命(第1幕) の商品レビュー
在日韓国人である芥川賞受賞作家・柳美里。プライベートや作品が時に話題になったり叩かれたりしているけれど、わたしは「家族の標本」という短編集があまりに暗くて何か好きだったので、こちらも読んでみた。 妻子ある男性の子どもを身籠もるのと同時に、身近な人間が末期癌にかかり、その狭間で格闘...
在日韓国人である芥川賞受賞作家・柳美里。プライベートや作品が時に話題になったり叩かれたりしているけれど、わたしは「家族の標本」という短編集があまりに暗くて何か好きだったので、こちらも読んでみた。 妻子ある男性の子どもを身籠もるのと同時に、身近な人間が末期癌にかかり、その狭間で格闘する作者自身の物語。 わたしの感想は、、、ただただ哀れな人だなぁと。命について考えるとかそんな大義な本では全然ない。妊娠した後の作者の、彼に対する執着がとにかく恐ろしい…奥さんと別れないことに腹を立て、恨みつらみ書いた手紙を送ったり…最初は産むだけで迷惑はかけないとか言っときながら、認知と養育費を取立て屋のように主張して誓約させたり… 「自分の子どもに逢わないでいられる父親なんてこの世にはいないわよ」という母親の言葉を鵜呑みにした作者が(この言葉自体は沁みる言葉ですが)、今度は定期的に子どもに会えだの彼に喚くくだりなんてもう…。 最後の最後でとことん自分の本性を出して、大好きな相手に嫌われて別れるというのは、はたから見ると何と惨めに見えるのでしょうか。 本の中で、作者の妹が「あいつ(彼)は自分が被害者で、私たちが加害者だと思ってるんだ。」って彼を非難するところがあるけど、浮気して子ども出来たらお互いに加害者だろ!って思わず突っ込みたくなるところ。 あと、この作者は家族というものに対してかなりのコンプレックスがあり、世間の様々な「いびつな」家族を取材し、作品にしてきたはずなのに、彼が子どもに会うことを拒否したとき、「3歳以前の子どもに会わないなんて考えはあり得ない!!」と彼を痛烈に批判しているのが意外だった。色んないびつな家族を冷静に綴る印象があった作者の、正反対の一面を見て、何だか少し残念。 この「彼」という人、加害者扱いされるわ、成り行きを本にして出版させられるわ、ホント最悪な女に引っかかったって思ってるんだろうな。
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随分前に『命』から『声』までの四冊を買ったのだが、そのあいだに先に映画を観てしまい、ページを開く勇気を持てなかった。四冊を一気に、丁寧に読みたいと思い、今になってようやく手に取った。 知らなかった事、知らなかったからわかった事、知らなければならなかった事を『命』のなかで多く見つけ...
随分前に『命』から『声』までの四冊を買ったのだが、そのあいだに先に映画を観てしまい、ページを開く勇気を持てなかった。四冊を一気に、丁寧に読みたいと思い、今になってようやく手に取った。 知らなかった事、知らなかったからわかった事、知らなければならなかった事を『命』のなかで多く見つけ、読後、付箋とアンダーラインばかりになったこの本をしばらく茫然と見つめていた。 柳美里という作家は自身のうまれや家族について、幼少時からずっと、疑問を抱きながら生きている人だという事を本書を読むとわかる。 一切の衒いを裂いた文章は、涙を誘うようなわざとらしい工夫をされているわけでもないのに生々しく、切実だ。それは真実を画いているからうまれてくる独特なものにほかならず、フィクションでは絶対に出せない。 在日という柵は、生まれてくる子どもにまで絡みついてくるのか。在日でも韓国人だからといって、韓国のことばや文化を知っているわけではなく、だから子どもにも伝えられないという柳さんの考えを本書で読んで、日本人はなんの疑いもなく自分を日本人だと名乗り、日本国籍に入り、そもそも国籍について考えた事のない人のほうが多いのではないか、と、自戒するところがあった。 将来、子どもを産み育てるとして、私は柳さんの言うように、「子どもが十一、二歳になるまでのあいだに、なぜひとを殺してはいけないのかを、きちんと教えられる」自信がない。否、誰にでもない、私自身に、私が納得できる答を言い諭す事ができない。 私はまだ何も知らない子どもである事を、厭でも思い知らされる一冊だった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
子供を身ごもっている筆者と、癌で闘病中のその親友。 死にゆく命と生まれゆく命を描いたノンフィクション小説。 読み始めたときはなかなか世界に入っていけなかったけど、ノンフィクションではあるが筆者の境遇などドラマ性があった。 最後のほうには産まれる新しい命、子供の誕生の場面などが細かく描写されていて感動した。 その代わり死にゆく命の最後はあまりかかれていない。 読んだあとに希望が残る作品だと思う。 リリーさんのあとがきもぜひ。
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著者がこの本を書いた時と同じ年齢になっていたので、再度読んでみました。 私だったらこの状況に耐えられないかもしれない。 赤ちゃんのパワー、そして生きることについて考えさせられました。
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数年前に1回読み、2回目。 出産の描写の部分で、自分の出産のときをすごく思い出した。 人生の残り時間、いつからカウントダウンが始まるんだろ
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再読。 友人の帰国に際し、頂きもの。 2003年に読んだ時のものと、その7年後のものとでは、 その読後感が全然違うことに新鮮さを覚える。 それはどうしてなのだろうか? やはり、それは今や私も命や人生をかけて挑戦していることが あるためなのだろうか…。 知らぬ間に、大人になって...
