魂の流れゆく果て の商品レビュー
この本は筆者の傑作である「血と骨」の原点とも呼ぶようなフォトエッセイ集です。作者の人生はモチーフとして繰り返し語られて来ましたが、写真などとあわせて語られるとまた違った味わいを持ったものになります。 「金の前で人は無力だが、同時に金の前で人間性を問われるのである。私は金の前で私...
この本は筆者の傑作である「血と骨」の原点とも呼ぶようなフォトエッセイ集です。作者の人生はモチーフとして繰り返し語られて来ましたが、写真などとあわせて語られるとまた違った味わいを持ったものになります。 「金の前で人は無力だが、同時に金の前で人間性を問われるのである。私は金の前で私という人間性をあますところなく晒された。 そしてまた金の前で自滅していった多くの人間を見てきた。」 ――魂の流れ行く果て。より。 この本は著者の梁石日が印刷会社を興し経営し、倒産させ、莫大な借金を抱えて大阪から出奔し、当時親戚がいた仙台をはじめとする東北を転々と放浪し、無一文となって上京し、そして新宿公園に所持金が尽きてうずくまっているときに見た求人広告から採用されてタクシードライバーになるまでを回想したフォトエッセイです。 まだ心の傷が完全には癒えていないので、詳細はかけないけれども、僕が彼の小説に惹かれるのは、彼の数万分の一に過ぎないが、印刷会社を倒産させて都落ちをしたというくだりに限って言えば、僕も彼に似たような、もしくは近しい経験をしたことがあるからである。 このことについてはその他もろもろの事情があって今は伏せます。この中に掲載されている大阪や、新宿の界隈は、非常に猥雑な写真で、それが僕のなかに直球で入ってくるのでした。
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初めて梁石日を読んだのは血と骨だった。圧倒的な暴力と憎しみの後に残るのは、虚無感か。アパッチ族から起業、倒産、そして出奔。フラッシュバックを思わせるような写真とエッセイ。クッにまつわる話は、再生への祈りか。好きなエピソードだ。
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