数量化革命 の商品レビュー
すごい本だ。「ヨーロッパ帝国主義が比類なき成功をおさめたのはなぜか?その理由のひとつは、科学革命に先立つ中世・ルネサンス期に、人々の世界観や思考様式が、宗教的なものから普遍的・効率的なものに変化していたことだと著者は言う。」 なるほど、今や「数量化」「視覚化」と言うのは、当たり...
すごい本だ。「ヨーロッパ帝国主義が比類なき成功をおさめたのはなぜか?その理由のひとつは、科学革命に先立つ中世・ルネサンス期に、人々の世界観や思考様式が、宗教的なものから普遍的・効率的なものに変化していたことだと著者は言う。」 なるほど、今や「数量化」「視覚化」と言うのは、当たり前すぎて、存在しない世界を想像できないのだけど、冷静に考えてみると、かつてそれらが存在しない世界があったということも理解できます。 確かに、口ずさむだけで音楽になるし、日が昇れば新しい1日が始まるのだけど、そこに、楽譜や時間といった数量化、視覚化されるものが登場するのが「革命」であったに違いないのでしょう。数字、暦、機械時計、地図、貨幣、楽譜、遠近法、複式簿記などなど、さまざまなものが、欧州での中世から近世へと移行するに際し、大きな役割を果たしたのですね。それらは、のちのルネサンスや産業革命につながっていくということなんですね。 絵画では、目に見えたものを描くということから、目に見えたように描くという遠近法ができ、楽譜も今まであった楽器の演奏手順を記したものではなく音楽そのものを記すということで普遍的なものが出来たとしています。時計や海図、簿記もそうでしょう。 数を数えたり楽譜を読んだり、家計簿や会社の決算書を読むというようなことは、世界中どこでも普通にできることになっていますが、実は文明がそうさせたのではなく、数量化・視覚化されたことでヨーロッパの文明が発達したという発想には感心しました。
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こんなに静かに人知れず進行した見えない革命は無かった。著者の慧眼だ。幾つもの社会、世界観が生まれては消えて行った中で均質な計量空間を見出した西欧文明は自滅の淵を彷徨いながらも、生き延びて世界を圧倒した。
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[関連リンク] 「数量化革命」はスゴ本: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2011/10/post-7bfc.html
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西ヨーロッパの文明(本書では「ヨーロッパ帝国主義」)が何故、世界を席巻し、現代文明の価値基準の根幹を成すに至ったかを、中世からルネサンス期に勃興した「世界を定量的な数値で表すこと(数量化・視覚化)」という革命的なパラダイムシフトに焦点を当てて検証した西欧精神史。 たとえば数...
西ヨーロッパの文明(本書では「ヨーロッパ帝国主義」)が何故、世界を席巻し、現代文明の価値基準の根幹を成すに至ったかを、中世からルネサンス期に勃興した「世界を定量的な数値で表すこと(数量化・視覚化)」という革命的なパラダイムシフトに焦点を当てて検証した西欧精神史。 たとえば数学が発達したのは「インド・アラビア数字」を採用したから、というのはなんとなくわかっていても、じゃあ、それ以前はどうだったのか、と言うことについてはよく知らなかったし、インド・アラビア数字で計算することが当たり前すぎて疑問を持つこともなかった。しかし、よくよく考えてみると(日本からしてみれば)ヨーロッパから入ってきたのに「インド・アラビア数字」と呼ぶのは不思議だし、「0」(ゼロ)の概念がインド発祥というのは知ってはいたけれど、それがどういう意味なのかよくわかっていなかった。が、本書を読んでそのことが氷解したのは言うまでもない。 その他、楽譜や遠近法、果ては簿記が中世ヨーロッパでどのようにして生まれて、今日までほとんど姿を変えることなく使われてきたかということを知るにいたって、なるほど西欧文明が世界を測る文字通り「モノサシ」となりえた理由がここにあったか、といちいち腑に落ちる。 尚、本書を読むにあたって「中世の覚醒」http://booklog.jp/users/xacro2005/archives/4314010398をあわせて読むと、中世ヨーロッパに古代ギリシアの知がもたらされた過程や、本書に登場する何人かの神学者への理解が深まることを付け加えておきます。
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●構成 第1部 数量化という革命:汎測量術(パントメトリー)の誕生 第2部 視覚化するということ 第3部 エピローグ -- ヨーロッパ帝国主義の成功要因として、ひとつには科学技術の発達があげられる。中世以前には物事の性質や神との関係性によって物事を把握してきたが、中世後期以降は...
