器開発に利用されてしまった核の二の舞にならないとも限らない。不死やクローンについても、映画ルパン3世の「マモー」のように、クローンが悪さをするかもしれない。しかし、それはありえないことだったり、ある程度の規制をかければすむこと。メリットのほうが大きい研究を否定することは、科学の可能性をも否定している。 このようなジャンルの本を選ぶとき、科学の可能性と研究者のドラマを楽しみにして読むが、今回は、読んでいるうちに政治や企業が可能性の芽を摘んでしまっている実態を突きつけられ失望した。科学って、もっと夢のあるもののはず。

Posted byブクログ