歌集 印度の果実 の商品レビュー
大西民子の第八歌集。父母に続き妹も喪い、前作の「風水」で釈迢空賞を受賞したが、その後病に倒れ職も辞した。本当に不幸がついてまわる人だ。その中で詠まれた歌の数々は、澄んだ哀しみとあこがれに満ちている。「妻を得てユトレヒトに今は住むといふユトレヒトにも雨降るらむか」「いづくまで行く魂...
大西民子の第八歌集。父母に続き妹も喪い、前作の「風水」で釈迢空賞を受賞したが、その後病に倒れ職も辞した。本当に不幸がついてまわる人だ。その中で詠まれた歌の数々は、澄んだ哀しみとあこがれに満ちている。「妻を得てユトレヒトに今は住むといふユトレヒトにも雨降るらむか」「いづくまで行く魂か流木のかたちに流れつくことのあり」「父母の名も妹の名も消されたる戸籍謄本見つつすべなし」「どの海を越えてゆきにけむ養蜂の旅をそのまま帰らずといふ」「うつむきて印度の果実むきをればやいばはつねにわが胸に向く」「夕闇の畑に人の影うごきカタコンベなど掘るにあらずや」「くれがたに群れとぶ見ればグレナダへ僧になりにゆく鴉ならずや」
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