現代ロシア法 の商品レビュー
『「現代」ロシア法』と言うタイトルであるが、主として以前のソ連法との対比で展開されるのが、本書の特徴であり意義である。 結びにもある通り、「歴史の実験場」としての20世紀のソ連を、法学の視点から、現在のロシア或いはアメリカ及び大陸ヨーロッパと比較して理解する事ができる。 法だけで...
『「現代」ロシア法』と言うタイトルであるが、主として以前のソ連法との対比で展開されるのが、本書の特徴であり意義である。 結びにもある通り、「歴史の実験場」としての20世紀のソ連を、法学の視点から、現在のロシア或いはアメリカ及び大陸ヨーロッパと比較して理解する事ができる。 法だけでなく、制度としての社会主義を理解するうえでも、有意義であった。 ソ連の社会主義的な法律が、その崩壊とともに極端に市場志向的な法へ移行したことが90年代のロシアの混乱であり、それが整備されるとともに社会も発展へと向かったことがよくわかる。 当然ながら、国家は法に基づいて成り立っており、法の性格が国家のあり方に影響する。 例えば、民事において日本の法体系よりもソ連の方がより被害者救済的である、と言うのは興味深かった。 著者は結びで、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を取り上げ、西洋文明との対峙という点から、日本とロシアの類似性を説いた。 それはもっともであるが、本書でより印象に残ったのは、ロシアよりむしろ「ソ連」と現在の日本が類似だということである。 ヨコの繋がりよりも垂直的性格の強い法および社会構造。 育児支援など家族に向けたはずの政策が、かえって家族機能を外部化し、その消滅を促進。 そして何より、宗教に基づかない国家が経済発展を追求する、というところが瓜二つだ。 本書にも記載の通り、ソ連中央政府がその唯物論的世界観を推進するために宗教等団体活動を制限したことは、社会主義的経済政策と対を成す基礎的政策であった。 日本も国家の基礎をなす宗教を持っていないし、つい最近宗教団体に関する法律が制定されたのは記憶に新しい。 自分の住んでいる国が、かつて70年ともたず崩壊した国家と似ているとは、何とも言えないものがある。 ともかくも、専門書の面白さが凝縮された読書体験であった。
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ロシアの法律に関する入門・概説書。ロシア法を今から学ぼうとする人はそうとうな希有な人で、ロシアの経済法を除けば、人気もほとんどないと思う(若手で研究されている方、お許しを)。 他方で、政治学であろうと、社会学であろうと、あるいはロシアを主には研究していないが、比較の観点から...
ロシアの法律に関する入門・概説書。ロシア法を今から学ぼうとする人はそうとうな希有な人で、ロシアの経済法を除けば、人気もほとんどないと思う(若手で研究されている方、お許しを)。 他方で、政治学であろうと、社会学であろうと、あるいはロシアを主には研究していないが、比較の観点からロシアに興味がある人であろうと、はたまたロシアという国家やその社会に関心が強い一般読者にとっても、ロシアが法的にどのように構成されているのかを理解する事は重要な事であろう。そして、往々にして法学というのは門外漢を寄せ付けない領域であって、自分でロシアの法律を学ぶ気はさらさらない人間にとって本書のような概説書は本当に価値がある、有り難いものである。
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