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皇帝の嗅ぎ煙草入れ の商品レビュー

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2021/12/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

殺人事件が起こるミステリーは、登場人物が少ないと真犯人の目途があっさりついてしまうことがある。しかしこの作品は「確実に殺人を犯していない人物」が一人、警察・探偵役が二人、被害者が一人、他の登場人物が七人しかいないという中で、最後の最後まで誰が犯人なのかが分からない。これはかなりすごいこと。 心理描写と各登場人物の行動に関する記述が緻密かつ巧妙で、「殺害の機会がありそうな人は、心理的に見て被害者を殺しそうにない」一方、「被害者を殺害する動機がなさそうな人には、殺せる機会があるように見える」という状態。結果、最後の謎解きまで誰が犯人なのかが分からないまま、一気に読み続けることになる。 そして最後に、探偵役の心理学者が謎解きをする時に至って、読んでいる側は「確かに、被害者の殺害シーンが描写されているところで、その記述があった!」と気づかされ、著者ディクスン・カーが仕組んだトリックに脱帽することになる。心理学者が事件の全容を解説するパートを読みつつ、トリックの部分を読み返していくと非常に楽しい。そして「してやられた!」という気になる。 この、「著者がありのままを書いている中で、真犯人が誰なのかを探り当てる」というのが、推理小説の醍醐味だと思う。あとがきによると、著者は推理小説の先駆者であるドイルやチェスタトンを崇敬していたらしいが、推理小説としての「フェアな態度」に関しては、カーのほうが上手かもしれない。

Posted byブクログ