自由学問都市大坂 の商品レビュー
思想に関する書籍はほとんど読んだことがなかったので、前提となる知識がなくうまく読めなかった。 山片蟠桃の章での無鬼論の展開は結局、宗教の否定へと帰結し、民衆の自立を訴えているが、優秀さ故の人心の無理解があるのではと思った。生業に従事しなければならない民衆に当時、最新の科学の知見...
思想に関する書籍はほとんど読んだことがなかったので、前提となる知識がなくうまく読めなかった。 山片蟠桃の章での無鬼論の展開は結局、宗教の否定へと帰結し、民衆の自立を訴えているが、優秀さ故の人心の無理解があるのではと思った。生業に従事しなければならない民衆に当時、最新の科学の知見を得ることは非常に難しかっただろう。 大坂の町は自由ゆえ、盛衰も激しい。落語の猿後家でもわかるように、一度、商家は得意先の機嫌を損なえば、そのことは一気に伝聞し没落することになる。このような自由故の厳しさは、序列を重んじる江戸で産まれた思想とはまた違ったものであるのかなと思ったがよくわからない。
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中井竹山・中井履軒の兄弟を中心に、懐徳堂にまつわる知識人たちの合理的な思想に光をあてた本です。 懐徳堂の思想家にかかわりのある富永仲基や上田秋成もとりあげられており、彼らの思想を生んだ共通の土壌に読者の目を向けさせています。また、彼らが荻生徂徠の思想に対してどのような批判をおこ...
中井竹山・中井履軒の兄弟を中心に、懐徳堂にまつわる知識人たちの合理的な思想に光をあてた本です。 懐徳堂の思想家にかかわりのある富永仲基や上田秋成もとりあげられており、彼らの思想を生んだ共通の土壌に読者の目を向けさせています。また、彼らが荻生徂徠の思想に対してどのような批判をおこなったのかということや、おなじく町人の思想でありながら道学的な性格を強くもっている石田梅岩の思想とのちがいについても、考察がおこなわれています。 本書における著者のねらいは、近代以降の光学によって、前近代の思想が非合理主義的なものとしてしか見られていないことを憂えており、近世日本の合理主義思想を掘り起こすことで、近代に対するオルタナティヴな見方を提出することです。こうした著者のスタンスは、いわゆるポストモダン的な立場に対する微妙な立ち位置を示しているように思います。たしか著者の大学時代の師である野口武彦は、荻生徂徠について論じた本のなかで、懐徳堂知識人たちの徂徠批判に対してアイロニカルなスタンスをとっていた記憶があるのですが、著者は近代を相対化しつつも合理主義を堅持しています。
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