繋がれた明日 の商品レビュー
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たまたま、護身用にナイフを持っていたばかりに、ちょっとした小競り合いから人を殺してしまった中道隆太。 殺意はなかったけれど、持っていたナイフが殺意の証明になってしまった。 手を出したのは相手が先だったのに、目撃者は隆太が先に手を出したと証言した。 俺だけが悪いわけじゃないのに、どうして俺だけが罪を償わなければならないのか。 納得がいかないまま仮釈放を迎える隆太。 娑婆に出てみれば、世間の風は思った以上に冷たいものだった。 「こいつは殺人犯だ!」 隆太の顔写真の載った新聞のコピーが配られる。 アパートに、実家の近所に、会社に、妹の会社にまで! 罪を償って社会に出てきた人を、温かく迎えることはできるのか。 刑期を終えたら罪はチャラになるのか。 いつまで恨み続けていいのか。 やり直そうと思うことは許されないのか。 少しずつ周囲に心を開き、少しずつ信頼できる人があらわれたと思うと、頑なな拒否に出逢う。 俺だけが悪いのか。 いつまでも悪いというのか。 自問自答を繰り返しながら、自分の罪と向き合う隆太。 目撃者との対面はあれでよかったのかと思うけど、最後のシーンはこれから前向きに強く生きていけるであろう隆太の明日を感じられて、とても良かった。
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未成年による殺人 あまりにも大きすぎる過ちを犯した主人公の葛藤と彼を取り巻く環境や人々、また被害者家族のやりきれない感情の数々 私が少年法に疑問を感じ始めたのは、神戸の事件からだったでしょうか あんな残虐なことをしても少年であるから更生は可能で数年も経てば社会に復帰出来るとする...
未成年による殺人 あまりにも大きすぎる過ちを犯した主人公の葛藤と彼を取り巻く環境や人々、また被害者家族のやりきれない感情の数々 私が少年法に疑問を感じ始めたのは、神戸の事件からだったでしょうか あんな残虐なことをしても少年であるから更生は可能で数年も経てば社会に復帰出来るとする日本の法律は、正直恐ろしかったです 以後、未成年による残虐な殺人は後を絶たず、繰り返される犯罪に、何故人は学べないのか、少しの想像力があれば防げたものはなかったのか、事件を見聞きする度に、人の命の軽さを突き付けられているような気さえしていました 『ナイフで人を刺せばどうなるか想像できなかったのか?』との問いに加害者の少年は『想像を越えていたんだ、人があれほどあっけなく死んでしまうとは思わなかった』と叫んでましたが、きっとそんな事件は山程あるのでしょう この本には、加害者の少年が少年院の中で日々どのように暮らし事件と向き合ったのか、また仮保釈後にはどのような暮らしや生活、人間関係が待っているのかが描かれています 勿論これはフィクションなので、加害者である主人公は随分と恵まれた環境にあると感じましたが、一般的に考えれば再び罪を犯し刑務所に戻りたがる人の気持ちが分かるほどに、刑期満了後の生活は自由とは真逆で、社会的にも精神的にも赦されることはなく、寧ろ塀の外に出てからが本当の意味での懲罰なのではないかとこの本を読んで強く感じました 取り返しのつかない罪を犯してしまう前に、子供達にこそこの本を読んで欲しいと思いました 少年法で守られていているものは、顔や氏名のみで(それすら今はネットで晒されます)、その後何もなかったかのように他の人達同様幸せに暮らせる保障ではないこと 犯罪を減らしていく為には、犯した犯罪にばかり目を向けるのではなく、その後彼らは何を経験しどんな生活を強いられるのか、絶対こうはなりたくないという話をもっと具体的に知る必要があるのではないかと感じました
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派手なアクションもどんでん返しもそして登場人物にさえ華が無い。まるでストーリーが表舞台に出ることも拒むように!そして静けさの中で語られる言葉が響きという力も持って心を突き刺す。殺人-6年間の服役-仮出所という法制度のフィルターを通過して犯罪者、被害者の心理は収束か加速か?恐ろしい...
派手なアクションもどんでん返しもそして登場人物にさえ華が無い。まるでストーリーが表舞台に出ることも拒むように!そして静けさの中で語られる言葉が響きという力も持って心を突き刺す。殺人-6年間の服役-仮出所という法制度のフィルターを通過して犯罪者、被害者の心理は収束か加速か?恐ろしいほどに生々しい両者の本音が文中に散りばめられている。現代社会、被害者にも加害者にも成り得る機会は紙一重、表裏一体。善悪は別に双方の立場を考えるいい参考になった。保護司の仕事に感動。蛇足、殺人の動機--誰でもいいから刺した???
