白洲正子全集(第9巻) の商品レビュー
『花』(1980年、神無書房)、『日本のたくみ』(1981年、新潮社)、『私の古寺巡礼』(1982年、法蔵館)の三作品のほか、1980年から86年にかけて発表されたエッセイを収録しています。 『花』は、著者がそれぞれの季節にあわせて生けた花と花器を、写真とともに紹介している本で...
『花』(1980年、神無書房)、『日本のたくみ』(1981年、新潮社)、『私の古寺巡礼』(1982年、法蔵館)の三作品のほか、1980年から86年にかけて発表されたエッセイを収録しています。 『花』は、著者がそれぞれの季節にあわせて生けた花と花器を、写真とともに紹介している本です。「あとがき」で著者は、「いけ花は総合芸術である」といい、「花は花だけで孤立するものではなく、周囲の環境と生活の中にとえっこんで、はじめて生きるという意味である」と説明しています。このことばのとおりに、古い瓦や臼、箕など著者が見いだした身近な道具などを花瓶の代わりに用いて、暮らしのなかで花を生けることのたのしみを読者につたえる内容となっているように感じました。 『日本のたくみ』は、著者が扇、染織、陶器、木工、さらには刺青や現代彫刻にいたるまで、さまざまな領域で活躍する匠の技を紹介している本です。手仕事に打ち込む人びとに対する著者の共感を語った文章を通して、現代にまで伝わる日本の伝統工芸に触れることができる内容となっています。 『私の古寺巡礼』は、『西国巡礼』や『かくれ里』とおなじく、著者の紀行文をまとめた本です。著者がじっさいにおとずれたそれぞれの場所の風土と、それにゆかりのある歴史上のエピソードの紹介がひとつに溶けあっています。伝統に掉さす人びとの精神に近づこうとする著者の姿勢が示されているように思います。
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