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犯罪と猟奇の民俗学 の商品レビュー

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2021/07/19

礫川さんの編纂した別の本が面白かったので購入。1920年代の文章が多く、読み始めは漢字が読めずかなり苦戦した。慣れてくると文脈で読み方がわかってきたが、言葉遣いも今とは違うところが結構あって、読了までかなりの時間を要した。 礫川さんは「犯罪民俗学」という学問領域を提唱している。犯...

礫川さんの編纂した別の本が面白かったので購入。1920年代の文章が多く、読み始めは漢字が読めずかなり苦戦した。慣れてくると文脈で読み方がわかってきたが、言葉遣いも今とは違うところが結構あって、読了までかなりの時間を要した。 礫川さんは「犯罪民俗学」という学問領域を提唱している。犯罪を対象とした「①犯罪に伴う民俗(脱糞など)、②犯罪に内在する心意(迷信など)、③犯罪を生む背景(法律と民俗の対立など)といった問題を扱う」とある。犯罪をこのような観点から分析できると知れたことはとても新鮮だった。法学部の授業で民俗学の話を取り入れながら授業をする先生がいたことを思い出した。また、編者は中山太郎をいろんなところで推しており、自分の興味のある領域の研究者を知るきっかけとなった。 本のほとんどが「資料編」になっている。 そこでは犯罪者(集団)達の隠語がボディランゲージを紹介しており、この頃の時代の小説の背景に触れたような気にもなった。 売春についての記述も興味深かった。禁止しようとも、どの地域でも売春行為は生まれてしまうし、数も正確な数字はとれない。政府公認の売春街ができた背景も理解できた。また、職業婦人でもそのように性に奔放な女性がいる云々といった記述もあるが、当時の女性が男性と肩を並べて社会に出ていくには体を張らなければならないこともあるという時代だったこともわかった。(これも金田一耕助シリーズでよく出てくる時代背景) 池袋の女と性交渉すると悪いことが起こるという都市伝説。これは池袋村で他村の男性と結婚することを許さない、産土神も許さないという言い伝えがベースとなっており、奉公先の家を出たい女とその愛人が雇い主から暇を出してもらえるよう工作した事例もあったという話があり、こういった事例を見ると現実離れしたような都市伝説や怖い話にも元となる実在の話と意味があるということがよくわかった。子供騙しとして終わらせず、元を辿っていくと地域の文化や歴史がどのように今に続いているか触れる一端となるかもしれない。 最悪死罪になることもあるのに、姦通がなぜ多く行われたのか。それは自由な結婚ができず、また、(特に女性からは)離婚をすることもできない。駆け込み寺があるといっても簡単にいけるものではない。戦前の女性の権利があまりない時代の有識者でもこのような文章を書く人があるのだなあと思うとともに、姦通が多く行われていたこととその理由も納得。 不良少年にしてもらわざる権利。子供として不良少年にならぬように育てられることも子供の権利という言葉は、今の時代にも必要かもしれない。不良少年を罰するだけではなく、その児童自体も十分な養育環境でない(不完全に育てられた)サポート(治療?回復?)を要する者である。 強盗の対処方法。居合わせてしまったら、自分の命を守るために少額でも金を握らせるとか、通報後にちゃんと手配できるよう冷静に対処する、など解説したものも面白かった。そして納得した。 犯罪現場の遺留品からどのように犯人を絞っていくのかの解説も面白かった。

Posted byブクログ