買う気にさせる心理学 の商品レビュー
心理学者である著者が、不況にあえぐゼロ年代の日本への処方箋を提出している本です。 著者は、日本人の心理が不安に陥っていることが不景気をいっそう昂進させるという悪循環を断ち切らなければならないといい、そのためには悲観的認知への「とらわれ」を克服する必要があると主張します。高齢者世...
心理学者である著者が、不況にあえぐゼロ年代の日本への処方箋を提出している本です。 著者は、日本人の心理が不安に陥っていることが不景気をいっそう昂進させるという悪循環を断ち切らなければならないといい、そのためには悲観的認知への「とらわれ」を克服する必要があると主張します。高齢者世帯には平均で2700万の貯蓄があること、75歳でも現役で働くことができるし、また多くの高齢者が働く意欲を持っていること、そして高齢者こそがこれからの景気回復の原動力になりうることなどの事実を挙げて、高齢化社会によって生じるとされる多くの問題は解決できると述べ、またそれらの事実を知ることで不安を解消することが、景気回復につながると論じています。こうした著者の議論は、現実を歪めて悲観的な解釈に陥っている場合に、客観的事実と向きあわせることで歪みを修正してゆく「認知療法」に基づいてなされています。 また、年来の著者の主張である、日本人のパーソナリティが「メランコ人間」から「シゾフレ人間」へと変わったという説に基づいて、若者たちのシゾフレ的な傾向を熟知することでメガ・ヒットを生み出すことができるのではないかと論じられています。 ところで著者は、アメリカ主導のグローバリズムに追随しなければならないという議論に対して、敗戦後日本はアメリカに対するトラウマを引きずっており、アメリカの意向に沿うように先回りして動く「サレンダー」(降伏)状態に陥っていると述べています。おもしろい議論だと思う一方で、高度な政治的判断を個人心理からのアナロジーで説明することには、もう少し慎重な手続きが必要であるように思います。
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