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遊学(1) の商品レビュー

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2024/05/17

1976年から77年にかけて、雑誌『遊』(工作舎)で連載された著者の記事をまとめた本です。古今東西の作家、芸術家、科学者、思想家など、合計142人がとりあげられ、著者自身が彼らに対してどのような観点から興味をいだいているのかということが語られています。 それぞれの人物に割りあて...

1976年から77年にかけて、雑誌『遊』(工作舎)で連載された著者の記事をまとめた本です。古今東西の作家、芸術家、科学者、思想家など、合計142人がとりあげられ、著者自身が彼らに対してどのような観点から興味をいだいているのかということが語られています。 それぞれの人物に割りあてられている紙幅がかぎられているうえに、「場所」「重力」「速度」など、著者独自の意味を込めてつかわれるいくつかの概念がじゅうぶんに説明がなされることなく登場するために、議論の内容を把握することに困難をおぼえる箇所もけっしてすくなくありませんでした。ただ、「序」で著者は「われわれはあまりに一対一の関係を好みすぎている」といい、「物質」や「機械」への着目を手がかりとして、一対一の関係から抜け出す道をさぐっているということはできるかもしれません。 最初にとりあげられているのはピタゴラスですが、そこで著者は「鉛筆の削りかたが下手だった」というエピソードを語り、粗悪品のために鉛芯が軸木からすっぽりと抜けたときに、鉛芯に「あやうさ」「フラジリティ」を感じたと述べられています。このエピソードは、鉛筆を削ることそのものに熱中したという哲学者のフッサールとの対比を連想させ、そこからさらに「主語を「私」だけだとおもいこんでいるのは危険だ」、あるいは「言葉は言葉を笑うことはできない。耳は耳を聞けない」といった、その意味がじゅうぶんに理解できないまでも読者の思索を誘発するような魅力をもつ著者の議論と関係づけて考察することへとうながされます。

Posted byブクログ