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医学生のお勉強 の商品レビュー

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2012/11/29

黒川清氏が東海大学教授時代に医学部学生相手にゼミを開いて講義・討論した内容を本にまとめたもの。腎臓の専門家なので高血圧に関するゼミは本当に目からウロコがおちるくらいわかりやすい。

Posted byブクログ

2010/09/13

本書はまだ黒川氏が東海大学に在任中行われた、医学部の学士編入者を対象としたチュートリアルプログラム(とはいえ、医学そのもののことというより、医療問題のディスカッション)の記録である。 安楽死、ジェンダー、生殖医療といった題目では、倫理的問題を中心に議論がなされ、医療事故、医療...

本書はまだ黒川氏が東海大学に在任中行われた、医学部の学士編入者を対象としたチュートリアルプログラム(とはいえ、医学そのもののことというより、医療問題のディスカッション)の記録である。 安楽死、ジェンダー、生殖医療といった題目では、倫理的問題を中心に議論がなされ、医療事故、医療経済のセッションでは政策的な議論も行われている(途中に生活習慣病について、黒川氏の講義が入っているが、このプログラムに合ったものではないと思うので感想は省略する)。 これらの議論には、定まった答えがない。百人いれば百通りの議論が出るようなテーマばかりである。事実、どれをとっても現在に至るまで解決されている問題はない。こうした問題点を医学生が議論しあうことは非常に有益なことと考える。 医学教育、特に卒前教育について考えると、コアカリキュラムの改正を経て、講義式の座学ばかりでなく、OSCE(Objective Structured Clinical Examination)を設けたことにより基本的な臨床技能(インタビュー、手技を含めて)も低学年のうちから身につけることになり、また、PBL(Problem Based Learning)も一部の大学で実践され、病院実習に北米式のクリニカル・クラークシップを導入する大学(本書で紹介される東海大学はその先駆け)も現れるなど、確実に変革の流れの中にある。 本書の取り組みは、その流れの一環であると捉えられる。医学部における学びは、形を変えたとしても膨大な知識と技術の吸収を要求され、余裕を持った学びができる学生はそう多くないのではないだろうか。そういった中、本来なら医師には持っていてほしい倫理的な基盤や、医療をめぐる社会情勢といった部分の問題意識の保持を目指したと思われるこのセッションは、評価に値するものと考える。 ファシリテーターは必ずしも黒川氏のような医学界のauthorityでなくともよく、現場の先輩医師であったり、本書にも登場するような他分野の専門家に入ってもらうのもよいであろうし、そのほうが多角的な議論が期待できるだろう。 ただ、やはり現行の教育制度のもとでは、医学部のプログラムの中にこうしたディスカッションを入れることは難しい。事実、本書のセッションにしても学士入学者対象のものである。黒川氏も長年主張しており、近年にわかに話題になってきたメディカルスクール構想について、日本もそろそろ本気で考えなくてはならない時が来ていると考える。

Posted byブクログ