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小林秀雄全集(第1巻) の商品レビュー

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2011/02/04

目の前に、無数の星がまたたいている。あるいは、深淵な森がたたずんでいる。はたまた、広大な海が広がっている。小林秀雄が、世界のどこからか選んできた言葉でヒシヒシときずきあげた星空であり、森であり、海である。小林秀雄全集は、そういう重みと難解さをそなえている。 未だぼくはそこに片足...

目の前に、無数の星がまたたいている。あるいは、深淵な森がたたずんでいる。はたまた、広大な海が広がっている。小林秀雄が、世界のどこからか選んできた言葉でヒシヒシときずきあげた星空であり、森であり、海である。小林秀雄全集は、そういう重みと難解さをそなえている。 未だぼくはそこに片足を踏み出しただけにすぎない。すこしずつ踏査してやろうと静かに燃えている途上にある。どんなに遠く、深く、広大に見えても、畢竟ひとりの人間の所為にすぎないのだから、きっと無理ということはないはずである。 ――と、険しさばかり強調してしまったが、読んでみると案外たのしい文章も多い。難解な批評が連なる半面、頑固親父の妙なこだわりのようなものにクスッとすることも本全集の味わいである。図書館などで適当に手に取った巻のおもしろそうなタイトルをパラパラめくっているうちに、存外時を忘れているかもしれない。

Posted byブクログ