会津八一の旅の歌 の商品レビュー

山崎馨(著者)

2019/11/23

明治から昭和30年代まで、俳句・そして和歌に転向して旅の歌を作成し続けた會津八一の若の魅力を堪能した。新潟出身で東京に移り住んだ彼にとっては人生そのものが旅。中でも信濃、九州、奈良で詠んだ歌の数々は古代の名歌かと思うような叙情あふれる作品ばかりだ。いずれもが日本の懐かしい美しい田園部の情景をおもいださせてくれる
みすずかる　しなののはての　むらやまの　みねふきわたる　みなつきのかぜ
あおぞらの　ひるのうつつに　あらはれて　われにこたへよ　いにしへのかみ
わたつみの　みそらおしわけ　のぼるひに　ただれてあかし　あめのたなぐも
わがこころ　つくしのはまの　たちばなの　いろづくまでに　あきふけにけり
そらみつやまとの　かたにたつ　くもはきみがいぶきの　すゑにかもあらむ
しぐれふる　やまをしみれば　こころさへ　ぬれとほるべく　おもはゆるかも
からまつの　はらのそきへの　とほやまの　あをきをみれば　ふるさとおもほゆ
いはむろの　いしのほとけにいりひさし　まつのはやしに　めじろなくなり
みづうみの　きしのまひるの　くさにねて　きみがうたひし　うたはわすれず