なんでもできる片まひの生活 の商品レビュー
既成の価値観の、まったく正反対のことが正しいなどということが、信じられるでしょうか? おそらく、山口デイサービスセンター夢のみずうみ村で、藤原茂が実践していることを目の当たりにした時、良識派のあなたは顔をしかめることでしょう。 施設に来るや否や、お年寄りたちは、まずその日の自...
既成の価値観の、まったく正反対のことが正しいなどということが、信じられるでしょうか? おそらく、山口デイサービスセンター夢のみずうみ村で、藤原茂が実践していることを目の当たりにした時、良識派のあなたは顔をしかめることでしょう。 施設に来るや否や、お年寄りたちは、まずその日の自分のスケジュールを、自らが勝手に選び出し始めます。掲示板の自分のコーナーに、歌とか麻雀だとか何もしないとかのプレートを、思い思いに貼り付けるのです。 決められた予定で、手厚く扱われるのではなく、何をするのも自由、自分で好きなように楽しんで選んでやるという、こんな基本姿勢を、いったい他の誰が考えつけるでしょうか。 それにしても、ええっ、麻雀? そうなんです、ここにはカジノばりの道具がありルーレットも花札もご法度ではないのです。好きなことを活き活きとやっている顔は輝いています。こんな嬉しそうな笑顔、楽しそうな笑い声は、他のどの施設でも見たことも聞いたこともありません。 しかも、すべて賭けごととして成され、勝者には「ユーメ」という単位の、この施設内だけで通用する紙幣が渡されます。 勝負して勝って稼ぐときに見せる感情の起伏が大切だなどと、藤原茂はあっけらかんと微笑んで言いますが、そうじゃなくて、感情の平板なまま穏やかなのがいいんだとおっしゃる方には、残念ながら一生理解不可能でしょう。 そして、えらく急なこう配や上がり下がりしにくい階段を見て、老人虐待だなどという反応を示した方がいるかいないか、たぶん何人かいたんじゃないかと思うほど、極端なバリアフリーなしのバリアアリーの施設内ですが、これは、もう一つ食堂にも言えることで、きちんと食事係や介護職の人が準備して差し出してくれるのが当たり前のところ、ここではセルフサービス、バイキング形式で自分が取りに行かないと食事もできません。 すわっ、また虐待だ、ときちゃいますね、でも出来るだけ自分でやれることは自分でやること、あの急な階段も登らないと楽しいゲーム室にたどり着けないから頑張って行きたいから登るという、つまり辛く苦しいリハビリじゃなくて、日常動作そのものがリハビリになるように考えて作られた施設内だということです。 最後にもう一つ、藤原茂が、片手が不自由でも料理ができるという料理教室を、自らも片手の自由がきかない方に講師を頼んで開催していることを深く記憶に留めるべきだと思います。 こうして、一つひとつが、今の既成のものに対するアンチテーゼとして見事に成立しているではありませんか。 手厚い介護が必要になる時もやがて訪れることは誰も拒否できませんが、それまでいかにして活き活きと生きるかということ、この一点に果敢に立ち向かっているのが藤原茂だと思います。 これだけすばらしい効果を現出させている、他の誰も成しえなかった革命的介護方法を見い出し実践してきた彼に追随しないことはないでしょう。今すぐ全施設で取り入れるというか方向転換すべきだと思います。 彼は言います、山口デイサービスセンター夢のみずうみ村を、人生の現役養成道場だと思っている、と。
Posted by
- 1