1,800円以上の注文で送料無料

無と宗教経験 の商品レビュー

3

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/10/24

禅を中心に、宗教における経験と言語について哲学的な考察をおこなっている本です。 著者は、鈴木大拙の「即非の論理」をていねいに分析しています。「即非の論理」においては「A」と「非A」が同一視されますが、著者は「凡夫の視点」と「如来の視点」を区別することで、この論理を整合的に解釈し...

禅を中心に、宗教における経験と言語について哲学的な考察をおこなっている本です。 著者は、鈴木大拙の「即非の論理」をていねいに分析しています。「即非の論理」においては「A」と「非A」が同一視されますが、著者は「凡夫の視点」と「如来の視点」を区別することで、この論理を整合的に解釈します。しかし著者は、たんに整合的な解釈を示すだけで真に問題が解決されたとは考えません。即非の論理はなによりもまず、逆説的表現によって禅の世界に参究する者が根本的な方向転換を遂げることをねらったものであり、日常的な立場からの断絶において、即非の論理の真の意義を見いだそうとしています。 また著者は、ジェイムズやユング、オットーといった西洋の思想家たちの議論を参照しながら、禅における宗教的体験の意義を解き明かそうとしています。とりわけ、禅においてはなにかを実体とみなすような見かたが徹底的に否定されていることを強調しています。 そのうえで著者は、『大乗起信論』における「始覚」と「本覚」の関係が、禅における「漸修」と「頓悟」の関係になぞらえることができると主張し、一見したところ対立するように見える宗教の本質についての二つの観点を統一的に理解することができることを示しています。 禅の本質的な意義について宗教哲学的な立場からの考察がおこなわれており、興味深く読みました。

Posted byブクログ