ベビュカン の商品レビュー
絵画に於いて旧来の遠近法を否定して立体の多面を一枚の平面に同時に表そうとしたキュビズムが誕生した頃、そのキュビズム的手法の言語芸術への応用を企てたのがこの小説。その前衛的な手法の評価は僕には出来ないけれど。 自意識過剰の頭でっかちなディレッタントたるベビュカンの内省的彷徨。理...
絵画に於いて旧来の遠近法を否定して立体の多面を一枚の平面に同時に表そうとしたキュビズムが誕生した頃、そのキュビズム的手法の言語芸術への応用を企てたのがこの小説。その前衛的な手法の評価は僕には出来ないけれど。 自意識過剰の頭でっかちなディレッタントたるベビュカンの内省的彷徨。理性による無限の自己対象化――恰も合せ鏡の如き無間地獄――の果てに決して確かな自己像をつかみ得ない彼は、言葉や論理が切り取る断片化された世界になんら真実性を感じられなくなった彼は、自己を/世界を如何にして獲得したらよいのか。ロゴスが捕捉する自己/世界を虚偽として・欺瞞として・俗物的であるとして悉く峻拒せずにはいられない当時の時代心性が表われている。非合理(神秘・狂気・・・ i.e. 忘我?)への陶酔・没入・合一か、或いは永続的な自己否定/世界否定の疾走か。ニヒリズムの中で理性を<超克>しようと欲しながら不可避的に敗北する者たちの出口の無い呻吟が、随所から聴こえてくる。
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キュビスムと言われれば成る程と思うが、無知すぎてついていけない箇所も多々あり。 でも、面白く読みました。
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