再読。 友人の帰国に際し、頂きもの。 2003年に読んだ時のものと、その7年後のものとでは、 その読後感が全然違うことに新鮮さを覚える。 それはどうしてなのだろうか? やはり、それは今や私も命や人生をかけて挑戦していることが あるためなのだろうか…。 知らぬ間に、大人になっていたらしい。 美里さんの感性的(感情的)で情熱ゆえの切迫した言明と 東さんのつとめて冷静で論理的で、素朴であるが それゆえに余分な力の無い、だけど力強い言明が 心に染みる。 何故ならば、その両方の感覚を自分も持っているからだろう。 その両方を持ちつつ、頭を使って、頭よくこの世を生き抜いていなねばなるまい…と常に感じている。 その感覚とこのこの物語の<健気で必死なところ>がクロスマッチしているから、余計に心に響くものがあるのだ。 自虐的と表現する人もいる。 確かに、赤裸々な面もある。 だけど、そんな「自虐」な部分でさえも 愛おしく感じられるのは何故だろうか。 生命を生み出す若さと情熱× 生命の終焉に際しての知惠と優しさのコラボ。 自分だったら、命を全うし終えた時に この世界に何を残して行くことができるだろうか。 果たして、自分はこの命を全うし終えることができるのだろうか…。 東の言葉からは、そんなことを考えさせられ、 <とにかく今この時を懸命に生きることが重要なのだ…>と 美里の言葉から切実に思わせられる。 東と美里の掛け合いは、人生の交響曲。 芸術的な感性と刻々と刻み進み得る人生のリズムがある。 生命の関することは、重いテーマだ。 だけど、この小説を通して語られる「生命の重み」は 手に持てないほどの重みではなく、 さらりと当然の如くに、手に持ちうる限りの重さである。 生命の前に立って戸惑いを覚えつつ、でも必ず次の一歩を何とか進める。真摯な賭け事。 誰だって人は完璧じゃない。 欠けている部分があるからこそ愛おしい。 その弱さ。 そしてそれを受け入れてくれる心の度量の大きさ。 迷った時に相談できる人、 困った時に助けてくれる人 弱った自分を包み隠さずそのまま出せる、ぶつけることができる人 そんな人がいてくれることが 人生において真に素敵なことだね。
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命の大切さを改めて感じたきがします。生きてることの素晴らしさや感謝の気持ちをほんとに忘れてはいけないと思いました。ここまで来るのに一生懸命になって育ててくれたお母さんやお父さんに感謝していきたいです。本当に感動しました。読んでいて泣いてしまう部分もありました。ぜひ読んでみてくださ...
命の大切さを改めて感じたきがします。生きてることの素晴らしさや感謝の気持ちをほんとに忘れてはいけないと思いました。ここまで来るのに一生懸命になって育ててくれたお母さんやお父さんに感謝していきたいです。本当に感動しました。読んでいて泣いてしまう部分もありました。ぜひ読んでみてください。
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命四部作、一作目。 柳美里の文章は声だ。心の、魂の、語る声。 こんなにも自然とまっすぐに心に染みてゆく文章は凄い。 はじめ抱いていたこの書の印象と違った。 もっと悪く言って暗い、人生のほの暗い不条理を垣間見る書かと思っていた。 全然ちがう。 どんなに暗くて見えなくても、道がなく...
