軍医戦記 の商品レビュー
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2003(底本1979)年刊。著者は戦前に医学専門学校卒後、陸軍軍医へ。戦後、北海道大学医学部で医学博士を授与された方。 著者は太平洋戦線でシンガポールから東ニューギニア戦線へと渡っていく。 軍医として見聞した戦傷病者の生起過程や具体的描写は、本書にはこちらが期待した程は多くないが、兵士・将校上がりの手記よりは遥かに多く、叙述分だけでも相当生々しい。 また、食糧難の中、現地での食物採取の実態や米軍物資の獲得(奪取とは言い難い)の模様も、流石に中国戦線とは異質である。 他には米軍の工兵能力(道の貫通・飛行場建設)をつぶさに見た著者ら。結果、その隊内で愚にもつかぬ口論が、工兵と将兵との間で展開された点が印象的だ。 補足。 米軍航空機が投下した食糧・医療品が日本軍を助けた面、援助物資の豊饒さ、仮に自軍に届かなくても繰り返し行われたその輸送。この国力の差の意味するところとその帰結を、当時の為政者と軍上層部はどう噛みしめるのだろうか。
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