家屋と妄想の精神病理 の商品レビュー
江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」、また「天井裏から人が侵入してくる」という老女の訴えに始まる、家屋の中で熟成される狂気についての本。著者は精神科医で、穂村弘と対談とかしている人。 「何故人の語るこわい話には類型があるのか」あたりには最近わりと真面目に興味があるので、そういった意味で...
江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」、また「天井裏から人が侵入してくる」という老女の訴えに始まる、家屋の中で熟成される狂気についての本。著者は精神科医で、穂村弘と対談とかしている人。 「何故人の語るこわい話には類型があるのか」あたりには最近わりと真面目に興味があるので、そういった意味でも面白かった。「妄想のリアリズム」について「野暮ったい」と断ずる切れ味が鋭く、なんとなく流れ弾に当たったような気分になった。どうやら狂気とはそんなに高尚なものではないのだ。 狂気と家屋、人の内面と家屋について読んでいると、子供の頃訪れたよその家の独特の匂いや急な階段、奥の部屋からうっそりと現れるさっきまで寝ていたおばあさん等、忘れていたことを思い出して茫洋とした気分になった。 あと高瀬美恵「ALUMA」にちょこっと触れた部分があって嬉しかった。懐かしい。
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様々な文学作品において描写される家屋にまつわる狂気を例にとり、実際の疾病例と対比させながら「事実は小説より奇なる」ことが語られる。 その中で語られる「ゴミ屋敷」については、『自分の周囲に馴染みのあるものを集めることによって心の安定をはかる』とされている。そして老女が中心である、ということも。 でもこれは彼には当てはまらないように思う。そこにあったのは「ただの捨てられないゴミ」であって、収集されたものではなかったのだから。 彼はあらゆる社会的な循環というものを否定したのだろう。ゴミは回収され、処分され、何らかの形で再生される。同様に貨幣も「巡る」ことによってその存在価値を持つ。 でも、ゴミも貨幣も彼にとっては「巡る」必要のないものだった。巡るということは社会の営みの一部になることであって、彼はその一部であることを拒否していたのだから。
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最初は「屋根裏に誰かいるんですよ」というタイトルで発表されたが、 増補新版として改題されたという。 前の方がインパクトがあってよかったんじゃないかな(^^;)? 精神科医の臨床経験に基づく論考で、主に、 独居老女の妄想に「屋根裏に誰かが潜んでいる」パターンが 多いのはなぜか、とい...
最初は「屋根裏に誰かいるんですよ」というタイトルで発表されたが、 増補新版として改題されたという。 前の方がインパクトがあってよかったんじゃないかな(^^;)? 精神科医の臨床経験に基づく論考で、主に、 独居老女の妄想に「屋根裏に誰かが潜んでいる」パターンが 多いのはなぜか、といった内容。 不謹慎な言い方に聞こえるかもしれないが、 読み物として面白いので何度も読み返している。
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同著者の「屋根裏に誰か居るんですよ」の増補版。相変わらず、春日武彦は面白い。(面白い、という表現は不適切かもしれないが。)統合失調症、痴呆などの精神病理について解説しているというより、現代社会の奇譚を読んでいるよう。
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春日節炸裂で面白かったです。 でも屋根裏ネタだけで一冊にまとめるにはやや無理があったかも?と思ったり。
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