命四部作、一作目。 柳美里の文章は声だ。心の、魂の、語る声。 こんなにも自然とまっすぐに心に染みてゆく文章は凄い。 はじめ抱いていたこの書の印象と違った。 もっと悪く言って暗い、人生のほの暗い不条理を垣間見る書かと思っていた。 全然ちがう。 どんなに暗くて見えなくても、道がなくても、歩く事ができなくても。 それでも前へ、光を求めて、這ってでも進む。 とても前向きで、心を照らしてくれる書。 闘病という話が、今の私にはとても辛い話。 だけど、そういう辛さよりも、より奮い立たせてくれる何かがあった。光の手。 だから結果的にとても良い。闘病中の人や、その周りの人に、とても読んでもらいたい本。 あとがきのリリー・フランキーの書評を読んだ瞬間、はりつめた糸が切れるように号泣してしまった。
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命 四部作 第一章。 不倫相手との間に出来た子の妊娠・出産・育児。 元恋人のガン発病・闘病。 まるでその身を切り裂いた結果、紡ぎ出されたかのような言葉の数々。 この世に生まれて来る命。この世から消え去る命。その狭間にある命。 他人のものを奪うということ、他人の命を預かるという...
命 四部作 第一章。 不倫相手との間に出来た子の妊娠・出産・育児。 元恋人のガン発病・闘病。 まるでその身を切り裂いた結果、紡ぎ出されたかのような言葉の数々。 この世に生まれて来る命。この世から消え去る命。その狭間にある命。 他人のものを奪うということ、他人の命を預かるということの重みを知った。 この不倫相手の男が、どうしようもなく最低な奴で…。 養育費は払わない、子どもの認知はしない、妻や世間にバレたら困るだの無茶苦茶な事ばかり言う最悪な男。 そのせいか余計に、元恋人の人間としての徳の高さが光っているように感じられた。 在日韓国人の彼女が歩んできた壮絶な人生も垣間見る事が出来た。…胸が痛んだ。 リリー・フランキーの解説文がとにかく良かった。 この解説と、元恋人の「生まれてくる子に7人の名前をプレゼントしよう。」という言葉に泣いた。 ↓印象に残った箇所↓ 彼のことを考えると、哀しくなる。未練ではない。未練というのは、思いを切れないことだ。思いは、切った。なのに、なぜ、哀しくなるのだろう。なにがしかの感情が残っていなければ哀しくなどなるはずがない。(中略)だれかに求められ、必要とされ、選ばれるほどうれしいことはないし、だれかに疎まれ逃げられ棄てられることほど哀しいことはない。(中略)けれど、棄てられた哀しみよりも、手に入れることが不可能な幸福への憧れのほうが強い。 (中略)幸福というのは、自分を説き伏せ納得させて実感するものではない。なにも考えなくても、感じるものなのだ。(中略)不幸というものは状態で、一度居座ったら動かすのは困難だが、幸福は状態ではなく、瞬間の中にしか存在しない。一瞬一瞬煌めいて消え去るもののような気がする。
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柳美里さんの体験手記。柳さんは不倫の末、妊娠。相手は「認知しない、養育費も払わない。でも子供には会いにいく」とか「認知して養育費を払うなら、子供とは会わない」とか、めちゃくちゃなことを言ってます(どうやらその世界では有名な人らしい)それで悩むと同時に、過去に付き合っていた恩師でも...
柳美里さんの体験手記。柳さんは不倫の末、妊娠。相手は「認知しない、養育費も払わない。でも子供には会いにいく」とか「認知して養育費を払うなら、子供とは会わない」とか、めちゃくちゃなことを言ってます(どうやらその世界では有名な人らしい)それで悩むと同時に、過去に付き合っていた恩師でもある、東由多加(舞台演出家)が食道癌であることも発覚する。妊婦とがん患者の二人は一緒に暮らしてお互いを支えることにします。死に行く命と、生まれ来る命の壮絶なお話でした。
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