戦場のピアニスト の商品レビュー
先に映画を2度鑑賞、そして彼を救ったホーゼンフェルト氏の伝記も読んでからこちらを読みました。 映画化の際に多少なりとも脚色されているのだろうなと思っていたのですが、驚いた事に見事にこの自伝に忠実に描かれていました。 最後にはホーゼンフェルト氏の日記の抜粋が載っていたのですが、そ...
先に映画を2度鑑賞、そして彼を救ったホーゼンフェルト氏の伝記も読んでからこちらを読みました。 映画化の際に多少なりとも脚色されているのだろうなと思っていたのですが、驚いた事に見事にこの自伝に忠実に描かれていました。 最後にはホーゼンフェルト氏の日記の抜粋が載っていたのですが、その生々しい苦しみを綴った文章も合わせて非常に心に刺さりました。 シュピルマン氏は正に神に生きろと言われていたのでしょう。
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戦争中のユダヤ人が受けた悲惨な事実はすでに数多くの本で読んだ。だから、この本を読んでもあまり衝撃を受けなかった。戦争だから殺しあうことはわかるが、非戦闘員に対して行ったホロコースト、迫害なのだから事は罪深い。改めてナチスはひどいことをしたものだなと思う。 「戦場のピアニスト」はテレビで先に見た。つい最近またテレビで2回目を見たところだった。本を読んで忠実に映画が作られていたんだなと思った。映画も本も印象に残るシーンは多い。 もう、これで終わりかと思われるシーンをたびたびくぐり抜けて生き抜いたシュピルマン。並みならぬ精神力なくしてできることではないだろう。 1個のキャラメルを6人で食べての家族との別れは切なかった。しかも突然に引き離されての別れだった。その後、家族たちは物語にほとんど登場しなかった。 しかし、やはり一番の印象シーンはドイツ軍将校だ。戦争という非人間的な行為の中に実に人間的な行為をした将校に軍人としての適格性だの任務遂行能力だのという必要は全くない。必要以上の殺戮を避けることができるかどうかが人間性の問われるところだ。日米沖縄線でも勝敗が決した状況の中でアメリカの衛生兵は傷ついた日本の民間人を治療している。戦争という極限状況の中で人間性を失わなかったこのドイツ軍将校にもっともっと焦点を当ててほしいと思う。 世界中で今もなお、行われている小競り合いや本格的な戦闘。戦わなくてはならない状況というものもあったと思う。そんな中でもこのドイツ軍将校のように一片の人間性は人として失ってはならないと思う。
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クライマックスが印象に残った。WW2の時のドイツ人は皆残酷だとどこか思っていた自分に恥ずかしさを憶えた。暖かい心を持っている人もいれば、冷たい心を持っている人もいる。今、仲の悪い国の人たちもそうではないかと考え直させられた。
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映画はすでに見ていたけど、背景について勉強不足のため本で知識を補完することにした。当事者でありながら、感情的にならずとても冷静に自身に起こっている出来事を淡々と書き綴っているという印象。これが事件の何十年後かに書かれたものならわからなくも無いけど、第二次大戦直後に書かれたというか...
映画はすでに見ていたけど、背景について勉強不足のため本で知識を補完することにした。当事者でありながら、感情的にならずとても冷静に自身に起こっている出来事を淡々と書き綴っているという印象。これが事件の何十年後かに書かれたものならわからなくも無いけど、第二次大戦直後に書かれたというから驚き。VRで一人称の視点から出来事を見ている感覚。見ている本人がどう思っているかが最大限に削られているように感じた。ただ反戦のための悲劇が書かれているのではなく、異常な状況下での人間心理が丁寧に描かれていて、これが対岸の火事ではなく人間がいる場所ならどこででも起こり得ることだと言われているような気がして怖くなった。
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ナチスが侵攻してきて、多くのユダヤ人が迫害され虐殺されていくポーランドのワルシャワで、家族を失いながらも奇蹟的に生き延びた、ユダヤ人ピアニストの手記。 『夜と霧』もそうだが、実際に体験した人の話として描かれているので、全ての体験話に衝撃を与えられた。「エピローグ」でも書かれて...
