わが父ショスタコーヴィチ の商品レビュー
娘ガリーナと息子マキシムが語る大作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチの素顔。二人は小さいころ、近くに住んでいたセルゲイ・プロコーフィエフの家の窓の下で騒いで作曲の邪魔をして「今、おまえたちの耳を引っ張ってやるからな!親父さんにも言いつけてやるぞ!もう二度と来るな!」とかんかんに怒...
娘ガリーナと息子マキシムが語る大作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチの素顔。二人は小さいころ、近くに住んでいたセルゲイ・プロコーフィエフの家の窓の下で騒いで作曲の邪魔をして「今、おまえたちの耳を引っ張ってやるからな!親父さんにも言いつけてやるぞ!もう二度と来るな!」とかんかんに怒らせたそうだ。父のショスタコーヴィチはスターリン独裁下のソ連政府に散々な目にあわされて精神的苦痛を与えられていたが、二人の子どもたちは結構伸び伸びと育って、お父さんが大好きだったのだ。家族4人、二人の語るところによるととても仲が良かったようだ。苦労の絶えなかったショスタコーヴィチも癒されたことだろう。ガリーナに子どもができたときは、早く孫を風呂に入れさせろとせっついたそうだ。内気だが、普通のあたたかな父親だったのである。ショスタコーヴィチは西社会にも知られた作曲家だった故に、無理やり共産党員にさせられ、音楽関係の要職にも就かされた。権限はなく、義務ばっかりあるやっかいなことだったが、生真面目に責任を果たしているのだ。人からの頼まれごとにも断らずに何とかしようとしていた。特に真剣だったのは、やはり作曲だった。映画音楽の作曲の仕事は、生活のためにやむなくやっていたようだが。弦楽四重奏曲第8番は、自身最高の自信作で、自らのために作曲した。それなのにソ連政府に献呈を強制されて悔しい思いをさせられた。二人の子どもが父の泣いているのを見たのは、妻が死んだときと、無理やり共産党員にさせられたときだったという。家族の写真も豊富に載せられている。とてもいい本だ。
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編者の牧師がショスタコーヴィチの娘のガリーナと息子のマクシムに父ショスタコーヴィチの「実像」を語ってもらったインタヴューに、適宜、ヘーントヴァのショスタコーヴィチ伝(未訳)やグリークマン書簡集(未訳)などの記載を引用して記述を補強したもの。話は散漫でショスタコーヴィチの生涯をあ...
編者の牧師がショスタコーヴィチの娘のガリーナと息子のマクシムに父ショスタコーヴィチの「実像」を語ってもらったインタヴューに、適宜、ヘーントヴァのショスタコーヴィチ伝(未訳)やグリークマン書簡集(未訳)などの記載を引用して記述を補強したもの。話は散漫でショスタコーヴィチの生涯をある程度知らないと訳がわからないかもしれない。フェイの評伝からして意外な記述があるわけではないが、近親者から見た生き生きとした姿は興味深い。 翻訳はロシア文学・児童文化研究グループであり、デニーソフの名前がヂェニーソフ、ティーシチェンコがティーチェンコになっていたりする瑕疵はある。
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※このレビューにはネタバレを含みます
旧社会主義ソ連の代表格ともいうべき作曲家は謎につつまれた印象がありましたが、2人の父親として非常に人間っぽい、普通の人間であったことを知り、親しみを感じました。党員とされたことに悔し涙を流した逸話などは家族ならでは、今明かせる話だと思います。煙草、サッカーへの傾倒。そして、ソ連の中では豊かな生活。生活のために嫌々作曲した映画音楽など、伝説上の人は正に現代の人でした。やはり娘・息子2人の語りが迫力があるのでしょうが、音楽そのものについては弦楽四重奏曲第8番について詳しい程度で、交響曲第5番他の背景についての説明がなく、やや物足りなかったです。
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