●構成 第1部 数量化という革命:汎測量術(パントメトリー)の誕生 第2部 視覚化するということ 第3部 エピローグ -- ヨーロッパ帝国主義の成功要因として、ひとつには科学技術の発達があげられる。中世以前には物事の性質や神との関係性によって物事を把握してきたが、中世後期以降は物事を合理的に、もっと限定して言えば数量化や視覚化して捉えるように変容していく。 本書は、数量化やそれを司る数学、数字、またありのままに実態としてモノを理解する視覚化の技法に焦点をあて、ヨーロッパにおいてローマ数字がアラビア数字に取ってかわり、また数学と視覚化の手法の発達によりいろいろな分野において新しい発明、発見、変化が訪れたことを論じる。 第1部は、数量化を取り上げる。それまで大凡の数量でしか計らず、また時間も現在のように正確ではなかった中世前期までのヨーロッパ世界は、数字の表記法と数学の発達により、正確な計量をしまた計算することを導入した。また時間感覚においても、日が昇ってから暮れるまでという大雑把かつ季節によって長短の変化がある尺度ではなく、1時間という概念を取り入れることで、決まった労働時間という変化により生産力の上昇をもたらした。 第2部では、視覚化を取り上げる。絵画において、それまで対象物の大きさや配置を画家の好みで、あるいは宗教的な表現のために実世界の光景を無視していた。しかしモノの大きさや形の正確な対比、遠近法(これは数学の発達と無関係ではない)に忠実な構図をもたらした。金銭においても、正確な計算、また会計や決算の可視化が必要になり、複式簿記の誕生につながった。 数量化や、数量化の影響による可視化によって、物事を正確あるいは現実的に把握できるようになり、その結果ヨーロッパに帝国主義的な世界的覇権をもたらした。 -- 【図書館】
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表題にはちょっととまどう。原題を直訳すれば、「現実の計測ーー数量化と西欧社会1250-1600」となるもので、グレゴリオ暦のところで「本書の扱う範囲をこえる」などという言葉があるので、原題を見直さねばならない。著者はいわゆる「天才」の世紀である17世紀の手前で叙述をやめており、楽...
表題にはちょっととまどう。原題を直訳すれば、「現実の計測ーー数量化と西欧社会1250-1600」となるもので、グレゴリオ暦のところで「本書の扱う範囲をこえる」などという言葉があるので、原題を見直さねばならない。著者はいわゆる「天才」の世紀である17世紀の手前で叙述をやめており、楽譜や簿記など、天才の偉業をできるだけ避けて、一般人の営為のなかに数量化の進行をとらえようとしているので、「革命」という華やかな言葉は邦訳としてどうかと思う。時間の計測のところで、中国の影響を詳しく論じていないのは残念だし、馬の繋駕法についても中央アジアの影響を論じていないのはちょっと不満である。しかし、アリストテレスに代表される「敬うべきモデル」が凋落し、「数量化」が加速していく様子は十分に把握できる。とくに第二部は視覚化をキーワードに記譜法・遠近法・複式簿記の成立を語っているところは興味深い。
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この本は科学の数量化の歴史を語っているのであるが、それは分析の歴史あって、人類の思想の歴史でもあるのだ。
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