ついらくした月 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「月が落ちてくる」という破滅的災害を描いていながら住民たちが現実逃避か無知ゆえかのほほんとしている点で「渚にて」に近いものがある。 しかし絶望的ながらも美しく人類が終わりを迎える「渚にて」に対し本作の人類は見苦しい。 落下した月はへしゃげて大西洋を陸地にしたということになっているのだが、その月面に豊富な資源があると分かった途端各国は戦争を始めてしまうのだ。 著者が描きたかったのは正にその人類の愚かしさだろうとは思うが、問題はそこに至るまでの杜撰な科学的描写である。 そもそも月がそのまま地球に激突したら地球が砕け散ってもおかしくないのにちょっと強い程度の嵐と津波程度で済んでいる。 そして「月が大西洋を埋めた」とあるのだが、そんな事になればかなりの海面上昇で英国は九割方水没してしまうだろう。 激突前の会議でわざわざ「ロシュの崩壊」について言及していたのに作中ではそれらしい描写が無いのも残念。 砕け散った月の岩塊が降り注いだらそれこそ核戦争のような悲惨な状態になるとは思うが、だったら崩壊せずにそのまま激突したらそれどころの騒ぎではないことぐらいわかるだろうに。 英国の田舎で起こる破滅系SFは「トリフィド時代」もそうだが、全世界で起きているはずなのに村単位でしか惨状が伝わらないというもどかしさがある。 本書も主人公が小さな村からほとんど出らんため世界規模の災害が「近所の水道工事」程度の矮小さに収まってしまうのだ。 一点だけ評価できるとすれば本書は「子供向け」ということで原典よりもかなり短いということだ。 世界規模の災害を田舎視点で延々と語られても退屈極まりないので。
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1939年作、原題は「ホプキンスの手記」 月が太平洋に墜落して、平らにのびてしまうまでの話が前半に書かれていて、後半は大災害を生き延びた人類が月の資源を争奪するために戦争をする話。視点はビードル村に生きたホプキンスという男で、退避壕の建設や村のお祭りのような雰囲気が描かれていて、...
1939年作、原題は「ホプキンスの手記」 月が太平洋に墜落して、平らにのびてしまうまでの話が前半に書かれていて、後半は大災害を生き延びた人類が月の資源を争奪するために戦争をする話。視点はビードル村に生きたホプキンスという男で、退避壕の建設や村のお祭りのような雰囲気が描かれていて、墜落後はビードル村で生き残った三人、ホプキンス、パット、ロビンの生活の話で、ロビンは兵士に志願し、パットは看護師になって、戦争に参加していく。
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SFというよりシミュレーション小説的なあれよね。月が墜落するような事態になったら人々はどう行動するかみたいなのを描いた。子供に読ませるもんじゃないんじゃないのかなぁ。淡々とした書かれ方にちょっとゾッとした。 似たものとしては「風が吹く時」を思い出す。
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