森繁自伝 の商品レビュー
森繁さんの駅前旅館という映画が好きです。「あばよ」が格好いいんですよね。爆笑レッドカーペットの18KIN今泉じゃないけど「言ってみてー」ってやつです。 その森繁さんの自伝。東宝撮影所を去るくだりがいい。ここも「あばよ」ってところ。スト騒動の愚かしさに撮影所を去るんですよね。...
森繁さんの駅前旅館という映画が好きです。「あばよ」が格好いいんですよね。爆笑レッドカーペットの18KIN今泉じゃないけど「言ってみてー」ってやつです。 その森繁さんの自伝。東宝撮影所を去るくだりがいい。ここも「あばよ」ってところ。スト騒動の愚かしさに撮影所を去るんですよね。 「人に嘘をついても、もう二度と自分の心に嘘はつくまい」(p.141)というわけです。 これも格好いい。 それから自分の売り方を考察するところがいいです。 「映画の中の役者を考現学的に統計をとることにした。かたわら、館内の人種を分類大別し、彼らの年齢層から嗜好、そして、どこで泣き、どこで笑い、どこで手を叩くかを、ノートにくわしくかきとめた」(p.146) これぞマーケティングですね。フィールドワーク。ビジネスエスノグラフィで言う「観察」です。やっぱり一流になる人は観察なんだな。 そしてあの三冠王落合がロッテ時代に土居選手のバッティングフォームを研究したごとくに、河村惣吉さんという俳優さんを発見するのだ。 「あの、二枚目でもない、また三枚目というにもどこか違っている-この人物の近所が少しばかり手薄なことを発見した」(p.146) あの森繁の立ち位置(経営学者三品和広さんが言うところの「立地」だ)が決まったくだりだ。ここ、好きです。 そして経営学者三品和広氏の言うところの「構え」が決まる場面が続く。 「次にどう出るか分らぬという未来を予測し得ない演技が、観客をそこにとどまらせ、アバンチュールをかきたてるのである。パチンコの玉が釘にあたって描く奇態な未知の角度に人は酔うのである。これを、私は『生活のリズム』と呼んだ」(p.146) ここ最高です。 以上
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