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最後の最後まで主人公の軽はずみな行動にイライラ。。 これは「模倣j犯」のように最後まで救いの無い終り方か??と思いましたが、最後はいい終り方でした。。ホント読んでいてイライラしたなぁ。。 それだけ作者が上手かったとも言えますが、、、
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誰でも感じるような心の描写を丁寧に表現されており、すんなり感情移入できた。 そのため、面白くてゆっくり読むつもりが2日で読了。 こういう内容は、どうしてもラストは問題を投げかけて終わりそうなところですが、少しだけ良い意味で裏切ってくれたので好評価です。
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図書館にて借りました。 少年犯罪の「加害者」側からの「更生」とは? 主人公・隆太はGFにつきまとう三上に会いに行き、口論の末に「お守り」として持っていたナイフで刺し殺してしまう。 判決は懲役6年。 ようやく保護観察付きの仮釈放になり、自活が始まる。 この作者は初めて読むのですが、登場人物の台詞がすんなり入ってきて、いつ自分の身内におきてもおかしくないという事が妙にリアルでした。 そして良くあるネタですが、せっかく就職できた会社に悪意のあるビラを撒く。 これって地味に効くんですよね・・・。 一人でもそのビラを読んだらおしまいになる可能性が非常に高いですし、噂には尾ひれ胸鰭も付くのが当たり前に。 しかもそれが自分だけならまだしも、家族にまで。 この辺りはどちらが加害者か解りません。 日々のニュースで聞き流す事件の裏はこんな感じなのかなと、命を奪ってしまった重みを感じました。 どんな人間にも家族や誰かの大切な人なんだと。 ラストはジーンと終わります。 現実にはこうはいかないだろうけど、こうあって欲しい。
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故意であろうがなかろうが犯罪は加害者被害者当人たちだけでなく、身近な人々を不幸の連鎖に巻き込んでいく。特に加害者は罪を償った後にも社会的な信用含めて真の自由になれる時はこないのだろう。それでも保護司の大室や黛社長、被害者の身近な人間であるはずの薮内その他色々な味方の居る隆太はまだ...
故意であろうがなかろうが犯罪は加害者被害者当人たちだけでなく、身近な人々を不幸の連鎖に巻き込んでいく。特に加害者は罪を償った後にも社会的な信用含めて真の自由になれる時はこないのだろう。それでも保護司の大室や黛社長、被害者の身近な人間であるはずの薮内その他色々な味方の居る隆太はまだましなのかもしれない。 ラストの隆太の為に集まってくれた人々の優しさに救いを見出だせたので内容の割りには読了感はさわやか。
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出所後の生活。 こんな風に贖罪ができる人ってどれだけいるんだろう。 加害者の社会復帰には保護司がつくけど、被害者には手を貸してくれる人がいないってぐっときた。 公にできる被害ならともかく、口にも出せない被害にあったらなおのこと。 ただ今は被害者担当保護司がいるらしいです。
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よかった。何がって主人公のジメジメ感が。若者特有の鬱屈が、人を刺し殺すという部分で表出してしまったわけだけど、これは特別な人間の物語じゃなかった。誰しも、若い自らを過信し行き過ぎた行動に出ることはある。それが、重い十字架を背負うことは稀だが、まれにそうなってしまう事がある。殺人と...
よかった。何がって主人公のジメジメ感が。若者特有の鬱屈が、人を刺し殺すという部分で表出してしまったわけだけど、これは特別な人間の物語じゃなかった。誰しも、若い自らを過信し行き過ぎた行動に出ることはある。それが、重い十字架を背負うことは稀だが、まれにそうなってしまう事がある。殺人という罪は、救いがない。未来がない。人を殺すことは、殺人者と被殺人者だけの問題ではないのだ。むしろ、その周りにいる人間に与える波紋がすさまじい。生きているそのことだけで罪を問われる人間になってしまう怖さ。しかし、そんな身分に落とされた人間の再生に携わるあらゆる人間が美しいと思った。また、到底持てない荷物を引きづりながら、一生歩いて行こうと決意する人間もその罪はとりあえず置いといて美しいと思う。
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面白かった。 大室さんの言葉が 何気に心にしみた。 「人を思いやれない人間は、 生きていく価値なんかない。」 タイトルの、繋がれた明日… 私は、罪に繋がれたって意味じゃなくて なんてゆうか、周りの人だったり 命とか大切なものに 『繋がれた』明日って捉えたいなぁ。
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