1,800円以上の注文で送料無料

蔭の棲みか の商品レビュー

2.7

9件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

表紙のエゴン・シーレ…

表紙のエゴン・シーレの絵が作品の雰囲気と似ている。よくも悪くも芥川賞受賞な感じの純文学系。在日韓国人の悲哀を描いた3篇を収録。「おっぱい」というセックスレスの夫婦を描いたものは、わりと共感した。

文庫OFF

2023/12/14

奇才、玄月の芥川賞作品他 うん、全く共感できない。けどわかるこの才能。大阪を舞台に描くまるで太宰治を憑依させたかのような寒々しい世界には到底描けない。純文学なんだけど正直読みづらいのでおすすめはできない。読んでいてだんだん気が滅入る作品なので鬱展開が苦手な人は気をつけてください。

Posted byブクログ

2021/03/15

FUTANさんがよく書かれている、芥川賞作家、大阪在住の玄月さん。 ミナミで文学バーを経営されていて、FUTANさんはご常連のようです。 この前、大阪の下町にある、おじいさん経営の古本屋をのぞくと、 その玄月さんの芥川賞受賞作「蔭の棲みか」が含まれる中編3本の入った単行本を見つ...

FUTANさんがよく書かれている、芥川賞作家、大阪在住の玄月さん。 ミナミで文学バーを経営されていて、FUTANさんはご常連のようです。 この前、大阪の下町にある、おじいさん経営の古本屋をのぞくと、 その玄月さんの芥川賞受賞作「蔭の棲みか」が含まれる中編3本の入った単行本を見つけました。 値段のところには、「初版本 400円」とありました。 歴史的名著でなくても、初版本は価値があるのですね(^_^) 「蔭の棲みか」は、結構、どろどろした話。開高健の「日本三文オペラ」を思い出すようなところがありました。 前年に芥川賞候補となった「おっぱい」は、ちょっと村上春樹風な部分もあるが、やっぱり在日の話。 もう1作、「舞台役者の孤独」も、なかなかおもしろい。 あまり読みやすい文体ではないのですが、どろどろした、一見、出口のなさそうな話はわたくし好みでした。

Posted byブクログ

2019/08/02

芥川賞受賞作を含む短編3編を収録しています。 表題作である「蔭の棲みか」は、在日コリアンの集落で長年生活してきたソバンと呼ばれる老人を主人公にしたもの。「舞台役者の孤独」は、馬望という在日コリアンの青年と、彼の周囲の男たちや繭子と呼ばれる夫から逃げ出してきた女との交流をえがいた...

芥川賞受賞作を含む短編3編を収録しています。 表題作である「蔭の棲みか」は、在日コリアンの集落で長年生活してきたソバンと呼ばれる老人を主人公にしたもの。「舞台役者の孤独」は、馬望という在日コリアンの青年と、彼の周囲の男たちや繭子と呼ばれる夫から逃げ出してきた女との交流をえがいた作品で、いずれも性と暴力の濃密なにおいの立ち込めるストーリーを、ハードボイルドな文体でつづっています。 「おっぱい」は、やはり在日コリアンの登場人物が重要な役割を演じていますが、同時にセックスレスの夫婦である祐司と由子の距離に焦点があてられており、他の2作とはすこしちがった読後感があります。 日本人と在日コリアン、北と南、健常者と障がい者、夫と妻のあいだに横たわる距離がクローズ・アップされており、テーマそのものはおもしろいと感じました。ただ、在日コリアン文学において「在日」それ自体が遠隔地ナショナリズムのような役割を演じてしまうようになってから久しく、そのへだたりへの反省的なまなざしが欠けていることに、やや古臭さを感じてしまいます。たとえば、梁石日の小説やその映画化作品の大衆的な需要はそうした条件のもとで可能になったのではないかと考えられますし、グ・スーヨンの自伝的小説である『ハードロマンチッカー』ではそのような条件がパロディ的に自己言及されているのですが、本作の登場人物たちは日本人から疎外されている「在日」という場所にあまりにもなじんでしまっているように思えます。

Posted byブクログ

2017/05/09

「蔭の棲みか」 在日朝鮮人をはじめアジア人たちが暮らすバラック集落 そこは一種の治外法権で犯罪多発地帯で野蛮な習慣もあるのだが 見てみぬふりでやりすごし、まあみんな平和に暮らしているのだった しかし偽善的なボランティアや口の軽い若者たちが 終わりの始まりを導いてくる 発表時期から...

「蔭の棲みか」 在日朝鮮人をはじめアジア人たちが暮らすバラック集落 そこは一種の治外法権で犯罪多発地帯で野蛮な習慣もあるのだが 見てみぬふりでやりすごし、まあみんな平和に暮らしているのだった しかし偽善的なボランティアや口の軽い若者たちが 終わりの始まりを導いてくる 発表時期から察するに、1999年の夏かな…? 「おっぱい」 社会主義の理想を夢見つつ、セックスレスを続ける妻 彼女は帰化人で、元は在日朝鮮人である ひょっとすると日本の子供を産むことに抵抗があるのかもしれないし 単に、産まれてもいない自分の子供が怖いだけなのかもしれないが よくわからない 夫はただ、泣くことしかできない 「舞台役者の孤独」 世間体、カネ、宗教とかいった価値観に束縛されることなく 自由でありつづけるには演技だ しかもそれは、空気に自分をチューニングする堅苦しいやつではなくて 結果を考えずにアドリブであらいざらいぶちまけるやつなんだ つまり世界を変えるには認識でなく行動 それがたとえ、世界すべて敵にまわしかねない博打だとしても 他に道を考えることができない

