白い大地 の商品レビュー

冨岡清子(著者),とみおかのぞみ

2010/12/17

キーワードは、「少女の目で見た戦争の悲惨さ」。
終戦間際の満州国通化の街で、実際に体験した少女時代の記憶を元に書かれた、心を打つノンフィクションだ。
小学三年生の快活な少女の目で見た戦時下の通化の街の日本人と中国人の人間関係がとてもリアルだ。
中でも、少女の憧れだった李先生の人柄は、日本が敗戦して勝者と敗者が逆転しても、まったく変わらぬ高潔な人格で、その態度に胸を打たれる。
戦争がもたらす悲惨な事件、そこで苦しむ多くの人々。勝っても、負けても、人の心に深く傷を遺す戦争の体験談は、決して風化させてはなりません。
ほのぼのとした読みやすい文体の中に、心に沁みる情景描写が秀逸だ。
多くの戦争に関する本の中で、極めて鮮度の高い戦争体験記。