チベット密教 修行の設計図 の商品レビュー
前半はかなり興味深かったけれど、後半は宗教色が強くなり、ちょっと読みづらかった一冊。 チベットやラダックに旅行へ行ったことがあり、文化に関心をもったこと、またチベット仏教について知りたいと思ったことがきっかけで手にした本。 前半はとても面白く、チベット仏教の考え方や修行の過程...
前半はかなり興味深かったけれど、後半は宗教色が強くなり、ちょっと読みづらかった一冊。 チベットやラダックに旅行へ行ったことがあり、文化に関心をもったこと、またチベット仏教について知りたいと思ったことがきっかけで手にした本。 前半はとても面白く、チベット仏教の考え方や修行の過程などがわかりやすく書かれている。 まず、私たちは常に自己愛着に囚われており、嫉妬や執着を持っている。しかし本来は他者の幸せのために生きるべきであり、そういった菩薩心を持ち、仏陀の心を持てる状態になることがゴールというのがこの仏教の考え方。 大きく分けるとチベット仏教も大乗仏教に入るそうで、このような他者の幸福を祈り導けるようになるところが小乗仏教との違いだそう。 (小乗仏教は阿羅漢がゴールであり、あくまで自分が煩悩を捨てて悟りを開ける状態がゴールであり、他者を導く力はないらしい。) また、仏教特有の諸行無常の考え方のため、人も世の中も移り変わるもの、だからこそ「空性」があると考えている。私たちの存在も、移りゆくものだし、存在はしているがそれは「単なる私」という形で表現されている。無上瑜伽タントラによると、死にゆく時は8つの段階があり(8つの溶け込む次第と表現されている)、その中で最後の段階のときに、最も微細な心という状態となり、普段は潜在意識の中に隠れているがこれがいわゆるその人の存在の核というか、空性に最も近い状態で、これが輪廻転生のときの死後の世界の選択に寄与するという考え方。 チベット仏教では、その死後の世界での輪廻転生でよりよい結果を選べるように、つまり出離できるように密教修行を行なっている。いわゆる曼荼羅瞑想になるのだが、自分自身を持仏金剛と見立て、曼荼羅世界のように各場所に仏様をイメージしていき、瞑想をしていく修行方法とのこと。 曼荼羅の絵を沢山チベットやラダックで見たけれど、こういう修行の過程で使われたり、その世界をイメージしたものだというのを知らなかったので非常に面白かった。 他にも三身一体とか三宝帰依のことなど、色々な観点の整理があったが正直なかなか難しかったし、段々と著者の「チベット仏教が最も優れている」というようなストーリーになってしまったのが残念。 概念としてベースを知る意味では良い本だった。
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