消された王権・物部氏の謎 の商品レビュー
歴史もののなかでも神話モノはロマンがある。 神話時代の謎解きを今の時代に解き明かそうとするのだから、当然のことながら参考文献から歴史家のように解き明かすのは困難だ。 その隙間は推理作家のように独自の解釈と空想夢想の中からロジックを組み立てていくしか無い。 そういう意味では神話モノ...
歴史もののなかでも神話モノはロマンがある。 神話時代の謎解きを今の時代に解き明かそうとするのだから、当然のことながら参考文献から歴史家のように解き明かすのは困難だ。 その隙間は推理作家のように独自の解釈と空想夢想の中からロジックを組み立てていくしか無い。 そういう意味では神話モノの謎解きというのは著者のロマンを共有できるかどうかでその評価は全く異なることとなる。 本書もそういった両極端になる可能性がおおいにある。 参考文献の少なさかつ、参照箇所の極端な少なさ故、そのほとんどは著者の解釈のみでストーリーが形作られている。 あくまで、歴史推理小説のような気持ちで読む分にはオモシロいと感じるが、歴史物として読み進める限りトンデモ本の域を脱しない。 これは、本書に限らず神話モノのある意味宿命なのかもしれない。 とはいえ、ボクはこの手の神話モノ、特に権力から外れた「鬼」「モノ」達が古代、中世、近世と影響を及ぼし続けてきたという話は大好物なのでる。 現代においても天皇家の祭事にはかならず「まつろわぬモノ達」が欠かせないという、この国の構造は実に不可思議だと思うのだ。
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古代ヤマトには皇祖神を祀る大きな神社は皆無で、その祭祀の対象はもっぱら天皇家のかつての敵であった出雲神系であった。その祭祀を取り仕切ったのは古代の一大豪族でありモノ=神を司る物部氏であった。天皇家の祭祀はいずれも物部氏由来のものであるという。 近畿地方に天皇家よりも先に国をなしていたのが三輪大神=大物主を崇める出雲族であり物部氏であった。ヤマトの地を禅譲した後も豪族として全国的に勢力を奮ったが、蘇我氏、藤原氏との政権闘争の末没落した。しかしその後、定住を持たないモノ=鬼として裏社会に潜り込み、影から天皇家を支え、天皇家からも頼られるという循環システムを形成することで生き残り、今なお太古の記憶を受け継ぎ、日本独自のシステムを存続させる事に貢献した。 物部氏はもともと誰かに使える(モノノフのように)ことで力を発揮する一族だったのかもしれない。ニギハヤヒは長脛彦に仕え、その後神武天皇=天皇家に仕えた。そのシステムは、象徴としての天皇を据える事で国が持続する天皇制として現在まで連綿と続いているのかもしれない。
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