こんなもんじゃ の商品レビュー
山崎方代の短歌を文芸春秋の編集部がテーマごとに編んだアンソロジー。かつて方代は文芸春秋に原稿を持ち込んだことがあり、その時は相手にされなかったそうだから、このようなアンソロジーが編まれたことをお墓の下でどう思っているだろうか。「こんなところに釘が一本打たれいていじればほとりと落ち...
山崎方代の短歌を文芸春秋の編集部がテーマごとに編んだアンソロジー。かつて方代は文芸春秋に原稿を持ち込んだことがあり、その時は相手にされなかったそうだから、このようなアンソロジーが編まれたことをお墓の下でどう思っているだろうか。「こんなところに釘が一本打たれいていじればほとりと落ちてしもうた」「留守という札を返すと留守であるいつでも留守の方代さんなり」「一本の傘をひろげて降る雨をひとりしみじみ受けておりたり」「もう姉も遠い三途の河あたり小さな寺のおみくじを引く」「声をあげて泣いてみたいね夕顔の白い白い花が咲いてる」「遠い遠い空をうしろにブランコが一人の少女を待っておる」
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5552さんのレビューで出会うことができました。ありがとうございます! 茶碗や土瓶などの日常的なものや石ころ、雨や月、雪、花などの自然を詠った歌、年齢を交えた歌など、等身大のぬくもりを感じるような歌が多い。元気のないときにほっとするような応援歌のように思えてくる。散文のようで平易...
5552さんのレビューで出会うことができました。ありがとうございます! 茶碗や土瓶などの日常的なものや石ころ、雨や月、雪、花などの自然を詠った歌、年齢を交えた歌など、等身大のぬくもりを感じるような歌が多い。元気のないときにほっとするような応援歌のように思えてくる。散文のようで平易な言葉なのにちゃんと短歌になっていて説得力がある。 巻末に『方代・私の一首』として山吹色の台紙にカバー絵の東海林さだおさんや俵万智さん、谷川俊太郎さんらによる解説が掲載。 年譜より抜粋~ 1914年大正3年山梨県現中道万智右左目生まれ、八人兄姉の末っ子。27歳(昭和16年)入隊、一等兵となり台湾、マレー等南方を転戦。29歳時チモール島戦闘で砲弾片を受け右目失明、左目も視力低下している。病院船で帰還後十代から始めていた作歌を再開。靴修理、歯科技工の手伝い、雑用農作業など転々とする。41歳第一歌集『方代』自費出版、翌年『短歌研究』へ総合短歌誌初の掲載。60歳第二歌集『右左口』、66歳第三歌集『こおろぎ』刊行。その後自選歌集や随想集を刊行している。肺がんによる心不全のため70歳死去。 特に心に響いた歌 <いつまでも転んでいるといつまでもそのまま転んで暮らしたくなる> <戦争が終った時に馬よりも劣っておると思い知りたり> <植木鉢かかえてあげればそこだけがぽっかり黒く口あけている> <こんなにも赤いものかと昇る日を両手に受けて嗅いでみた> <一生に一度のチャンスをずうっとこう背中まるめて見送っていた> <声をあげて泣いてみたいね夕顔の白い白い花が咲いてる> <ふりむくと己れの影がついて来る月かげなれど味方でもある> <縄跳びの赤い夕日の輪の中に少女が十字を切っている> 一首目の本歌取りを詠んでみました。 いつまでも眠っていたいいつまでもそのまま眠っていたい月曜 (☆ベルガモット作☆)
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なんでこんなに沁みるんだろ。 山崎方代(やまざき・ほうだい)さんは、今の山梨県に生まれ、定職に就かず、生涯独身を通した歌人。 方代、という名は、子を次々に亡くした方代さんのご両親が「生き放題、死に放題」の意味から取って付けたとされているそう。 方代さんの歌には、孤独が満ちている...
なんでこんなに沁みるんだろ。 山崎方代(やまざき・ほうだい)さんは、今の山梨県に生まれ、定職に就かず、生涯独身を通した歌人。 方代、という名は、子を次々に亡くした方代さんのご両親が「生き放題、死に放題」の意味から取って付けたとされているそう。 方代さんの歌には、孤独が満ちている。 でも、しばしば、他のものの気配を鋭敏に感じていたよう。 その他のものとは、土瓶や、石や、夕日や、こおろぎだ。 方代さんの歌の中ではほとんどの他のものが「笑って」いることが驚くほど多い。 なんで笑っているんだろう。 人間は可笑しくても笑う。寂しくても笑う。悲しくても笑う。 でもやっぱり、方代さんは可笑しくて、それらの他者を「笑って」いるとしたのではないだろうか。 生きてるって、可笑しいね。老いて死ぬって可笑しいね。 方代さんの歌から、私はそう感じた。 究極の生命賛歌だと思う。 <人生はまったくもって可笑しくて眠っている間のしののめである>
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泥くさく楽しく切ない短歌の本。 こおろぎが一匹部屋に住みついて昼さえ短いうたをかなでる いつまでも転んでいるといつまでもそのまま転んで暮らしたくなる それもまた忘れさられてゆくものかことりことりと土を踏む音 こんなにも赤いものかと昇る日を両手に受けて嗅いでみた いつまでも握っていると石ころも身内のように暖まりたり 大切な一日である起き出して冬の空気をはりたおす 一生に一度のチャンスをずうっとこう背中をまるめて見送っている 飛行機のプロペラの音高ければ見えぬ眼をもて空仰ぐ父 声をあげて泣いてみたいね夕顔の白い白い花が咲いている なるようになってしもうたようである穴がせまくて引き返せない
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図書館から借りました 短歌集。 「首」に入っていた短歌も入っているが、それ以外もある。 発行は2003年。 首は1981年だから、こっちの方が圧倒的に新しい。 ここで気に入ったのは。 「へり少し こぼれておれど この壺の つぼの姿勢は 常に正しい」 色紙に書きたくなるような言葉ですね。 この人の短歌はお日様の匂いと、土の匂いが濃いのです。
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本当にさりげない言葉なのに、はっとさせられ、胸を突かれる歌ばかり。 自分を振り返らせられる歌集です。 手元に置いて、時々パラパラと捲りたい一冊。
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だいすき…!!永遠に好きな歌人です 素敵すてきほんとに好き 最初新聞のコラムで知って、これ買って、更に胸をがしっと掴まれました 声を大にしておすすめしたい
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