虫取り網をたずさえて の商品レビュー
感動しました。自伝としては簡潔な記述にギュッと詰まった感じで、こんなかたがいらっしゃったなんて、信じられない気持ちです。わたしのような引退が近づいている人には引退後の人生、若い人には海外での研究者人生が参考になります。 著者の東子・カウフマンさんは昆虫学者、昆虫・ネコ・動物...
感動しました。自伝としては簡潔な記述にギュッと詰まった感じで、こんなかたがいらっしゃったなんて、信じられない気持ちです。わたしのような引退が近づいている人には引退後の人生、若い人には海外での研究者人生が参考になります。 著者の東子・カウフマンさんは昆虫学者、昆虫・ネコ・動物・天体そしてアフリカを愛するひとです。 東子さんは1917年生まれ、お父様はドイツ人、お母様は日本人です。津田英学塾(現津田塾大学)をご卒業され、日本と決別して上海で就職!、そして上海で「逃亡者」!?に。 第二次世界大戦後、32歳で昆虫学者になるためにイスラエルに行き、ヘブライ語学習からはじめます。そしてヘブライ大学修士、ミュンヘン大学で学位を取得されます。そのときのお年が42歳です。そのあとは、おもにアメリカ・アフリカで昆虫の研究者として活動されました。 昆虫学者はこんなにも引く手あまたなの?東子さんの実力なのか、どこに行っても研究職に就いちゃうし、科学小論文コンテスに参加すると受賞しちゃう。 だから東子さんは、アメリカ・アフリカのフィールド・研究所を行ったり来たりする、旅する昆虫学者です。カッコイイです! 昆虫の研究についても少し書いてあります。屋外観察、飼育実験、解剖もするんですね、イラストお上手です。 東子さんは数年で次々と所属を変えています。そうなると、研究対象も契約相手に合わせて変わる。ひとつのことを突き詰めて研究するならば、大学教員がよさそう。でも、東子さんは教えるのは時間の無駄とバッサリ。一日中研究できる道を選んでいる。潔いです。 東子さんは64歳でアメリカに戻り、引退する。「昆虫学のための昆虫学に捧げ」て生きようと決意。しかし、純粋な学術研究をこなしながらも、アフリカの「野生の呼び声」が忘れられず、終の棲家を求めてアフリカへ移住します。 裏表紙にある東子さんの略歴の最後「2001年、ケニアにて死去。」とあります。なぜ?と思ってた。東子さんにとってアフリカは小学生の時からの「夢の地」、そこで他の夢も実現させました。 日本で「終の棲家」さがしだと、介護関連の施設見学になっちゃうけど、東子さんが見てまわったのはアフリカ! 選んだ地でネコたちと暮らし、昼間は昆虫研究、夜は天体観測、ん~最高です。 迷惑かけちゃいけないと、介護される準備、認知症やお墓の心配したりすることも大切かもしれないけれど、それが主ではない。 東子さんの自伝の後半は、キャット・ウォッチング、恐竜、人類史、天体の話がてんこ盛り。好きなものについて書きまくってる。 死や衰えに対する心配もそれなりに必要ですが、東子さんの自伝を読むと、わたしも90とか100歳くらい生きて、自分の好奇心を満たす生活を送らなくちゃと思います。 科学の徒である東子さんにはふさわしくない表現かもしれませんが、たぶん東子さんの魂は、遠い銀河の恒星にある惑星で、ネコちゃんたちの魂を引き連れ、その星の生き物たちを観察していると思いますよ。 ※扉写真の最後のページにベビィ・カウフマン版『吾輩は猫である』とあるけど、本文に説明がなかったような・・・ ネコのイラストがメチャメチャかわいいです!
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