Posted byブクログ

2016/12/16

1999年 芥川賞作品。大阪東部にある在日朝鮮人街に棲む老人が主人公。世代・民族の対立の狭間でもがく姿が重厚かつ克明に描かれる。難しい題材であり、また、ラストは解釈を読者に任せる展開は、読後感をずしんとさせる。 同じ巻に過去の候補作も収録されており、お得感あり。

Posted byブクログ

2013/09/25

第122回芥川賞受賞作。ジャケットのエゴン・シーレの自画像に魅かれて購入。ここには鬱屈した、しかし強い自己主張や、存在自体への怒りの感情のようなものがある。この小説にも、そうしたものとの共通点が感じられるが、ただし主人公はソバンと呼ばれる70代の在日韓国人の老人である。彼はもう何...

第122回芥川賞受賞作。ジャケットのエゴン・シーレの自画像に魅かれて購入。ここには鬱屈した、しかし強い自己主張や、存在自体への怒りの感情のようなものがある。この小説にも、そうしたものとの共通点が感じられるが、ただし主人公はソバンと呼ばれる70代の在日韓国人の老人である。彼はもう何年も以前から生きる目的を喪失している。しかし、周縁の者たちにとって、彼が生きてそこに存在することに意味はある。それは、曲がりなりにも彼が在日として戦争を経験しているからにほかならない。描かれるエピソードは、どれも暗く重い。

Posted byブクログ

2011/03/03

玄月さんの文学バー(心斎橋)に先日行ってきました。楽しかった!行く前に読んでおこうと思って、まず芥川賞受賞作を。なんかうまく言えないけど、面白いです。「舞台役者の孤独」がいちばん好き。主人公の内面がぐちゃぐちゃしてて、現実と妄想を行き来して読んでるこちらも混乱してきて…。 表題作...

玄月さんの文学バー(心斎橋)に先日行ってきました。楽しかった!行く前に読んでおこうと思って、まず芥川賞受賞作を。なんかうまく言えないけど、面白いです。「舞台役者の孤独」がいちばん好き。主人公の内面がぐちゃぐちゃしてて、現実と妄想を行き来して読んでるこちらも混乱してきて…。 表題作は老人が主人公だけど、こっちは若者で、それも共感しやすい理由かも。

Posted byブクログ

2011/07/16

「蔭の棲みか」在日の集落に住むソバン老人、その集落とその人生はほとんど同じ長さ。集落の中で子供が生まれ、出て行った子供の死を知り、妻も先立ち、父母の言葉がわからない集落の支配者永山、息子の友人だった高本、集落で育った金本らに囲まれいまは不法就労の中国人の住む集落で近づく死を思い、...

「蔭の棲みか」在日の集落に住むソバン老人、その集落とその人生はほとんど同じ長さ。集落の中で子供が生まれ、出て行った子供の死を知り、妻も先立ち、父母の言葉がわからない集落の支配者永山、息子の友人だった高本、集落で育った金本らに囲まれいまは不法就労の中国人の住む集落で近づく死を思い、日本人として戦争に借り出された過去を思う。集落にかかわる人たち、最底辺からの脱出を図りながらも其処に住むソバン老人に対する優しさ、暖かい接し方。それは同胞としての結束なのか、そういった民族なのか、みな同じ過去の苦渋や傷を持っているからなのだろうか。成功者である永山は、その集落を所有し集落に棲むものたちを所有し支配しているようでいて、昔その集落でもあったようなリンチであるにもかかわらず集落の中で数が増えた中国人たちのその仲間うちのリンチを止めることが出来ない。其処に住む新しい住人たちは自分たちなりの決着のつけ方をしなければならない。うまく言えないなあ。日本の中で肩を寄せ合って生活していた在日の人々、それぞれ集落から成功したり脱出した後、その中で起こる新しい集落の住人たちは過去を反芻しているようで、そしてそれに対して無力であったりその行為を嘲笑したり、その中に何か滑稽なもの哀しいものを感じる。ソバンの次の世代である高本は「わしらの世代以降ではつけられんこの国へのけじめを、あんたらにつけてもらいたいんや。・・・・そこそこの金と社会的地位を維持するだけで満足して、心も体も弛緩しきっとる。この国のやり方に文句をつけられる筋合いではないかもしれん・・・・」といい、日本人の次の世代である警官は、「あんたがここに、日本に住むのは歴史的にも何とか理解できる。しかし、俺の目の届くところで、百人もの不法滞在者が自分たちだけのコミュニティーを作るのはぜったいに許せん。・・・もうこれ以上外人はいらん。・・・」という。堅苦しい文章でもなくすっと読み進むうちに、日本の中で生きてきた在日の人たちの複雑な思いとか多国籍、多民族化する日本とか何か残るものの在る小説だった。しかし、何故か次に載っている短編を読もうという気が起きない。もっとこの人の書いたのを読みたいという気が起きない。何故か・・・2006・10・11

Posted byブクログ