幕臣たちの誤算 の商品レビュー
洋行組を中心に幕臣には優秀な人材がいた。勝海舟、榎本武揚、福澤諭吉、渋沢栄一、小栗上野介の5人を取り上げ、各々の生き様を評価。この中で処刑されたのは小栗上野介のみ。他4人は生き延び、長生きしている。この5人を比較するのはこれまで無かった視点で色々と興味深い点がある。 小栗上野介が...
洋行組を中心に幕臣には優秀な人材がいた。勝海舟、榎本武揚、福澤諭吉、渋沢栄一、小栗上野介の5人を取り上げ、各々の生き様を評価。この中で処刑されたのは小栗上野介のみ。他4人は生き延び、長生きしている。この5人を比較するのはこれまで無かった視点で色々と興味深い点がある。 小栗上野介が処刑されたのは他の4人とは身分が違うからこその幕府への忠誠心と優秀さ故に薩長に警戒されたというのがあるだろう。榎本武揚もそれなりの身分だからこそ薩長には従わず戦ったというのはあるだろう。ただし、降伏後は政界入りし大臣を何度も務める事ができたのは国際的視野の賜物か。ちなみに蝦夷共和国の幹部で戦死したのは土方歳三のみであり、他は皆助かっているので個人的にはこの辺に疑義を持ってはいるが。 他の3人は元々の身分が低いので幕府に対する想いもなく変わり身は早い。特に福澤諭吉はさっさと見切りをつけて転身している。勝海舟は著者によってかなり悪意を持って書かれている面もあるが、かなりいい加減で適当な人物である印象を受ける。渋沢栄一は徳川慶喜への忠義からか、政府とは距離を置きつつ儒教的倫理観を貫いたとは言えるのかもしれない。 著者曰く、江戸幕府崩壊の大罪人は徳川慶喜であり、華族となった勝海舟と共にかなり否定的に書かれている。本書を読んでいると、この2人はどうしようもない人間に思えて仕方ないのだが、それは著者の会津贔屓の歴史的スタンスと文体の上手さ故だろうし、多少は相対化する必要があるだろう。
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徳川幕府が瓦解に至る動乱期の、幕臣たちの危機管理に対する意識の希薄さ、人間関係の軋轢等の問題点を指摘する。 かなり基本的な歴史事実の説明から入るので、幕末史の入門書としてはオススメかも。しかし、著者の感情移入がけっこう激しいのでご注意を。東北出身である星氏の、勝海舟と慶喜に対す...
徳川幕府が瓦解に至る動乱期の、幕臣たちの危機管理に対する意識の希薄さ、人間関係の軋轢等の問題点を指摘する。 かなり基本的な歴史事実の説明から入るので、幕末史の入門書としてはオススメかも。しかし、著者の感情移入がけっこう激しいのでご注意を。東北出身である星氏の、勝海舟と慶喜に対する"恨み"は相当なモノらしい、という印象が一番強く残った。
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