多言語社会がやってきた の商品レビュー
「言語政策」というのは聞いたことはあってもあまり知らなかったおれにとってはとても良い言語政策についての教科書だった。言語について勉強していない人でも、国際化した世界の状況を知り、日本の現在の姿を見つめ直す一助となる本だと思う。本はすべてQ&A方式で書かれ、口調も柔らかいので「教科...
「言語政策」というのは聞いたことはあってもあまり知らなかったおれにとってはとても良い言語政策についての教科書だった。言語について勉強していない人でも、国際化した世界の状況を知り、日本の現在の姿を見つめ直す一助となる本だと思う。本はすべてQ&A方式で書かれ、口調も柔らかいので「教科書」らしくはないが、日本(第1章)や世界(第2章)の言語政策の事例が多く紹介されており、それらの印象深い事例を読むだけでも言語政策について記憶に残る部分が多い。第1章は、下記の『日本語の歴史』の内容と重複する部分がある。また、第2章は世界中を駆け巡っている感じになるので、読んでいて楽しい。第3章には「理論・一般編」として、言語政策に関わる社会言語学的な事項も含まれている。 おれが個人的に印象に残った部分のうちの一部は、例えば、野元菊雄によって提唱された簡約日本語、戦後アメリカ側が日本にローマ字を国字にするよう求めた話、罰札、ハワイ語やマオリ語の復権運動、アフリカはなぜアジアのように独立後に教育言語を現地語に変えないか、「地位計画」と「コーパス計画」などで、たくさんある。日本がいかに言語使用の面で稀な国かというのが分かった。 言語政策と言っても内容も広いし扱う地域も世界に及ぶので、中には興味の持てない話題もあるかもしれないが、この本は104のQ&Aのうちどこから読み進めていってもいいようになっているらしい。どんな人でも必ず自分の関心のある部分があると思うので、ぜひ一度手にとってみて、パラパラめくってみてはどうだろうか。でもその分、最初から順に読んでいくと、前に書いてあったことが後で何度も繰り返される部分がある。あと第3章は言語政策の「理論・一般編」なのだから、これを第1章に持ってくると良かったのではないかと思う。索引もついていて、読んだあとは参考書としても使える。
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