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バルタン星人はなぜ美しいか の商品レビュー

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2019/06/29

まず「バルタン星人」と「美しい」を結び付けた本のタイトルが秀逸。 表紙の写真の暗闇に佇むバルタン星人の姿を見るだけで、「美しい」が誇張でないことが十分理解できる。 小林さんの視点で面白かったところは、怪獣たちを、着ぐるみを超越した“造形物”そして“創造物”として見ているところ。...

まず「バルタン星人」と「美しい」を結び付けた本のタイトルが秀逸。 表紙の写真の暗闇に佇むバルタン星人の姿を見るだけで、「美しい」が誇張でないことが十分理解できる。 小林さんの視点で面白かったところは、怪獣たちを、着ぐるみを超越した“造形物”そして“創造物”として見ているところ。 よって、その評価は、好き嫌いを超えてあたかも絵画や彫刻作品を見るように、フォルム、立体構成、色彩などからなされている。 私や多くの人は、怪獣たちを形態的な面白さから興味をもったと思う(子どもによってはそれが電車だったりスーパーカーだったり戦闘機だったりするだろう)。 しかし小林さんは、あとがきでも書いているように、怪獣や星人たちをまるでジャコメッティの創造的人物像を見るように相対している。 小林さんは怪獣たちの造形から、芸術作品としての美的要素と、(さらにこれが驚きだが)生物としての合理性をも見ようとするというのだから、脱帽である。 本の内容で私が特に関心を引いたのが、成田亨氏デザインの宇宙人の「面長」の共通項の指摘。 言われてみればケムール人を筆頭にバルタン、メフィラス、ゴドラ、メトロンと続く氏がデザインした宇宙人に細長い顔という形態的なパターンがあるとも言える。 ほかにも、ベムスターの体躯に五角形の形態美を見出すなど、形態学(という言葉があればだけど)的な考察も一聴に値する。 さらには、キングジョーのデザイン創作過程において、人体のシルエットを原型に、頭部と腰部に左右二対の筒形形状物を加えて二足ロボットとして形態的に矛盾なくかつオリジナルのフォルムを持つ造形を創造したというエピソードもファン垂涎ものだ(ここから著者は角状突起が左右に伸びる怪獣ダークロンの発想を得た)。 一方で、この手の本はともすれば知識ひけらかし・ウンチク型に陥り、嫌味と些末な情報にあふれたクズ本も多いのだが、小林さんは怪獣デザイナーや、2次元のデザインを破綻なく3次元化した造形家にも随所でリスペクトを表していて、それらと一線を画している。 それにしても小林さんの知識量の豊富さには舌を巻く。この本は円谷プロの協力によって作られたので写真や図版はウルトラシリーズやミラーマンなどに限定されているが(それでもものすごい分量のスチール写真やデザイン画!)、シルバー仮面やスペクトルマン、果ては赤影の怪獣までが言及されている。 これらの分析や評価は正当なものだと思うが、かと言ってこの理論に沿えば怪獣デザインが次々に生み出されるかというと、それがまた難しいところ。逆に改めて、怪獣造形が視聴者一般が思うほど簡単じゃないってことはよくわかった。 それはキン肉マンの新超人がなかなか突き抜けたデザインのものが出てこないことからもわかるってものだ。 自分のセンスと表裏一体であるオリジナルコンセプトの確立は、何でもそうだけど「わかっちゃいるけど…そう簡単には…」なんだよね。ハァ

Posted byブクログ