エロイーズとアベラール の商品レビュー
読了日登録機能が追加されたので、これまでに読んだ好きな本も本棚に入れていくことにします。 * エロイーズとアベラールは、中世フランスの実在の恋人たちです。ピエール・アベラールは、学僧で哲学者、エロイーズはノートル=ダム聖堂参事会員の姪。ふたりは住み込みの家庭教師と生徒になった...
読了日登録機能が追加されたので、これまでに読んだ好きな本も本棚に入れていくことにします。 * エロイーズとアベラールは、中世フランスの実在の恋人たちです。ピエール・アベラールは、学僧で哲学者、エロイーズはノートル=ダム聖堂参事会員の姪。ふたりは住み込みの家庭教師と生徒になったことから運命的な恋に落ち、ついには悲劇を迎えます。エロイーズは身ごもり、男の子を出産するものの、叔父を避けるため修道院に入れられます。それを受けた叔父は、豚の去勢師にアベラールを襲わせます。去勢されたアベラールはサン=ドニの修道院にこもり、エロイーズも修道女として暮しながらも、手紙を取り交わす。その書簡集が現代まで残っています。 そして、このふたりの最も近くにいつづけ、愛のゆくえを見届けたのが、架空の登場人物、オクスフォードのウィリアム。イングランドに生まれ、長じてヨーロッパに渡り、各国をめぐりながら人生経験を積んだ青年。 この三人を核に、数々の人物が登場し、物語が織りなされてゆきます。 * 原題の“Adieu, Mon Unique”(さらば、わたしのただひとりの人)がすべてを物語っています。なんて美しい題名! アベラールとエロイーズの書簡集は、構成や文体などがあまりに整いすぎているので、実際の書簡というより創作に近いのではないかと言われたりもするようです。この問題に対する一つの答えとして、ウィリアムという語り手(観察者・編集者)がいるともいえます。 邦題は『エロイーズとアベラール』なのだけれど、副題に“三つの愛の物語”とあるように、ふたりの、ではなく三人の物語として書かれているところが好き。ウィリアムもまたエロイーズに恋した男の一人ですが、それと同じくらい、アベラールという師を愛していたということ。作中に何度も出てくる薔薇水晶に結晶する、三人の愛、思いのかたち。そんなことが、読んでからずいぶん経つ今も残っています。
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