ナチスが侵攻してきて、多くのユダヤ人が迫害され虐殺されていくポーランドのワルシャワで、家族を失いながらも奇蹟的に生き延びた、ユダヤ人ピアニストの手記。 『夜と霧』もそうだが、実際に体験した人の話として描かれているので、全ての体験話に衝撃を与えられた。「エピローグ」でも書かれているが、とても残酷で、読むだけでもものすごく暗い気持ちにさせられてしまうゲットーの様子が、とても客観的に、淡々と描かれているのが特徴的だった。ひどい迫害が、収容所という特殊な環境だけでなく、日常の世界でも繰り広げられていたということがよく分かる。主人公が、周囲に気付かれないよう、長い間息を潜めて隠れ家にいるという話、いよいよ見つかりそうになり、自殺の覚悟を決める話を読むと、ますますドイツ人やウクライナ人が怖いと思ってしまう。映画はまだ見てないので何とも言えないが、本だけでも十分当時の様子が想像できる。(13/08/31)
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映画の「戦場のピアニスト」はこれまで2回ほど観ていたが、その原作を初めて読む。もちろん、これはシュピルマンの手記であってすべてが事実の話だ。ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」と同様にユダヤ人の受難の話だが、自らの体験が何か他人事みたいに淡々と書かれてあって、映画ほどひどく強...
映画の「戦場のピアニスト」はこれまで2回ほど観ていたが、その原作を初めて読む。もちろん、これはシュピルマンの手記であってすべてが事実の話だ。ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」と同様にユダヤ人の受難の話だが、自らの体験が何か他人事みたいに淡々と書かれてあって、映画ほどひどく強い印象を受けるわけではない。しかし、自伝だからこそ小説のように殊更に演出も強調もないということに、恐ろしくなるような人間の真実が語られているともいえる。 ナチスという組織が行った罪は重罪としても、それを現場で実行してきた人間というものをも狂気にしてしまう恐ろしさ。親の前で子供を打ち殺し、老人を椅子ごと高い階の窓から放り投げ、人間を虫けらを殺すようなことが何の躊躇いもなく行うようなことがどうしてできるのだろう。ドイツ人が特別に残忍な民族ということでは決してなく、同胞であるユダヤ人にもドイツの手先として残忍な行為を平然と行う人間はいるわけで、人間すべてが潜在的に持っている凶暴性や残忍性ということに違いない。それまで友人だった隣人同士が牙を剥いて殺しあった旧ユーゴスラビア紛争、ポルポトによる大虐殺などだけでなく、これまでの歴史に何度も登場してきたまぎれもない事実だ。人間というもの、一皮剥けばそのような残忍性が潜んでいるという、その事実には戦慄を覚えずにはいられない。だからこそ音楽を愛し人道としてこのシュピルマンを救ったドイツ将校ホーゼンフェルト大尉の存在に救われる気がするわけだ。シュピルマンもホーゼンフェルト大尉との関係を意識して、この本の原題を「Pianist」としたのに違いなく、シュピルマンが戦後に捕虜収容所で死亡したホーゼンフェルト大尉の家族を探しあて、交流をしたということも何かほっとできる話と云えるだろう。 現在の平和な、平和すぎる日本に日本人として生まれたことの幸福、これを噛み締めなければいけないとつくづく考えさせられる、そのような一冊と云えそうだ。
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評判にもあった通り、単調冷静に体験されたことが書かれている。 特に印象深かったシーンは、今から殺されにいくであろう子ども達に遠足だと言って、和気藹々と行進させる牧師(だったか?)の姿。彼らの最期をシュピルマンが想像するが、それが辛かった。 それと、シュピルマンが家族と離れ離れになるシーン。すごく怖かった。一人。これから一人だ。 ホーゼンフェルトとの出会いは感動した。本当にいたんだ、こういう人が。ドイツ兵全員が非人道的行為を疑問視することなく行っていたわけじゃなかった。ドイツ兵全員が悪人、この誤解こそナチスがやったことと同じだ。自分も同じだった。馬鹿だったと反省した。 歴史は繰り返す、確かにそうだと思う。
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先に映画を観ていたので、原作の静かな静かな文章に、より強い悲しみを感じた。この本を書かないとシュピルマンはその後の人生を送れなかったのではないだろうか。いつ撃ち殺されるかも、飢えてしまうかもわからない状況でもピアニストとして手指を大切にする、その音楽への果てしない情熱。主観を排除...
