科学の目 科学のこころ の商品レビュー
している途中で無駄だということが分かっていても、それまでかけていた労力のことを考えると、どうしてもやめられない…後から後悔するのは分かっているのに…。コンコルドの過ち?ちなみにこれの逆が三日坊主? 専門のことだけでなく総合的な考えを持っているほど、幹が太くなる気がします。
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長谷川さんは生物学者です。この本の内容はあとがきに著者が示しています。『私自身の専門である,動物の行動と生態の研究に関することばかりでなく,科学や学問一般について,およびそれらの社会との関係など,日頃考えていることをいろいろな角度から書いてみた。』 まさにその通りの大変面白い...
長谷川さんは生物学者です。この本の内容はあとがきに著者が示しています。『私自身の専門である,動物の行動と生態の研究に関することばかりでなく,科学や学問一般について,およびそれらの社会との関係など,日頃考えていることをいろいろな角度から書いてみた。』 まさにその通りの大変面白い本でした,興味を引いた箇所が沢山あります。その内の「コンコルドの誤り」をご紹介します。 この「コンコルドの誤り」は言葉とその意味と一緒に覚えておくとよろしいと思います。「コンコルドの誤り」とは『過去における投資の大きさこそが将来の行動を決めると考えること』だそうです。語源はもちろん英仏共同開発の超音速旅客機からきています。『コンコルドは、開発の最中に、たとえそれができ上がったとしても採算の取れないしろものであることが判明してしまった。つまり、これ以上努力を続けて作り上げたとしても、しょせん、それは使いものにならない。ところが、英仏両政府は、これまでにすでに大量の投資をしてしまったのだから、いまさらやめるとそれが無駄になるという理屈で開発を続行した。その結果は、やはり、使いものにならないのである』 だそうです。行動生態学の分野では・・・ 『いま、一羽の雄の鳥が、ある雌に求愛しているとしよう。これまでに雄は、ずいぶん長い時間を費やし、たくさんの餌をプレゼントに持ってきたが、雌は一向に気に入ってくれない。雄は、このまま求愛を続けるべきか、やめるべきか? このような状況で、動物たちがどのように行動するよう進化してきたかを考えるとき、一昔前には、雄はもうこの雌に対して大量の投資をしてしまったので、いまさらやめると損失が非常に大きくなるから求愛をやめないだろう、という議論があった』 しかしこれは誤りで,『さきほどの雄がむなしく求愛を続けている雌のとなりに、その雄はまだ一度も求愛していないが、求愛されれば十分に応える気のある雌がいたとしよう。もしそうならば、雄は、過去の投資の量にかかわらず、さっさとそちらの雌に乗り換えるだろう。将来の行動に関する意志決定は、過去の投資の大きさではなく、将来の見通しと現在のオプションによらねばならない』然り! ですが,人間はちょくちょくコンコルドの誤りを犯すようです。
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(2008.06.25読了) 長谷川眞理子さんの書いた、科学に関するエッセイです。岩波書店発行の月刊誌「科学」に、1996年1月から1999年4月まで連載したものを一冊にまとめたものです。 専修大学にいたころは、文系の学生に教えていたので、科学全般について考えることになったのでし...
(2008.06.25読了) 長谷川眞理子さんの書いた、科学に関するエッセイです。岩波書店発行の月刊誌「科学」に、1996年1月から1999年4月まで連載したものを一冊にまとめたものです。 専修大学にいたころは、文系の学生に教えていたので、科学全般について考えることになったのでしょう。「大学の一般教養で、理学部ではない学生に対して科学とは何かを教えるという仕事をするはめになってから、科学というものを少し外から眺めることができるようになった。科学と社会との関係なども、理学部にいたときよりもずっと考えるようになった。」(6頁) ●コンコルドの誤り(14頁) コンコルドは、開発の最中に、たとえそれができ上がったとしても採算の取れないしろものであることが判明してしまった。ところが、英仏両政府は、これまでに大量の投資をしてしまったのだから、いまさらやめるとそれが無駄になるという理屈で開発を続行した。その結果は、やはり、使い物にならないのである。 このように、過去における投資の大きさこそが将来の行動を決めると考えることを、コンコルドの誤りと呼ぶ。 ●数理生物学者(30頁) 数理生物学者と、羊を連れた羊飼いが牧場で出会った。数理生物学者が羊飼いに、「あなたが何頭の動物を持っているかを、もしも私が正確に当てたら、羊を一頭くれますか」と聞いた。羊飼いが承諾したので、数理生物学者は「278頭」と答えた。それは当たっていたので、数理生物学者が一頭取った。 今度は羊飼いが、「もしも私があなたの職業を正確に当てたら、それを返してくれますか」と聞いた。数理生物学者が承諾すると、羊飼いは「数理生物学者」と答えた。 彼が驚いて、「どうしてわかったのですか」と聞くと、羊飼いは、「今あなたが取った、その動物はね、それは犬だよ」と答えた。 ●命の実感(93頁) 人類の存続のために生態系全体の保全が叫ばれているが、それだけではなく、自然とのふれあいは、自分自身を含めた命の実感をはぐくむ上で人間に不可欠なのだろう。 ●翻訳の読みにくさ(97頁) 翻訳書が読みにくい理由。①誤訳、②学術用語を知らないための誤訳、③意味は正しくても日本語としてまずいため意味が伝わらない。 日本の出版社、編集者は、自分が読んで素直に理解できないものはもっとどんどん断るべきだ。よくわからない文章というものには、訳している本人にも、それを読む第三者にも、直感的に変だと感じられるものがあるはずだ。 ●女性科学者はなぜ少ないのか(175頁) 二つの異なる意見がある。一つは、女性差別であるというもの、もう一つは、科学は女性に向いていない、というものである。 私は、かつて、東京大学理学部の助手をしていたころ、所属教室の主任から、「東大理学部では女性は採らないのだから、出て行きなさい」と面と向かって言われたことがある。 後者については、科学のほとんどの分野は数学を必要とする。女性には、数学が苦手な人が多いから、結局、理系に進む人が少ない、という話である。 話の視点が結構面白く、一編がさほどながくないので気楽に楽しめます。文系の人でも楽しめます。 ☆長谷川眞理子の本(既読) 「オスとメス・性はなぜあるのか」長谷川眞理子著、日本放送出版協会、1997.04.01 「進化とはなんだろうか」長谷川眞理子著、岩波ジュニア新書、1999.06.21 「科学の目 科学のこころ」長谷川眞理子著、岩波新書、1999.07.19 「生き物をめぐる4つの「なぜ」」長谷川眞理子著、集英社新書、2002.11.20 「ダーウィンの足跡を訪ねて」長谷川眞理子著、集英社新書、2006.08.17 (2008年6月26日・記)
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これ、買ったけど未だ読んでません。ゴールデンウィークにでも読むか。書いた人は動物行動学の有名な先生です。
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