先に映画を観ていたので、原作の静かな静かな文章に、より強い悲しみを感じた。この本を書かないとシュピルマンはその後の人生を送れなかったのではないだろうか。いつ撃ち殺されるかも、飢えてしまうかもわからない状況でもピアニストとして手指を大切にする、その音楽への果てしない情熱。主観を排除して描かれている家族や友人、同胞との永遠の別れ。 ホーゼンフェルト大尉についてのパートが追加されていることも素晴らしいと思う。映画だけでは彼についての情報は少ないので。ホロコーストについて考える時、いちばん疑問に感じていたのは、一般のドイツ人たちは何を感じていたのかということだったので、大きなヒントになった。
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ナチスの激しい迫害を受けながらも奇跡的に生き延びたユダヤ人ピアニストの戦慄すべき体験記。ひたすら逃げ、隠れ、飢えや寒さ、捕まるかもしれない恐怖に耐え続ける。それを支えたのは生きたいと願う強い心と音楽の力。戦争の悲惨さ、戦争時の極限状態の人間の姿を描く重い作品ですが、目をそむけるこ...
ナチスの激しい迫害を受けながらも奇跡的に生き延びたユダヤ人ピアニストの戦慄すべき体験記。ひたすら逃げ、隠れ、飢えや寒さ、捕まるかもしれない恐怖に耐え続ける。それを支えたのは生きたいと願う強い心と音楽の力。戦争の悲惨さ、戦争時の極限状態の人間の姿を描く重い作品ですが、目をそむけることは出来ません。
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(2005.02.17読了)(2003.09.19購入) この本の初版が出版されたのは、1945年と言うことです。1960年代に復刊を試みたが許可されなかったそうです。 1999年に英訳版が出版され、それを基に「ザ・ピアニスト」と題して2000年に日本語版が出版された。映画上映に...
(2005.02.17読了)(2003.09.19購入) この本の初版が出版されたのは、1945年と言うことです。1960年代に復刊を試みたが許可されなかったそうです。 1999年に英訳版が出版され、それを基に「ザ・ピアニスト」と題して2000年に日本語版が出版された。映画上映にあわせて、「戦場のピアニスト」と改題されて2003年に新装版が出版された。 ウワディスワフ・シュピルマンは、1911年にポーランドに生まれ、2000年7月6日に死亡した。 映画を先に見てしまったのだが、原作と映画はほぼ同じと言っていいと思う。実によく映画化されている。したがって、内容は、映画及び映画のシナリオ(新潮文庫)のレビューを参照してください。 ●ユダヤ人について 本の間のつながりを考えずに読んだのに、いくつの本が同じテーマでつながってしまうことがある。今回、「1492年のマリア」西垣通著、「数学放浪記」ピーター・フランクル著、「戦場のピアニスト」の3冊がユダヤ人についてのテーマでつながった。 コロンブスのアメリカ大陸発見の年が実は、スペインからのユダヤ人追放の年にもなっていて、多くのユダヤ人が新天地を求めてアメリカに渡ったと言うのが、「1492年のマリア」の隠されたテーマだと言うことをどこかで読んだ。 そのためにアメリカには、ユダヤ人が多いのだと言う。 「数学放浪記」のなかで、西欧では、「キリストを殺したのは、ユダヤ人だ。だからユダヤ人は悪い人たちだと言う風に30年ぐらい前までは教えていた。」と言う話が書いてある。日本人から見ると、「キリストだってユダヤ人じゃないの!」と思ってしまう。そのユダヤ人を君たちは崇拝してるのじゃないの! キリストは、神だから人種は関係ないということなのでしょうけど、ユダヤ人の教えをローマ人が西欧化して、キリスト教に作り上げた、と言うことなのでしょうけれど、基はユダヤ人の教えである事は消しがたいと思うけど。 「戦場のピアニスト」は、ポーランドのユダヤ人が、ワルシャワの一角に集められ、そこで殺されたり、他の場所に運ばれて、ガス室送りになる中、一人のユダヤ人ピアニストが生き延びたと言う話である。最終的に救ってくれたのは、ドイツ人将校と言うことなので、ドイツ人すべてが狂気の中にあったわけではないことが分かる。 (「BOOK」データベースより)amazon 第2次世界大戦、ドイツ軍によるポーランド侵攻。ナチスのユダヤ人迫害のもと、多くの命が失われ、廃墟になったワルシャワの街を独り彷徨する若き芸術家の苦闘の物語。ゲットー脱出、逃避行の日々、ドイツ軍の脅威が迫る…。ポーランドの名ピアニスト、シュピルマンが自らの体験を綴った希有のドキュメント。
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